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会長直伝!ダイレクト向かい飛車の極意~将棋世界 2018年11月号より

創始者が豪快振り飛車のコツを伝授! 将棋世界 2018年11月号の戦術特集は「ダイレクト向かい飛車」。佐藤康光九段による実戦解説、大石直嗣七段による基本講座、伊藤真吾五段による付録「定跡次の一手 ダイレクト向かい飛車の攻防」の3部構成で、大胆不敵に飛車を振り、相手を翻弄する「ダイレクト向かい飛車」の指し方、醍醐味を学べます。本ページでは佐藤康光九段による実戦解説ページの冒頭、創始者・佐藤九段がこの戦型を思いついたきっかけ、公式戦の大舞台で指した手応え、戦法のメリットなどについて語った部分を紹介いたします。

角交換四間飛車が原点

――ダイレクト向かい飛車は、佐藤康光九段が第34 回(2006年度)升田幸三賞を受賞したときの、数ある佐藤新手の中の一つで、常識を覆す振り飛車の新構想として脚光を浴びました。戦法誕生の経緯などをうかがい、アマチュアが指すコツを伝授してもらいます。まずは思いついたきっかけから教えてください。

「それまでは角交換四間飛車を1~2局指していたのですが、考えているうちに△4二飛(第1図)の途中下車ではなく、△2二飛と直接回れないものかと考えたことが、発想としての原点でした。」

――角交換四間飛車は後手番のうえに、振り飛車側から角交換するので、2手損からのスタートです。

「2手も損していると、指していて手損の感覚は残るので、何か挽回できる手があればと思っていました。ダイレクトに向かい飛車に振れる手が成立したら、1手取り返せることができますし、マイナスのイメージが緩和されます。」

――ダイレクト向かい飛車が指され始めた頃は、佐藤九段がタイトル5棋戦連続挑戦と、大活躍した2006年度でした。そして、居飛車正統派から力戦振り飛車党へと、大きくモデルチェンジしました。ダイレクト向かい飛車は、居飛車の戦法からもヒントを得たそうですね。

「当時は相居飛車で一手損角換わり(第2図)もよく指していたので、ダイレクト向かい飛車は同じ角交換系の将棋で、その延長線上にあった戦法でした。角換わりからの右玉に組むと玉が薄いのですが、振り飛車で角交換になれば美濃囲いに組めそうで、玉形が堅い分だけ得ではないかということも考えていました。」

――公式戦で採用するまでは、研究会などで試すなどの、試行錯誤を繰り返したのですか。

「相居飛車の定跡形や最新流行形なら、研究会で棋士相手に試すことはありますが、ダイレクト向かい飛車は、まだ定跡も指針も確立されていなかったので、1人で盤に向かって研究していることが多かったですね。」

大舞台で連投

――ダイレクト向かい飛車の1号局は、平成19年3月放映の、NHK杯決勝の森内俊之名人(当時)戦です。このときは先手番で採用(第3図)して勝利、見事に優勝を飾っています。

「先手は主張点がないと△4五角と打たれて、角成りのリスクを負うだけでは面白くありませんが、図は▲1五歩と端歩を突き越しているので、▲8八飛と1手で振って、さらに手得も狙おうという考えでした。もし▲1六歩に△1四歩と受けられていたら、居飛車で戦って端をとがめにいくことも考えていました。」

――NHK杯に続いて、羽生善治王将(当時)との王将戦第7局(平成19年3月)という、タイトル奪取が懸かる大一番にも、再びダイレクト向かい飛車(第4図)を採用しました。この将棋は後手番でしたが、1号局からの研究の上積みや、手応えを感じての決断でしたか。

「研究というよりもまだ手探りの状態だったので、実戦でやってみないとわからないという、興味の部分が強かったですね。ただ改めてこの局面を見ると、△1四歩と突いた形が働いていないので、明らかに損をしています。」

――第4図から▲6五角を打たなければ持久戦になりそうでしたが、羽生王将は▲7八玉△6二玉に▲6五角と踏み込んできました。打ってくるという確信はありましたか。

「羽生さんは割とケンカを買うタイプですし、△2二飛が論理的におかしいと思っていれば、とがめにくる棋士は多いと思います。対して△7四歩が指してみたかった手でした。」

――△7四歩に対して、▲4三角成や▲7四同角と取られたら、どう対応するつもりでしたか。

「▲7四同角なら△7二銀で、8三の地点を受ければ、打った角が成れずに負担になります。▲4三角成にはそこで△6四歩(第5図)と突いて、馬の退路をなくしておけば、次に△4二金から馬の捕獲を狙えます。これが居玉の場合だと、△6四歩には▲5三馬と歩を取る手があるので成立しません。そこで△7四歩では△7四角と合わせる展開になります。△6二玉と上がった形は△7四歩が成立するので、▲6五角は打ちづらいと覚えておくのがいいと思います。最近の公式戦では、△2二飛と回った瞬間に、▲6五角を打つ展開がほとんどです。」

新幹線に乗った気分

――佐藤九段にとってダイレクト向かい飛車は、数ある佐藤新手の中でも特別な位置づけだと思っていますか。

「自分では優秀な戦法だと思っているのですが、これだけ他の棋士に指されていないところを見ると、私の感覚がおかしいのでしょうか。藤井システムや8五飛戦法のように、明確な攻め筋があるわけでもないので、効果がいま一つなのが支持されない理由なのかもしれません。」

――ダイレクトで2二まで飛車を回った手得が、必ずしも勝敗に直結することはないのですか。

「先ほども述べたように手損からのスタートなので、1手取り返しただけでは形勢がよくなることはありません。よくファンの方には、ダイレクト向かい飛車は何が得なのですか? と質問されますが、論理的な得はないのでうまく答えるのが難しいですね。4二の各駅停車ではなく一気に△2二飛までと回れるので、新幹線に乗ったかのようで気分がいいという、精神的な得があります(笑)。」

――かつて数々の佐藤新手について佐藤九段は「誰も真似してくれない」と嘆いていたこともありましたが、ダイレクト向かい飛車は振り飛車ファンに浸透していますし、公式戦で指す棋士もいます。

「私のほかに好んで指す棋士といえば大石直嗣七段くらいです。ダイレクト向かい飛車の書籍(『ダイレクト向かい飛車徹底ガイド』マイナビ出版)を出しているので、戦法の使い手としてはうれしいですね。このように指す棋士は少ないのですが、いったん四間飛車の途中下車をしてから、向かい飛車に振り直す形は実戦例も多いと思います。」

 

 

記事はここから、アマチュアなら誰もが気になる▲6五角(図)への対策、中盤における方針や指し方のコツ、そして創始者・佐藤九段が選んだダイレクト向かい飛車の好局3局、そのハイライトシーンの解説へと続きます。

本記事の全文は将棋世界 2018年11月号でお読みいただけます。

※この記事はウェブ用に本記事の内容を一部変更して掲載しております。


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将棋世界編集部(著者)