戦争が降ってくる


 

白いスニーカーを洗ったら
また、空が高くなった
積乱雲が湧き上がり
張り詰めた空を、さらに押し上げる
影は夏の陽射しに抗議して
足元に小さく小さく凝っていく
まるで、塊のように
それは、限界集落にも見える


出来るだけ乏しい語彙で綴った
貧しいテクスト
生まれてくる子供はなく
老いていくだけの人がいる
いずれ、この集落は消える
近いうちに、この集落は消え失せる
貧しいテクストの余白はあまりに大きく
昼を過ぎると、波さえ打ち寄せて


きっと沖では蒼ざめた鯨と
白いイルカが鳴き交わしている
文明の凋落を嘆きながら。


足元が砂のように崩れ、国家の輪郭が見えなくなると
残されるのは、言葉しかない


もう、言葉しかなかった


ただ、北の涯てを見てみたかっただけなのだ


たとえ、そこには、体温を激しく奪っていく
透明な風が吹いているだけだったとしても

 

 

2014.7.6

カテゴリ: 誰でも明日のことは考える(城戸朱理)
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