2018.04.20
【検証】「若くしてタイトル戦に登場する棋士 初挑戦時の通算勝率7割超えている」説
タイトル戦の顔ぶれが変わってきた今、檜舞台に上がる条件を考察、検証します。
本日4/20は、第76期名人戦第2局[2日目]が指されています。
佐藤天彦名人がタイトルの舞台に初登場したのは2015年度の第63期王座戦。相手は同棋戦で圧倒的な強さを誇る羽生善治王座でした。
五番勝負は佐藤が●◯◯とあと1勝のところまで絶対王者を追い詰めましたが、そこから連敗し、惜しくもタイトル初戴冠ならず。しかし敗れはしたものの、その戦いは次世代による新時代の訪れを予感させるものでした。
事実、この期を境にタイトル挑戦者として名乗りを上げる棋士の顔ぶれが変わってきたのです。いわゆる「羽生世代」と呼ばれる棋士たちは押されがちで、羽生を4―1で破って佐藤名人が誕生、菅井竜也王位、中村太地王座がタイトルを奪取し、他にも稲葉陽八段、斎藤慎太郎七段、永瀬拓矢七段、千田翔太六段といった新しい名前が次々と出てきました。
当たり前ではありますが、ここに名前が挙がった棋士、つまりタイトル戦に登場する若手は軒並み高勝率。いつも勝っている、よく勝っているという印象の棋士ばかりですが・・・
ところで、若手と呼ばれる棋士は具体的にどれくらい勝っているとタイトル戦に出られるのでしょう。
お考えになられたことがあるでしょうか。
ここで、ひとつの仮説を立ててみます。
「若くしてタイトル戦に登場する棋士、初挑戦時の通算勝率が7割を超えている」説
本ページでは、これを検証してゆきたいと思います。
☆
では、さっそく検証してみたいと思います。
下の表は、最近タイトルを獲得またはタイトル戦に登場した若手棋士の、初挑戦を決めた時点での通算勝率です。(並びはデビュー順)
いかがでしょう。
ほとんどの棋士が7割超え、またはそれに準ずる(7割に近い)勝率であることがわかります。
一番低い[0.645]の中村王座はデビューから約6期でタイトル初挑戦を果たしていますが、デビューから3期は0.556(56-43)とやや奮わなかったことが7割に近づかなかった原因のようです。4期目から初挑戦までの約3年間は、勝率を0.704(95-40)としています。
少し時をさかのぼって、若くしてタイトルを獲得した棋士、および永世称号資格保持者の初挑戦時勝率も見てみましょう。(並びはデビュー順)
やはり7割超えが多いですね。
一点豪華主義、ひとつの棋戦に星を集めれば良いというわけではなさそうです。
以上から「タイトル戦に登場する棋士は、初挑戦時の通算勝率が7割を超えている」説は、まあまあ正しいと(勝手に)認定します。
次にタイトル戦線をにぎわす新しい顔は、誰なのでしょうか。
4/19日現在、通算勝率7割超え、またはそれに準ずる棋士は以下です(タイトル保持者、獲得経験者を除く・規定対局数なし)。
- 豊島 将之八段 0.6996(410-176)
- 稲葉 陽八段 0.6815(274-128)
- 永瀬 拓矢七段 0.7131(276-111)
- 斎藤慎太郎七段 0.6914(177-79)
- 佐々木勇気六段 0.6812(233-109)
- 千田 翔太六段 0.7109(182-74)
- 藤井 聡太六段 0.8588(73-12)
- 増田 康宏五段 0.7070(111-46)
- 青嶋 未来五段 0.6717(88-43)
- 近藤 誠也五段 0.7154(88-35)
- 都成 竜馬五段 0.6931(61-27)
- 大橋 貴洸四段 0.7611(51-16)
- 斎藤明日斗四段 0.7777(7-2)
※参考 日本将棋連盟HP内「通算成績」
※0.670以上を基準に掲載しています。
☆
ところで・・・
初挑戦してはじき返され、タイトルを獲ったら獲ったで次期には強い強い挑戦者が現れ、順位戦も上のクラスに行けば行くほど勝ちづらく・・・なんてやっていれば、当然初挑戦時の勝率からはゆるやかに下がっていくのが自然の摂理と思うのですが・・・
この棋士。
羽生 善治竜王 通算勝率 0.7124(1400-565)
※4/19現在
まあ、初挑戦時[0.801]からは下がっていますけど・・・
やはりこのお方は・・・
「永世七冠と呼ばれる棋士、2000局指しても通算勝率7割超えている」説の検証もしてみたいですが、2人目のサンプルが現れるのは、いったいいつの日になるでしょうか。
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