思い出す。
ひたすら南へ向かったことを。
とびっきりのやわらかな毛布を用意したことを。
僕たちのささやかな罪をささやかと呼ぶ罪もあり幾重もの雲
エンジンの音なんかよりはるかにやかましく心臓が響いていた。
終助詞はうるさいだけと書き残す君が衛生責任者なら
冬だったんだ。
寒かったんだ。
そうするしかなかった。
ゆく冬よ街の電器屋いつぱいに銃開発者のドキュメンタリー
韓国のラップ聴きつつ風邪気味の頭ささへて行く雪の道
手に触れるぬめりとした重さを今でも覚えている。
海に花そして木の葉の散る丘に浅い西日は暖かく燃える
ショーウィンドウに谷折りの陽はうすれゆきカラスはつつく雪解け水を
僕たちは本当は帰ろうとしていた。
車窓から風の偽物を招き入れ「ボニーはシャワーをどうしてゐたの?」
2014.2.17