終局までに大盤解説会に詰めかけたファンは160人以上。会場に姿を現した両対局者は、井上九段の質問に答える形で一局を振り返っていった。
井上九段が「ここですね」と声に力を込めたのが左の局面。本譜は△6三同玉だったが、「ここで△同歩はどうだったの?」と井上九段。上田女王はじっと▲4二角成と成っておく予定だったと話す。しかしそれなら△5八とで大変な勝負だ。玉で取った理由を尋ねられ、長谷川女流二段は「入玉できると思って......」とためらいがちに答える。すると井上九段、「あー、糸谷さんの顔が浮かんじゃったかなあ!」とおどけるように一言。大盤解説で糸谷六段がこの手を候補に挙げていたのだろう。これには会場中が破顔した。
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長谷川女流二段が投了したことがわかると、関係者は一斉に対局室へ。勝った上田女王の後ろにカメラマンが位置取る。長谷川女流二段の姿を収めようとしているのだ。この光景が、彼女の肩にかかっていた期待の重さを示しているように思える。主催紙から両対局者にインタビューが行われたのち、二人はファンの待つ大盤解説会場に移動した。
―― お疲れさまでした。一局を振り返っていただいていかがだったでしょうか。
上田 そうですね。序盤はよくわからなかったんですけど、中盤▲5五銀(57手目)と出た局面は厚みが出てよくなったと思ったんですけど、そのあとちょっと一直線にいき過ぎたのがよくなかったのかなという気がします。△4五角(74手目)と打たれた局面が思った以上にわからなくて......。焦りました。
―― 終盤、勝ちを意識した局面は。
上田 やー......。いや、難しかったです。最後、桂(▲7五桂......125手目)が見えた局面で勝ちかな、と。ようやく勝ちになったかなと。
―― 防衛に向けて幸先のいいスタートだと思うのですが、第2局に向けての抱負をお願いします。
上田 女王を持っている側が6連敗中だったので、それを止めることができてよかったです。第2局以降もがんばりたいと思います。
―― 一局を振り返っていただいていかがだったでしょうか。
長谷川 序盤はうまくいったと思ってたんですけど、△4二金(44手目)と寄ったのがよくなくて、そこから悪くなったと思いました。△5八飛(92手目)と打って難しくなったかなと思ったんですけど、まだちょっと足りなかったです。
―― 第2局に向けての抱負をお願いします。
長谷川 もうちょっと勉強して、強くなりたいと思います。
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