■鈴木環那女流二段
―― 一局を振り返っていかがでしたか。
鈴木 序中盤はまあまあうまくいったかなとは思ったんですけども、相当難しくて、そうですね。最後の最後になるまで、全然自信がなかったですね。ちょっとずついいのかなとは感じていましたが。
―― 勝ちを意識した局面は。
鈴木 ずいぶんあとですね。一手だけ、△4七銀打(88手目)ではなくて△5七銀と打つべきだったかなと思って。またちょっと混沌としてきてしまったので。▲2五桂(97手目)に△4五竜と銀を取った辺りから、駒得が大きいのではっきりよくなったかなと思いました。
―― これで初の挑戦者決定戦進出です。相手は里見女流四冠ですが、抱負をお願いします。
鈴木 里見さんとは何局か指しているのですが、奨励会に入られてから、勝つのはさらに厳しくなってきたなと思っています。あまり挑決とは意識せずに、一生懸命戦いたいなと思います。
■甲斐智美女流四段
―― 同じように、本局を振り返っていかがでしょうか。
甲斐 序盤はこちらが角を引いた瞬間にいいタイミングで仕掛けられて、ちょっといやな形になってしまったなと思いながら指していました。
―― 鈴木さんもおっしゃっていましたが、△4五竜と銀を取られた局面は――。
甲斐 そうですね......。竜が当たるのをうっかりしてしまって。▲3九銀(93手目)のところで、もう少ししっかり読まないといけなかったかなと思っています。
―― その後はいかがでしたか。
甲斐 やっぱり△4五竜とぼろっと取られて、駒損が大きいので。そこまではずっと際どいと思っていたんですけれども、急に悪くしてしまって......。
(文)
後手が△4七銀打(図)と食いついた局面。穴熊が気分よく攻めているようだが、中継室では背筋がぞっとする話が出た。
「▲4一金と打つと?」
ぽとんと置かれただけのようだが、恐ろしい狙いを秘めている。それが▲4七金△同銀成に▲2二竜! 銀が入れば竜切りからの即詰みがあるのだ。では、後手がこれを受ける手段を考えてみよう。持ち駒がないので竜の利きは止まらない。△1四歩と脱出口を開いても、角がじゃまで逃げ道がない。△8一竜と引く手はある(▲4七金に△4一竜の意図だ)が、「▲5三桂とつないでおけば現状維持できます」と阿部健五段。つまり受けが難しいのでは、というのが結論だ。
実戦、甲斐女流四段は▲2九金打の受けを選択。先手はチャンスを逃してしまったのだろうか?
(文)