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詰将棋の鬼、道なき道を行く 「ゆめまぼろし百番」

オンデマンド版として復活することになった「ゆめまぼろし百番」について『詰将棋探検隊』の著者の角さんに語っていただきました

駒場和男さんの詰将棋作品集「ゆめまぼろし百番 プレミアムブックス版」が11月28日に発売されます。今回の発売を記念して、本書について『詰将棋探検隊』の著者の角さんにお話をうかがいました。

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それでは、めくるめく詰将棋の世界のはじまりはじまり~。

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島田「よろしくお願いいたします」

角「よろしくお願いいたします」

島田「まず、本書の著者である駒場和男さんについて教えてください」

角「昭和ひと桁生まれの詰将棋作家で、御社から出ている『夢の華』の山田修司さんや『禁じられた遊び』の巨椋鴻之介さん、それから北原義治さんといった方々とともにその時代のスター作家の一人です。戦後、「詰パラ」や「近代将棋」という発表の場が整った頃に彼らの才能が一斉に華開いて昭和の詰将棋の黄金期になりました。その中で駒場さんは「超ド級の長編作家」というイメージ。山田さんは構想派の長編や中編が得意で、新しい仕組みを創り出す人、巨椋さんもそれに近い。北原さんはオールラウンドプレイヤーで、ヒットも打てるしホームランも打てるし守備もうまいしという感じ。ただ北原さんは本が出てないので、私としてはいつか出したいと思っています」

島田「はい。ぜひ作ってください。そしてマイナビ出版から発売してください」

角「山田さんのときも話しましたけど、忘れてはならないのはこの年代の方たちには『宗看・看寿を超える』というのが絶対の命題としてあったということ。その中で山田さんや巨椋さんはどちらかとえば看寿の路線を目指していたと思うけど、駒場さんは宗看に近い感じ。仕組みというより、一手のインパクトで勝負するような、ドーンと竜を捨てたり」

島田「ドーンとですか」

角「そう。山田さんや巨椋さんの作品はあくまで仕組みを具現化したものだから、その仕組みさえ分かってしまえば解ける。でも駒場さんの作品は道なき道を行くから『えっ?それで詰むの?』という順に入ったりして解きにくい。そういう作風だから自然と難解な作品が多くなるわけです」

島田「なるほど。仕組みというのは、詰将棋を解く上での一つの道しるべになるんですね」

角「駒場さんにも初期の頃には趣向作があるんだけど、それも通れるはずのない道が奇跡に通れた、というのが多い。普通は先に仕組みがあるから安心してそこを繰り返し通れたりするんだけど、駒場さんのは空中で偶然道がつながっていた、というような作品になってる」

島田「例えばどの作品でしょう?」

角「え~と、・・・あった、これだ」

第81番『9秒フラット』
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角「これが初手▲6九金から下の途中図まで進んで」

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※「圭」は「成桂」です
 

角「ここで▲2八銀と王手する」

島田「捨て駒ですね。取ります」

角「いや、取ると▲5八竜から早く詰むから」

島田「おお、なるほど。じゃあ△1八玉しかないですね」

角「▲2七銀で」

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島田「まさか、これも取らずに△1七玉?」

角「そう。以下もタダの銀を取らずに▲2六銀△1六玉▲2五銀△1五玉▲2四銀△1四玉▲2三銀不成△1三玉▲2二銀不成△1二玉・・・」

島田「おおおー!まじか!すごい」

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角「と、ここまでいって▲1一飛成以下、2枚竜で追い回して詰む」

島田「こんな趣向があるんですか。よく思いつきますね」

角「そう、普通の趣向作は元々のアイディアがあるものを組み合わせたり、2回連続でやったりするんだけど、この人の場合はアイディアが自体が斬新で、しかも『そんなことができるのか?』という離れ業をやってのけるからすごい。ただ常にギリギリを通っていたから、コンピュータでの余詰検証ができるようになって余詰が発見されたとき、それを解消するのにかなり苦労したらしい。この『ゆめまぼろし百番』を出すときも大変だったみたいで、当時編集担当者に、いつ出るの?と聞いたら、たぶん出ないと思います、と言ってたから(笑)」

島田「それはそれは。当時の編集者にお疲れ様でしたと言いたいですね。いやー、でも取れる銀をずっと取らずに1筋をずり上がっていくのはすごかったです。他の作品も教えてくだせえ」

角「はい。では、さっき言った手のインパクトがすごいやつを」

島田「お願いします!」

第77番『春雷』
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島田「ふむ。もしかして初手は▲6三銀不成じゃないですか?」

角「正解です」

島田「やったー。で、△同玉に▲6一飛成?」

角「いや、それは早く詰むから▲6三銀不成には△5三玉と逃げます」

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島田「なるほど。で、▲5五竜△6三玉▲6一飛成と進むわけですね」

