羽生善治の凄みがわかる観戦記|将棋情報局

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羽生善治の凄みがわかる観戦記

羽生善治永世七冠の誕生を記念して2月27日に発売されたムック「永世七冠 羽生善治のすべて」には、羽生善治の歴史を彩る名場面を書き残した数多の名観戦記が収録されています。

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永世七冠 羽生善治のすべて」は、あらゆる角度から羽生善治を掘り下げています。

今回は、本書に掲載されている観戦記の一部を引用してご紹介します。

第83期棋聖戦五番勝負第3局 中村太地六段戦

【第1図は△3四金まで】
 

前略、羽生様、どうしてこのような手が指せたのですか?感想戦であなたは、「△3四金で負けだと思いましたが、この手を発見したので。」とさらりとおっしゃいました。ですが普通はこんな手は思いつきません。だってそうでしょう。▲2四桂というすごい手を放ち、局面のスピードを上げ、激しい寄せ合いに持ち込んだのはあなたです。そして▲2二飛と王手をして、さらに▲4五桂と金取りに打ち、持ち駒を全部使って寄せにいったではないですか。どうしてここで急ブレーキを掛けられるのですか?たしかに飛車を引かれて後手は困っています。△2四銀は▲3四飛だし△2四金は▲3一飛成です。2四の桂を悪手にするはずが逆に後手の金銀がバラバラになっています。しかしですよ。この手が最善手かどうかの問題ではないのです。この手が人間に指せる手かどうかなのです。

【第2図は▲3六飛まで】

 

第20期棋王戦五番勝負第3局 森下卓八段戦

【第3図は△5四角まで】

△5四角は、それをモニター画面で目撃した控室も「はああー」と首を傾げた一手であった。
「一体何をやってくるんだろうと思いましたよ」と局後の森下。それはそうだ。△8七角成の筋は簡単に受かるから5四の角は瞬時に打ち損となる運命にある。
一分の考慮で、当然と見える▲7六歩は打たれた。羽生はどうするんだろうと訝る控室同様、森下も次の相手の手が分からなかったという。さもあろう。つと、羽生の手が伸びて△3六角だが、こんな遊び形の銀を取るなどというのは先手にとって有難いような一手である。
記者はこの瞬間、羽生変調!森下勝ちを思ったのだが、驚いたことに事実はまったく逆であったのだ。

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