野呂エイシロウの「ケチの美学」第49回|MacFan

アラカルト ケチの美学

野呂エイシロウの「ケチの美学」第49回

文●野呂エイシロウ

人気放送作家が語るケチとアップルの交差点。

仕事をしない

先日、反省をした。1時間も仕事をしてしまったのである。ボクは「仕事をしない」と決めている。ストレスを感じる仕事は、人生の無駄だ。

ボクは20代の頃に、「仕事をしない人生を歩もう」と決めた。当時、遊びながら暮らしている2人の億万長者に出会い、「この人たちの真似しよう!」と誓ったのだ。それからというもの、家庭教師などの学生時代のアルバイトも、自分の会社の起ち上げも、すべて遊びだと思ってこなしてきた。

幼少期に「スーパーマリオブラザーズ」というテレビゲームが流行っていたが、そのゲームの中では、コインがどんどん貯まっていく。それを見ながら「お金もこんなふうに増えたらおもしろいよなぁ」と思った。

でも、よく考えてみると、「テレビゲームか、仕事か」の違いでしかない。そしてボクからしてみれば、コインを集めることも、仕事でお金を稼ぐことも一緒である。単なる数字でしかない。

とはいえ、放送作家になってしばらくは、そんなことをすっかり忘れていた。忘れるぐらい、必死に仕事をしていた。次第にそれが苦痛になり、ストレスを感じ、30歳のとき、身体を壊して休憩モードに入った。その後、なんとか社会復帰したものの、気がつけば40代の前半に再び必死に仕事をしてしまっていた。すると、またストレスが生じる。

ボクにとって、仕事は遊びの一つだ。「仕事は最大の暇つぶし」と言った人がいるが、まったくもってそのとおりである。

この国には、セーフティネットがある。仕事をしなくても、ある程度は暮らしていける仕組みがある。ボクは今さまざまな会社とプロジェクトを進めているが、チームの中には仕事をしていない人だって結構いる。

果たして、イチロー選手が「野球は仕事」と言うだろうか? 宇宙飛行士やエベレストの頂上を目指す人々が、それを仕事と捉えてチャレンジし続けるだろうか? 

登山家の友人から体験談を聞いたことがあるが、彼の話からは、仕事ではない、別の目的を感じる。しかも、彼らはスポンサーから何千万円ものお金を集めながら、頂上を目指しているではないか。スポンサーたちは彼にお金を払いたいから払っているのだ。

そういったことを、いつも考える。そして「この仕事をしてもしなくても、誰か死んだりはしないよな」とも思う。

生前、スティーブ・ジョブズは有名なスタンフォード大学でのスピーチで「もし今日が人生最後の日だとしたら、今日予定していることは、本当に私がやりたいことだろうか?」と述べた。毎朝、鏡を見ながらそんなことを自分自身に問いかけていたという。

ボクも、朝、シャワーを浴びたあとに、鏡の前でそう唱えている。すると、やりたいことが明確に決まってくる。だから、やりたくもない無駄な仕事は絶対にしない。

誰かに命令されるのは、本当に苦痛だ。今日が人生最後の1日なら、誰だって苦痛なことはしないだろう。もしかすると、ダイエットも止めるかもしれない。

とにかく集中する。音楽を聴くのも、歩くのも、食事をするのも集中が必要だ。今日が最後の1日なら、できる限り集中したい。ワインも食事も集中して、舌を全部使って楽しむ。本を読むのも同じだ。

ボクには大切なものが2つある。「自由」と「好奇心を刺激すること」だ。それ以外はどうでもいい。さあ、楽しもう。

 

Appleも我が家のLOVOTも、アップデートを繰り返す!

 

 

EishiroNoro

放送作家、戦略的PRコンサルタント。毎日オールナイトニッポンを朝5時まで聴き、テレビの見過ぎで受験失敗し、人生いろいろあって放送作家に。「元気が出るテレビ」「鉄腕DASH」「NHK紅白歌合戦」「アンビリバボー」などを構成。テレビ番組も、CMやPRをヒットさせることも一緒。放送作家はヒットするためのコンサルタント業だ!と、戦略的PRコンサルタントに。偉そうなことを言った割には、『テレビで売り上げ100倍にする私の方法』(講談社)『プレスリリースはラブレター』(万来舎)が、ミリオンセラーにならず悩み中。