『誇りを胸に』 金井恒太 四段昇段の記~将棋世界2007年5月号より|将棋情報局

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『誇りを胸に』 金井恒太 四段昇段の記~将棋世界2007年5月号より

将棋世界バックナンバーから厳選した記事を掲載する当コーナー。第11回と第12回は、第3期叡王戦で決勝七番勝負へ進んだ金井恒太六段、高見泰地六段がそれぞれプロ入りを決めた際の四段昇段記をお送りします。

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『誇りを胸に』

 13歳のとき、研修会からの仮入会という形で、私の奨励会生活は始まった。三段昇段までは特別な苦労もなかったが、三段リーグに入り、初めて壁にぶつかった。力をつけているつもりでも、結果を出せない時期は苦しく、長く感じられた。相手の昇段を阻止したことが二度あったが、そこで意地を見せるのが精一杯で、昇段争いに絡むことはできなかった。

 今期もリーグ序盤は出遅れたが、自分の中で勝負将棋と位置づけていた5回戦の対豊島戦で、内容の良い将棋を指せたことは自信になった。

【図は▲3七角まで】

 図は8回戦の対渡辺(愛)戦、終盤の局面である。序盤で作戦勝ちを収めたものの、無理な仕掛けをしてしまい、苦戦に陥っている。一番指したい手は△4六歩だが、▲同角△同角▲同金と応じられて負けを早めると思えた。苦慮の末、△9三香と指した。▲9一竜~▲1八香打を防いだものだが、一手パスに近い辛い手だ。がしかし、負けるわけにはいかないという気持ちの入った手でもあり、今期の中で一番印象に残っている。以下なんとか混戦に持ち込み、逆転勝ちとなった。結果的にこの将棋が連勝の始まりであったわけだが、三段リーグが常にそうであるように、その後もピンチのない将棋はなかった。

 他力で迎えた最終日、私は平常心を心掛けた。だが、一局目を勝ち、判を押す際に自力になったことを知った。その時判を持つ手が震えたのを覚えている。最終戦も覚悟していた通りの厳しい戦いになったが、最後の最後で相手のミスに助けられた。今期の幸運を象徴するような一局だった。

 私と将棋を指して下さった方々、またこれまで応援して下さったすべての方に深く感謝しつつ、棋士になれたということを誇りとし、今後も精進していきたいと思う。

~記事内プロフィール~

四段 金井恒太

昭和61年5月25日生まれの20歳。埼玉県出身。平成11年10月飯野健二七段門下で奨励会入会。得意戦法は角換わり腰掛銀。趣味は音楽

日本将棋連盟HP内
第40回奨励会三段リーグ戦 2006年10月~2007年3月

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将棋世界編集部(著者)