角「ほう。以下、△同金▲7四と△同玉▲6四竜△8五玉▲7五竜△9四玉と進むと?」

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島田「あれ?▲9五歩で打ち歩詰めじゃないですか!しかも角2枚余ってるし。▲7四竜も△9五玉があるからダメですね」

角「そう。でももし、ここで9六の歩がと金だったら、▲9五歩△同と▲7四竜△8四歩▲8三銀不成までの詰みです」

島田「おお~。▲9五歩の捨て駒でいいかんじに退路封鎖してますね。でも現実的には9六にいるのは歩じゃないですか。現実は厳しいってことですよ」

角「いやいや、持ち駒の角2枚があるじゃない。それを使って9六の歩をと金にするんです」

島田「そんなアメイジングな手順があるんですか?」

角「そのために、もう一回2手目の局面に戻る」

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島田「そこまで戻るんですか(笑)」

角「ええ。ここで▲5五竜の前に▲9七角!と打ちます」

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島田「きゅ、▲9七角!? なんと!こんな手が! イッツ・アメイジング!! ・・・って、△同歩成でタダですけど?」

角「以下、さっきと同じように▲5五竜△6三玉▲6一飛成△同金▲7四と△同玉と進める」

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島田「はい。さっきはここで▲6四竜でしたね」

角「この局面で▲9六角!ともう一枚の角を打ちます」

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島田「なんと!またもや角捨て! 本日2度目のイッツ・アメイジング!! って、△同とでまたタダなんですけど。・・・ん?・・・・・・あっ!」

角「そう、△同とに▲6四竜△8五玉▲7五竜△9四玉と進むと?」

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島田「イッツ・ファンタスティック!! 9六の歩がと金に変わっとるやないですか!! 」

角「以下はさっき言った手順で詰みます」

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島田「すげー、すごすぎて気を失いそうです」

角「持っている2枚の角を9七と9六に捨てるのがインパクト抜群、これしか詰まないんだからすごい」

島田「なるほど~。・・・・・・って、ん? ちょっと待ってください。それなら玉方も最初の▲9七角を△同歩不成で取ればいいんじゃないですか?と金にするから詰んじゃうわけで。ホラ、どうですか!この島田の発見」

角「いやいや、それは2度目の角打ち(▲9六角)のときに△同と取れなくなるのでダメです」

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※ここで△同とと取れないので△8五合▲6四竜まで簡単

島田「・・・ちくしょーー!!世紀の大発見ならずでしたか。不成だけに。それにしてもこれもすごい作品でした。恥ずかしながら、私駒場さんの作品はかの有名な『父帰る』しか知りませんでした。他にもすごいのがたくさんあるんですね」

第100番『父帰る』
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※玉が5五の地点から出発して、盤面の駒を消し去り、最後はまた5五の地点に戻ってくる。還元玉都煙詰という奇跡的な作品。
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角「もちろん『父帰る』もすごいです。この作品は駒場さんが期間を空けながら3度目のアタックでついに完成させたもの。あまりにも制作に集中しすぎて家庭をかえりみなかったために、『父帰る』が完成したら奥さんがいなくなっていた、というのは有名な話です」

島田「駒場さんには『詰将棋の鬼』というニックネームがあるんですよね。それだけ詰将棋に人生を捧げてらっしゃったということですね」

角「駒場さんには他にも『巌流島』という素晴らしい作品があるけど、そのすごさを説明するのはなかなか難しい。まぁこれは自分で解いてみてください」

第23番『巌流島』
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※解説「竜鋸の接近による8一玉強制で9二歩型を避けた後、桂消去による打歩詰回避」(書いていて意味不明)

島田「いやいやいや、最後投げっぱなしって!しかも私に解けるわけないし。とりあえず書籍を読んで観賞してみますよ」

角「よろしく」

島田「今日はありがとうございました。すごい作品を紹介していただいて感謝感激でした」

角「いえいえ、こちらこそありがとうございました」

 
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道なき道を行った詰将棋の鬼の足跡。書籍で観賞してみてはいかがでしょうか?

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最後に本書あとがきから一部を抜粋して記載します。

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 私は中学を卒業するまで叔父平石文弥・叔母ヨシに育てられることになった。学校から帰ると四畳半の勉強部屋で作図に没頭。詰将棋作家への道を歩み始めたわけである。

 その道を進めば、宗看の「無双」・看寿の「図巧」を超えたくなるのは、いや、ならなかったら嘘であろう。私の場合も、いつしかそんな気分になっていて。だが、それは容易なことではなかった。

(中略)無双・図巧は後世へメッセージを発信し続けている。それは受信者が居るからである。私も後世へメッセージを発信したい。受信者が居ると信じて。文面はこうである。

 詰むや 詰まざるや
 詰まざるや 詰むや
 この繰り返し とこしえに
         
 -駒場和男-
 
 

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