図は16時50分頃の局面。三枚堂四段が断言したように先手玉に詰みがないことがはっきりしました。では先手の勝ちかというとそうではありませあん。図から▲2八同馬と取るしかなく、以下△2六銀▲同玉△2八飛成と進みます。その局面で後手玉は詰めろになっていますが、▲2七桂の合駒に対して△3七角や△4八角▲3五玉△5七角成で後手玉の詰めろが消える可能性があります。
超難解な終盤戦。結論はまったく見えていません。マイナビ女子オープン史上に残る大激戦になりました。
(八雲)
16時30分頃の局面。
甲斐女流二段は▲9三銀の捨て駒を放って思い切った寄せに出ました。しかし、この瞬間先手玉に詰みがあってもおかしくない情勢とのこと。また、仮に詰みがなくても、先手の勝ちとも言い切れないようです。
「いやあ……詰みが、読み切れません。難しい。詰む筋はいくつも見えるのですが、最終的に詰まし切るところまでどうしてもいきません。これは詰まないのかもしれません。詰まないとすれば、△4八馬と金を取ってから△7一金打と受ける手も考えられます」(三枚堂四段)
実戦は図から△4八馬▲同玉△7一金打に▲同竜△同金▲7三角成と進んで、再び詰むや詰まざるやの局面を迎えました。その局面で三枚堂四段が脳を振り絞って詰みを読んでいますが、詰みは発見されていません。
「先手玉はもの凄い耐久力です。驚きました。これだけ考えても詰まないのだから、これは詰まないと結論します」(三枚堂)
(八雲)
図は16時15分頃の局面。消費時間は▲甲斐2時間52分、△伊藤2時間29分。
図の△5九馬が、次に△3八飛の攻防手を見て絶好。ここまでずっと先手有利と見られて進んできましたが、伊藤女流初段の勝負手連発が功を奏して、現局面は勝負形になっている可能性があります。
「いやあ、先手がいいと思っていたのですが……。これは激戦になったかもしれません」(三枚堂四段)
(八雲)
前図、伊藤女流初段の切り札で角がぶつかった局面で、中継室では角交換を避けて後手の角を働かせない順を検討していました。しかし、甲斐女流二冠は積極的に角交換から攻める順を選択しています。
中継室の検討陣は当初は角交換の選択に懐疑的でしたが、検討が進むにつれて先手の攻めが厳しいことが分かって来ました。
「なるほど、これが一番早い勝ち方なのかもしれません。このまま決まれば、後手の△8八角を働きのない駒にすることができます。先手はこの図の直前に▲2五桂とぶつけた手が、危ないように見えて好手だったと思います。ここからは終盤戦に入りますね。面白くなってきました」(三枚堂四段)
リスクを恐れず積極策で決着をつけにいった甲斐女流二段。
(八雲)