2018.05.14
【データ】七番勝負における3連勝と3連敗 ~叡王戦七番勝負第3局が終わって
第3期叡王戦は高見泰地六段が勝って3勝0敗としました。これまでに行われた全七番勝負のデータから、高見六段はどれくらい有利なの? 金井恒太六段の逆転の可能性は??? に迫ります。
5月12日、金井恒太六段と高見泰地六段による第3期叡王戦決勝七番勝負第3局が行われ、高見六段が勝ってシリーズ通算3―0とし、タイトル初戴冠に大きく前進しました。
14時に金井六段先手で開始されたこの対局は横歩取りへと進み、金井六段優勢で終盤に入りましたが、20時27分に千日手が成立。ニコニコ生放送では、千日手打開の手順を探り頭を抱えて悩む金井六段の姿が映されました。
21時に高見六段先手で開始された指し直し局は相居飛車の押し合いとなりましたが、高見六段が終盤に鋭さを見せ、2筋にカベ銀の悪形を抱える金井玉を一気に寄せて勝利を収めました。
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今日の話題は、「七番勝負における3連勝・3連敗」についてです。
棋界の七不思議として(他の6つはわかりませんが)、
「七番勝負における3連勝4連敗(3連敗4連勝)は出現しない」
というものがありました。
それを打破したのが渡辺明竜王(当時)。
平成20年度、羽生善治名人(当時)を挑戦者に迎えた第21期竜王戦七番勝負は、勝者が初代永世竜王の称号を獲得するとあって、例年にもまして注目を集めていました。
このシリーズ、渡辺は出だしから3連敗のピンチ。しかし第4局、羽生の攻めをぎりぎりしのいで1勝を返すと、第5、6局にも勝ってついに運命の最終第7局にたどり着きます。
第7局も形勢が二転三転する大熱戦となりましたが、最後は渡辺が勝って棋界初の3連敗4連勝を達成したのでした。
昭和初期から行われていた七番勝負で、●●●◯◯◯◯が初めて出現したのが平成20年だったわけですが、不思議なもので翌21年、王位戦七番勝負で深浦康市王位(当時)が木村一基八段(当時)の挑戦を[千●●●◯◯◯◯]の星で退け防衛を果たし、立て続けに3連敗4連勝が達成されたのでした。
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2回達成されたとはいえ、不思議ですね。どうも腑に落ちませんね。
●●●から七番勝負に勝つ確率は、単純計算ですと1/16もあるのです。
それが約70年も出現しなかったとは。
しかし昔はタイトル戦が少なかったこともありますし、サンプルがどれだけあるか正確にはわかりませんよね。七番勝負でいずれかが出だし3連勝したケースが32しかなければ、確率通りですものね。
そこで、全部調べました。
以下が七番勝負でいずれかが3連勝したケース一覧です。
※王将戦で3局目に番勝負決着と認めているシリーズを除く。
全部で70回ありました。
第3期叡王戦はどちらかが保持していてどちらかが挑戦している形ではありませんので、単純に3連勝した側から見た星取をまとめると、以下となります。
○○○○・・・・38回
○○○●○・・・18回
○○○●●○・・9回
○○○●●●○・3回
○○○●●●●・2回
3連勝4連敗は2回しか出ていません。確率1/35。期待値1/16の半分にも満たない!
やっぱり棋界の不思議ではあります。
しかし、たかだか70のサンプルですし、何より「これまでがこうだったからこれからもこう!」 というのは勝負の世界では当てになりません。
素晴らしく前向きに見れば、「これまでは4―0、4―1、4―2が多すぎる。今までそれ以外が出なさすぎたのだから、これからどんどん出るはずだ」とも言えます。たかだか70のサンプルと言ったのはどこのどいつだ、という正論は置いといて。
両者の勝負をもう少し見たい!
第5、6局で予定されている持ち時間各1時間で指されるタイトル戦が楽しみ!
とお思いの方も多いはずですが、果たしてどうなりますか。
高見六段が押し切るか、金井六段が踏ん張るか・・・
注目の第4局は5月26日、群馬県富岡市「富岡製糸場」で行われます。
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