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荒野のナラズ物 詰将棋・玉方が魅せるぎりぎりの受け

先日発売開始となりました詰将棋書籍「一番星」に掲載の90番の中から、第8番をご紹介します。
玉方による、打歩詰めを誘う「不成」の技。「週刊将棋」2013年8月7日号「新詰将棋探検隊」第9回からの抜粋記事です。

隊長  将棋の三大禁じ手といえば?

隊員C 「二歩」「打歩詰」「行きどころのない駒」ですよ、えっへん。

隊員A それらのルールがいつごろ定着したのかは、正確にはわからないみたいですね。

隊長  なにしろ将棋は古い文献が少ないらしいからね。その中でも、打歩詰は非常によくできたルール。今回は打歩詰に絡んだ、玉方の不成(ナラズ)の作品を紹介します。

隊員C 不成は「ふなり」と読むんじゃないんだ。

隊長  そう読む人が多いのはちょっと残念ですね。打歩詰は玉方からすると、相撲の徳俵みたいなもの。ぎりぎりの受けなんです。

■角不成、連続3回

隊員A 古作物には不成百番と言われる『将棋精妙』(注)という作品集がありますよね。

隊長  ところが思いのほか玉方不成の作品は少ないんです。

隊員B そうなんですか。

隊長  昭和以前の詰将棋は、ごく一部を除くと、そのほとんどは攻め方の妙手を中心に構成されているんです。中合・移動合などの合駒を含め、玉方の受けの妙技が飛躍的に発展したのは、実は戦後からなんですね。

(注)『将棋精妙』は五世名人の二代伊藤宗印の作品集。没後の安政5年(一八五八年)に出版されたと言われている。

【中野和夫作 「近代将棋」68年10月号】  

第17番 中野和夫作
▲8七金△同角不成▲9六飛△同角不成
▲7七龍△8七角不成(途中図)

 

隊員C うわ、いきなり3連続の角不成だ。

隊長  問題図で7七の金がなければ、すかさず▲7七龍があります。

隊員A そこで邪魔な金を消して、▲7七龍の実現を目指すわけですね。

隊員B 2手目△8七同桂成は、▲9六飛△8八玉▲7九金まで。△8七同桂不成なら、▲8九桂△9八玉▲8八金△同玉▲7七龍△8九玉▲8八飛まで。いい感じの変化ですね。

隊長  角不成の理由は明快です。角を成ってしまうと、途中図から▲8八金△9六玉▲9七歩以下詰んでしまいますから。

【途中図は6手目△8七角不成まで】  

(途中図以下の手順)
▲8八金△9六玉▲7六龍△同角成
▲9七歩△8六玉▲7八桂
まで13手詰

 

隊員B この収束自体は下段で見たことがあります。

隊長  前半の連続角不成から、龍を捨てるこの収束にうまく結びつけたと言うべきでしょうね。

隊員A 7四の馬は、▲7六龍に対し△8六合とされたときに、▲8五馬までで詰ますための駒でしょうか。

隊長  そうだと思います。「▲7四馬▲7五歩」の代わりに「▲7四銀△7五桂」とすることもできそうですが、それはもう好みの問題。当然作者の決定が尊重されるべきです。非常に明快な、スッキリした角不成の作品でした。

【詰め上がり図は▲7八桂まで】  

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著者

角建逸(著者)