野呂エイシロウの「ケチの美学」第79回|MacFan

アラカルト ケチの美学

野呂エイシロウの「ケチの美学」第79回

文●野呂エイシロウ

人気放送作家が語るケチとアップルの交差点。

常にビリ。ステージを上げる。

この間のご飯会では、学歴的にも、企業名的にも“ビリ”だった。ビリは意外にも心地がいい。若い人も、先輩も「野呂さん!」「野呂くん!」と気軽に呼んでくれる。僕はビリである。

常にビリ。すると、自然と上がってゆくのだ。それが僕の「ケチの美学」である。引き上げられている。

あるコミュニティの人が「野呂くん、今度ゴルフ行かない?」と誘ってくれた。今度は上場企業の役員ばかり。びっくりする。またしても一番ビリである。アシスタントに言われる。「野呂さんが勝っているのは体重だけ」と。そのとおりだ。

そうやって引き上げられると、ステージがどんどん上がる。すごい店に行けたり、誘われたり、会員制のゴルフ場に招かれたり。

常に、左右をキョロキョロしながらなんとかなっている。僕らの世界には山がある。山を必死に登ると、懸命に登ってきたもの同士が会える。

だからさらに努力をする。懸命に登ろうとする。その連続だ。

雑誌を読み、新聞を読み、先輩の会話に加わろうと必死だ。頂点を目指したい。

登るのは苦しい。斜面も急だ。その頂点に、イーロン・マスクさんや、著名な経営者が何人かいるのだろう。エベレストも頂点は数名しか居られない。それと同じだ。

秋になった。いつまでも半ズボンでは居られない。見たらカジュアルな半ズボンがなかった。トレーナーも何枚かなかった。「ああ、捨てたんだった」と気がつく。

今年の秋まで生きるとは思わなかったからだ。必死に日々生きている。勝負をしながら生きる人生を選んでいる。楽なゴルフもないし、楽な仕事はひとつもない。必死に山を登ってゆくのである。

「来年まで生きているだろうか?」と思う。だから春になったときに冬物を捨ててしまった。結構ボロボロだったし。再利用もできなさそうだった。

今も、地下鉄半蔵門線の電車の中で、iPadのキーボードを懸命に打っている。今日も明日も場違いな人と夕飯を食べる。アップルウォッチがゴールを教えてくれた。アクティビティのリングが完成した。今日はプロティンと酵素だけで生きている。明日のために痩せる。未来を考えずに生きてきた。

でも未来を考えることもできるかもしれない。ケチだから今日も全力で生きてしまった。ケチだから血糖値を上げず、のらりくらりと調整しながら生きる。以前はいろんな薬を処方してもらったがやめた。ケチだから。

一度しかない人生。めいいっぱい山を登る。急斜面を登る。景色がきれいだ。登ったものだけにしか見えない景色がある。だが、まだ5号目。ここからが勝負だ。

 

長年の友人の誕生日会。仕事仲間も。長年、一緒に山を登ってくれてありがとう。

 

 

EishiroNoro

放送作家、戦略的PRコンサルタント。毎日オールナイトニッポンを朝5時まで聴き、テレビの見過ぎで受験失敗し、人生いろいろあって放送作家に。「元気が出るテレビ」「鉄腕DASH」「NHK紅白歌合戦」「アンビリバボー」などを構成。テレビ番組も、CMやPRをヒットさせることも一緒。放送作家はヒットするためのコンサルタント業だ!と、戦略的PRコンサルタントに。偉そうなことを言った割には、『テレビで売り上げ100倍にする私の方法』(講談社)『プレスリリースはラブレター』(万来舎)が、ミリオンセラーにならず悩み中。