2018.04.09
弾丸娘からの変貌!? 西山朋佳奨励会三段(第11期マイナビ女子オープン挑戦者)
第11期マイナビ女子オープン挑戦者の西山朋佳奨励会三段に関する興味深いデータをご覧ください。
皆様こんにちは。将棋情報局です。
いよいよ明日10日、第11期マイナビ女子オープン五番勝負が開幕します。
永世女王(通算5期)を目指す加藤桃子女王と対するのは、2月16日に行われた挑戦者決定戦を制した西山朋佳奨励会三段。2014年の第4期リコー杯女流王座戦五番勝負以来、2度目のタイトル挑戦となります。
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本記事では、その西山奨励会三段にまつわる面白いデータを紹介します。
まず、下表をご覧ください。西山三段がタイトルに初挑戦した2014年、第4期リコー杯女流王座戦五番勝負における消費時間です。持ち時間は3時間です。
※以下の肩書はすべて当時。
局 | 西山の消費時間 | 勝敗 | 相手 | 相手の消費時間 |
第1局 | 2:29 | ● | 加藤桃子女王 | 2:51 |
第2局 | 1:53 | ● | 加藤桃子女王 | 2:51 |
第3局 | 1:30 | ● | 加藤桃子女王 | 2:42 |
加藤女流王座の3―0という結果で終わったこのシリーズ、西山二段は第1局こそ[2:29]とそこそこ時間を使ったものの、第2局は[1:53]と約3分の2残し、第3局は[1:30]と持ち時間の半分残しで敗戦しています。
気合が良いと言えば気合が良いですが、何かもったいないといえばもったいないような・・・
せっかくのタイトル戦なのですからもっと楽しめばいいのにと思ってしまいます。
ちなみに、その期の本戦1回戦からの消費時間はといいますと・・・
回戦 | 西山の消費時間 | 勝敗 | 相手 | 相手の消費時間 |
1回戦 | 0:19 | ◯ | 本田小百合女流三段 | 2:51 |
2回戦 | 1:59 | ◯ | 清水市代女流六段 | 2:59 |
3回戦 | 0:36 | ◯ | 伊藤沙恵奨励会1級 | 1:33 |
※注・この期の女流王座戦は、タイトル保持者だった里見香奈女流王座の長期休場により空位となり、本戦決勝に進んだ両者でタイトルを争った。
いやいやいや。36分はともかくとして、19分って・・・
中継の行なわれる棋戦はほとんど見ていますが、当時「とんでもない弾丸娘が現れたものだ」と思ったものです。
そして、マイナビ女子オープンの本戦でも早指しの傾向は続きました。
第9期(2015年度)
回戦 | 西山の消費時間 | 勝敗 | 相手 | 相手の消費時間 |
1回戦 | 1:09 | ◯ | 室田伊緒女流二段 | 2:40 |
2回戦 | 1:29 | ◯ | 伊奈川愛菓女流初段 | 2:15 |
準決勝 | 1:36 | ◯ | 香川愛生女流三段 | 2:10 |
決勝 | 3:00 | ● | 室谷由紀女流二段 | 3:00 |
決勝の対室谷女流二段戦以外は、たくさん時間を残しています。
第10期(2016年度)
回戦 | 西山の消費時間 | 勝敗 | 相手 | 相手の消費時間 |
1回戦 | 1:49 | ◯ | 伊藤沙恵女流二段 | 2:53 |
2回戦 | 2:12 | ◯ | 中倉宏美女流二段 | 3:00 |
準決勝 | 2:42 | ● | 上田初美女流三段 | 3:00 |
ここに来てようやく全局において時間を半分以上使いましたが、相手よりも時間を使わない、という点においては共通しています。
しかし挑戦権を獲得した今期第11期(2017年度)は、棋戦参加初期とは明らかに傾向が違いました。
以下をご覧ください。
回戦 | 西山の消費時間 | 勝敗 | 相手 | 相手の消費時間 |
1回戦 | 0:45 | ◯ | 竹部さゆり女流三段 | 2:06 |
2回戦 | 2:07 | ◯ | 里見咲紀女流初段 | 2:51 |
準決勝 | 3:00 | ◯ | 里見香奈女流五冠 | 2:56 |
決勝 | 2:36 | ◯ | 岩根忍女流三段 | 3:00 |
1回戦こそ弾丸っぷりを発揮したものの、2回戦以降は慎重そのもの。
準決勝の里見香奈女流五冠との対戦では、初めて持ち時間を使い切ると同時に、初めて相手より時間を使いました!
そして続く岩根忍女流三段との挑戦者決定戦も、時間に余裕はあるものの大半を費やして挑戦権獲得を果たしたのです。
いかがでしたでしょうか。
これが意識したものなのか、偶然そうなっただけなのかは本人のみぞ知るところではありますが、データからは、弾丸娘からの変貌を遂げたか、もしくはその途中か、そんなところが見て取れます。
☆
ところで西山三段は、藤井聡太六段 奨励会最後の対局となった第59回(2016年度前期)三段リーグ最終局の相手でした。
藤井六段は西山三段に勝ってプロ入りを決めたのです。
西山三段本人にとっては不名誉な過去だとは思いますが、将棋世界 2017年12月号、「ドキュメント 神を追い詰めた少年―藤井聡太の夢―第5章」では、その前後について著者大崎善生氏から取材を受け、心境を語っています。
その記事内で、大崎氏は愛情を持って西山三段のことを「暴れ馬」と称しています。「弾丸娘」は多少失礼な言いようかも知れませんが、まるで的を射ていないとも思いません。今期マイナビ女子オープンの戦いはいままでの戦いと比べると慎重に見えましたが、気合の良さ、元気の良さも西山将棋の魅力のひとつなのです。
さて、五番勝負ではどんな暴れっぷりを見せてくれるのでしょうか。
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