「やっと後半戦ですね」。山崎七段が盤面を見てそう話す。形勢は先手よしと見られているが、後手ももたれるように指して、引き離されないように相手の動向をうかがっている。上田女王としても油断のならない局面だ。ここから上田女王が的確な判断でリードを広げていくのか、それとも長谷川女流二段が追い上げて混戦に持ち込むのか。二人の持ち時間は互いに残り1時間を切っている。注目は、先手がいつギアを切り替えて攻め合いを志向するかという点。「先手が斬り合いにするのは、その順でいいと確信したとき」と山崎七段は言う。展開次第では、すぐに激しい終盤戦に入るかもしれない。
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図は▲4四飛と打ち、金に狙いをつけた局面。控室ではより慎重に攻める順を本線にして検討しており、やや「意外」という反応だ。大盤解説会でも同様に「ひねった攻め」と解釈されていた。山崎七段はここで△5三銀と受けてどうか、と予想。以下▲6五桂△6二玉▲5三桂成△同金▲4二飛成△5二歩の進行は、先手にとって容易ではない。後手は△5五馬がとにかく大きな一手だ。「長くなるかも......」とささやかれはじめたとき、モニタに△4三歩が映る。この手を見て、再び控室の空気は「先手攻めきれるのでは」というムードに変わってきた。ただ、少し前の局面と比べると、少しずつ後手が盛り返している印象だ。
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