ゴルフ心に響く珠玉のエッセイ集『ゴルフプラネット』最新刊


ゴルフ心に響く珠玉のエッセイ集『ゴルフプラネット』の最新刊となる9巻から12巻がKindleStoreで発売となりました。

 

今回は2002年に書かれたもので、9巻がゴルフの喜怒哀楽、10巻がゴルフコース、11巻が用具と技術、12巻がゴルフの楽しみをテーマにしています。

 

11年前に書かれたものなので、用具に関しては少々古くなっている部分もありますが、ゴルフの普遍的な部分に関わるエピソードの数々は、ゴルファーの心を揺さぶります。

 

4巻合わせて187編のエピソードが収録されていますが、今回はその中から1編を特別に掲載いたします。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

あの夏の1打
あれから何回も夏は来たのに。

忘れられない夏がある。

高校1年の夏は、特別な夏だった。

 

生まれて初めてゴルフの競技に出た。ゴルフ場に高校生ばかりがいる光景に圧倒された。私にとってのゴルフ場は大人の世界で、学校の延長にある場所ではなかったからだ。その違和感のせいで、現実感を感じなかった。現実感がない分だけ緊張しなかった。

 

自分としてはかなり調子が良く。生まれて初めての競技ゴルフのスコアは80だった。決勝に進むために必要なスコアは79。完璧な予選落ちだった。
でも、当時の私は、そのことに落胆してはいなかった。生涯ラウンド数が20に満たない普通の高校生レベルとしては、1打差で予選落ちするという結果は、決して悪いものではないと勝手に思い込んでいた。家に帰り、夜になり、父親にその報告をすると、
「お前は駄目だね」
と一言だけ言われた。
私には彼女がいた。今振り返って考えると、自分の人生を変えた女性だった。ガチガチに踏ん張ることでしか自分の存在価値を見いだせなかった私に、緩めることも大事なことで、物事には必ず裏と表があると気付かせてくれた。父親に冷たくされても落ち込まなかったのは、本戦に進めば夏休みの真ん中まで彼女に会う日が減ってしまうと考えたからでもある。
その夏、私は彼女と予定よりたくさんの時間を過ごすことが出来た。それが、2人にとって致命的な結果を招くことになったとしても、楽しい時間が過ぎた。
夏が来るたびに私は想う。もしもあの日、真夏の河川敷のコースで1ストロークだけ良いスコアでホールアウトしていたらどうなっていただろうか? と。
予選落ちを知らないゴルファーとして順風満帆なスタートを切って、勢いを失わないままでトップアマになり、プロゴルファーになっていたのだろうか。それとも、やはり今と同じ人生を歩んでいるのだろうか。
たった1打の差が、その後の人生を左右するような決定的な分かれ道になることがある。ゴルフはそういう意味では非情で残酷だ。
でも、私は、ゴルフの神様が歩ませた自分のゴルファーとしての人生に一点の後悔もしていない。それは、そういう1打を持っているゴルファーが幸せであると言うことを十分に知っているからだ。
けれど……
あの夏の1打は、甘く苦い思い出と共に私の中で時々暴れる。人生が二度あれば、私は迷うことなくあの夏に戻りたいと願う。

(2002年8月2日)

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

価格は143円で、対応はiPhone/iPad/iPod Touch/Android/Kindle端末となります。

ゴルフ好きの皆さん、是非ともお読み下さい。

 

 

 

 

カテゴリ: 新刊情報
タグ: , , ,