谷川　お二人の将棋は見られましたか？

山崎　もちろん。上田さんの将棋をおよそ一年分と、長谷川さんの将棋は（プロになって）７戦ということですぐに見ることができました。上田さんは居飛車、振り飛車どちらも指せる、女流棋士には珍しいタイプです。それが女王になった強さのひとつかな、と。けれども長谷川さんというのが、正直なところ、強さを測りかねているというか。

谷川　井上慶太九段に聞いたんですが、長谷川さんは大きな舞台になればなるほど力が出るタイプだ、と。一見おとなしそうで、先ほどのあいさつもすごく初々しくて......

山崎　がんばれ、って言いそうになりました。

谷川　でも「芯が強い」、というのが井上九段の長谷川評です。デビューから６戦全勝で、この間黒星がついたんですよね（注・相手は村田智穂女流二段、女流名人位戦予選）。

谷川　戦型はやはり長谷川さんの振り飛車になるんでしょうかね。

山崎　上田さんは女王を獲ってから、幅を広げるために居飛車も指しています。戦型は上田さんが主導して形を決めるのかな、と思うんですが。長谷川さんが振り飛車にするのは間違いないと思うので、居飛車対振り飛車の対抗形か、相振り飛車になるのかなと。

谷川　先ほどの話で触れられていた女流対局の好局選では、確か長谷川さんの将棋が多かったと記憶しているのですが、甲斐さんとの対局はあれは持将棋でしたよね。

山崎　私も持将棋になった将棋はリアルタイムで見ていました。そのちょっと前にイベントで「女流プロになりました」って言われて、かわいらしい子だなーと思ったことがあって、がんばれっていう気持ちでした。でも持将棋になって、さすがに甲斐さん相手に指し直しは勝てないかなーと思って、そこで携帯中継を閉じちゃったんですよ。次の日見ると勝ちになっていて。やっぱり熱戦で勝つのは、強くないとできないんですよ。

谷川　清水さんとの挑戦者決定戦も長手数でした。長期戦になっても崩れない、という印象があります。

山崎　ええ、苦しい将棋を跳ね返して勝った将棋もありました。

谷川　長谷川さんの話ばかりしていますね（笑）。上田さんですが、初めてタイトル戦に出たのが女流王将戦です。そのときは清水さんが相手でした（注・2009年に行われた第31期霧島酒造杯女流王将戦三番勝負。結果は０－２で奪取ならず）。第１局は私立会人でして、将棋の内容はあまりよくなかったのですが、対局姿が凛々しく、対局しているときの顔がすごくいいなと感じました。「この人は強くなるな」と思った記憶があります。

山崎　やっぱり女性の対局は男性棋士にはない華やかさがあるので、美しい戦いに注目したいですね。

谷川　二人ともまだ若いので、五番勝負の中でどのような成長が見られるか、というところも皆さんに注目していただければと思います。