際どい、と言われた109手目▲７二銀の局面から△８六桂▲７七玉△８二金打と進めて上図。

里見女流四冠は▲６四角を用意していました。

下図の▲５四馬まで進むと、後手玉は▲８一金打△同飛▲同金までの詰めろ。△５四同飛にもやはり▲８一金打が残っているため、後手は受けが利きません。１分将棋の秒読みの中、難しい終盤を切り抜けた里見女流四冠の勝勢となりました。

図は17時頃の局面です。

局面はいよいよ大詰め。１手争いの白熱した攻防が繰り広げられています。

数手前までは先手よしが控え室の形勢判断でしたが、決めに出た先手の指し手に後手がうまく切り返し、現局面はかなり際どい勝負になったとみられています。

後手の駒台に銀がのれば、△８六桂▲７七玉△７八飛▲６六玉△７七銀までの詰み筋が先手玉に生じてしまいます。△７八飛に▲８六玉と逃げても、△８八飛成▲８七歩△８五銀▲同銀△８七竜以下の順でやはり先手の玉は詰んでしまいます。現局面は△８二金打と打てば、後手の駒台の金が銀に換わりそうな形。先手の里見女流四冠がどのような手を用意しているのか、控え室では注目されています。

終局近しとみて、控え室の関係者の動きが慌ただしくなってきました。

（若葉）

夕方に入り、局面は終盤に差し掛かったところです。

控え室では、中盤で優位を築いた里見女流四冠がそのままリードしているとみられています。「▲４五馬と引いた形は▲７二歩や▲８三歩の攻めがあります。後手は全部受けるのは難しいです」と久保九段。後手に飛車を持たれていますが馬の位置がよく、歩の小技も利く形で先手が指しやすいようです。

（取材陣に向けて局面の解説をする久保九段）

（控え室には関係者からの差し入れが多く届けられている。写真はそのうちの１つ、備前名物「大手まんじゅう」。ほんのり甘酒の香りのするお菓子である）

（若葉）

畠山鎮七段は里見女流四冠と毎月定期的に研究会を行っていて、現在の里見女流四冠をよく知る棋士の１人です。ここ２日間で、里見女流四冠についてのインタビューを５件も受けたとのこと。

「研究会仲間として光栄ですね。すごく刺激にもなりますし、自分もがんばらなきゃと励みになります」（畠山鎮七段）

（畠山鎮七段）

（若葉）

指し手の難しい局面で上田女王は△３三銀と引きました（図）。飛車の横利きを通して▲２四飛に△同飛を用意し、大盤解説会でも指摘されていた△６二歩▲２四飛△同歩▲４三角の筋を消しています。久保九段は「１秒も考えませんでした」と驚いた様子。通常は銀が玉から離れていくので指しにくい手なのですが、この際はよい粘りなのではないかとみられています。

（写真は初手▲７六歩を指す里見女流四冠）