ボロボロのハーレー・ダビッドソンの前。
約束の時間を過ぎても君は来ない。
きっとこの腕時計がポンコツなんだ。
公園が真ん中にある街 希薄塩酸めいた昼空の下
ドーナツ屋のことは土星。
青い外装のベーカリーカフェのことは水星。
お定まりの待ち合わせ場所に惑星の名前を勝手につけて呼ぶのが
いつからか二人の習慣になっていた。
ひとりつこ同士の恋はあてのない旅と同じで寄り道ばかり
ドーナツの油かがやく指のままべたべた触れ少年画展
そして二人でやっと手に入れることができたはずの
青い海にまみれた「地球」は、
君の体内から燃えさかりはじめ
日々どんどん膨らんでゆく「太陽」に、
飲み込まれだそうとしていた。
「純粋」と「無罪」に同じ語を使ふ言語のやうに笑ふぼくらは
感覚に反逆をした罪により階段で寝てゐた朝もある
「太陽」を前にして僕らは呼吸ができなくなる。
それはたとえば、
ローマ字で書くと回文になる短歌を作らなければいけないような、
無意味でなんの充実感もない緊張にさらされることだった。
「う、寝起きか?」はつなつ込めて息の野に消えて木炭、歌は聞こえぬ
(UNEOKIKAHATUNATUKOMETEIKINONONIKIETEMOKUTANUTAHAKIKOENU)
君はやはり来ない。
ハーレー・ダビッドソンはどんな惑星だったんだろう。
2014.3.17