2018.03.07
師弟戦にまつわるエトセトラ ~ 3/8 杉本昌隆七段―藤井聡太六段 注目の一戦を前に
杉本昌隆七段―藤井聡太六段戦を前に、師弟対局についてのあれこれを書きつづりました。
皆様こんにちは。将棋情報局です。
明日3月8日は注目の王将戦一次予選 杉本昌隆七段VS藤井聡太六段の師弟対局が行われますね。
対局は将棋プレミアム(囲碁・将棋チャンネル)と、将棋連盟ライブ中継で観戦できます。
楽しみです。
杉本昌隆七段(左)と藤井聡太六段
もうひとつの師弟対局
杉本VS藤井のインパクトが強すぎて少し隠れがちなのが残念ですが、つい最近、ある師弟対局の実現が決定しました。こう言って、ピンとくるファンの方も多くいらっしゃるでしょう。
そのカードとは・・・
「畠山鎮七段(師)VS斎藤慎太郎七段(弟)」!
畠山鎮七段(左)と斎藤慎太郎七段
対局は、割と先になるかと思います。
第77期(=来期)順位戦B級1組での対局となります。
前期第75期、畠山七段はB級1組、斎藤六段(当時)はB級2組に在籍していました。
斎藤六段は初参加ながら9勝1敗の好成績を挙げ、1期でのB級1組昇級を決めました。これで師弟対局が実現か? と思われましたが、残念なことに畠山七段がB級2組に降級してしまい、すれ違いで実現しませんでした。
しかし今期第76期、畠山七段は残り1戦を残して8勝1敗、昇級枠の2位以内を確定させ、1期でのB級1組返り咲きを決めたのです!
これで斎藤七段が降級・・・なんてことになりますと2期連続のすれ違いとなってしまうところでしたが、こちらも残留が確定。来期の師弟対局実現が確定となりました。
しかし畠山七段、弟子のA級昇級を願う師匠としては「斎藤! なんでまだB1におんねん!」という心情かもしれませんね。(←口調、心情は想像です)
激レア! 順位戦での師弟対局
上で紹介したような順位戦での師弟対局は、実はとってもレアなケースです。
なぜなら、順位戦では抽選で10人の対戦相手を決めるB級2組、C級1組、C級2組は、師匠と弟子は当たらないルールになっているからです。(※注1)
総当りのA級、B級1組のみ、師弟対局が行われます。抽選ではなく総当りですからね。当たり前といえば当たり前ですが、当たります。
一番有名な順位戦での師弟対局は「大山康晴(師)VS有吉道夫(弟)」でしょう。最高峰のA級で、実に10局も指されています(大山の6―4、有吉の不戦勝1を含まない)。この数字は師弟がそろって永くトップクラスにいたことの証です。
順位戦での師弟対局、他にも探してみたのですが、やっぱり少ない!
目を皿のようにして探してみると、板谷進(師)VS小林健二(弟)がB級1組で3局(板谷の3―0)、田中魁秀(師)VS福崎文吾(弟)がB級1組で1局(田中の1―0)指されていました。
そして、2人のお弟子さんと順位戦で指した「果報者」のお方もいらっしゃいました。
そのお方とは、昨年お亡くなりになられた大内延介九段です。師弟対局は、塚田泰明とB級1組で1局(大内の1―0)、富岡英作とB級1組で3局(大内の1―2)。
(故)大内延介九段
見つけられたのは、これだけです。
「他にもこんな対局がありますよ」のご報告、大歓迎です。
☆
話は戻って杉本七段VS藤井六段戦。
藤井六段、棋戦優勝を果たした後も負けていません。現在13連勝中でございます。大記録の29連勝が止まった後も3連勝、4連勝は当たり前、大きいところでは9連勝、そして佐藤天彦名人、羽生善治竜王、広瀬章人八段からの勝ち星を含む継続中の13連勝という・・・この勝ちっぷりを見せられては、この人なら高確率で連勝を止められる、という棋士を探すのがもはや難しい状況ではあります。
かたや杉本七段は、報道の影響で最近すっかり「藤井六段を育て上げた心優しい先生」という一面ばかりがクローズアップされてしまっていますが、忘れてはいけません。表の顔は、棋士・杉本昌隆。竜王戦最高クラスの1組8期、順位戦B級1組4期の実績を持つ実力者です。
さて初の師弟対局、師匠が意地を見せるか、それとも弟子が「恩返し」(※注2)を果たすのか・・・
注目しましょう。
(※注1)順位戦には最高クラスのA級から、B級1組、B級2組、C級1組、C級2組までの5クラスがあります。
(※注2)将棋界で、弟子が師匠に勝つことをこう言います。
※スコアに段位、肩書が変わっての対局が含まれるため、一部敬称(段位、肩書)を省略しました。ご了承ください。