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神童VS神童! 藤井聡太四段VS増田康宏四段戦の展望

ここでは2017年6月26日(月)に行われる竜王戦決勝トーナメント1回戦、藤井聡太四段VS増田康宏四段戦の展望を掲載します。

こんにちは。編集部の島田です。

既報のとおり、6月21日藤井聡太四段が澤田真吾六段を破り、デビュー以来負けなしの28連勝という驚異的な記録を打ち立てました。次戦で公式戦連勝記録の更新がかかっています。

その相手となるのが増田康宏四段。生涯のライバルになるかもしれないこの二人の対決がこんな大舞台で実現するとは、なんというめぐり合わせでしょうか。将棋ファンのみならず日本中が注目する一局となりました。ここでは私が持てる情報を駆使してこの世紀の一戦を展望してみたいと思います。


【バトルフィールドその1 才能】

まずはこの一戦を観る上での前提ともいえるところですが、二人の天才性について改めてまとめてみたいと思います。

藤井聡太四段についてはみなさんご存じの通り。14歳2か月という史上最年少記録でプロデビューを果たした天才です。本人が自らのレーティング推移について語るところでは

「将棋クラブ24の点数に当てはめると7歳で1500点。10歳で2400点。13歳で3090点。三段リーグが始まってからこれまで、150点から200点くらいは伸びたと思う」

とのこと。7歳で1500点も当然すごいですが、そこからの伸び方も尋常ではありません。

一方の増田康宏四段も負けてはいません。ご存じの方も多いと思いますが、増田四段にも三段リーグ1期目の最終日まで中学生プロデビューのチャンスがありました。その好機は惜しくも逃しましたが、16歳でプロデビューを果たし、デビュー後も各棋戦で勝ちまくっています。もし藤井聡太四段がいなかったら、この増田四段が若手のリーダーになっていたのでしょう。

将棋を覚えてから強くなっていったスピードもすさまじく、5歳で将棋のルールを覚えると小2でアマ四段、小3で倉敷王将戦の低学年の部で優勝、小4で高学年の部で優勝しています。恐ろしい成長曲線。

と、いうわけで才能に関しては藤井四段もすごいが増田四段も劣らずすごい。ともに天空の世界の住人ということで、五分と見ます。


【バトルフィールドその2 序盤】

前提となる話が終わったところで、次に対局の中身について展望してみたいと思います。
なんとなくのイメージでは藤井四段は詰将棋解答の天才であり、一方の増田四段は詰将棋は意味がないと発言している、終盤力では藤井四段が上、という印象があるではないでしょうか?

しかし、私はそうは思いません。

なぜなら増田四段が藤井四段のどこが強いと思うか?という質問に対してはっきりと「序盤が強い」と述べているからです。私はこれまで何人かのプロ棋士に藤井四段のどこが強いと思いますか?という質問をしてきましたがその答えの多くは、やはり「終盤力」ということでした。
明確に「序盤が強い」と返答されたのは増田四段だけです。つまり増田四段からみて、藤井四段の警戒すべき点は終盤力ではないのです。序盤の研究なのです。逆に言えば終盤力にはそれほど差を感じていないということでもあります。

思い起こせば増田四段が新人王を獲得したとき、最後はこれしかないという手順での鮮やかな詰みでした。これを忘れてはいけません。

カギを握るのは序盤、ここまでわかったところで、次はその序盤戦の優劣を決める上で外せないファクターについて考えてみたいと思います。

そうです。それは、ソフトです。


【バトルフィールドその3 ソフト】

藤井四段が研究にソフトを用いているというのは有名な話です。現在では3つのソフトを併用しているとのこと。本人も「奨励会級位のころの自分はかなりの攻め将棋だった。初段くらいから徐々に受けることも覚え始め、三段になって将棋ソフトを使い始めてからは序盤から受けに回る将棋もよく指すようになった。攻めることによって得るアドバンテージよりも実際の形勢を重視するようになったためだ」と語っています。

「攻めることによって得るアドバンテージよりも実際の形勢を重視する」という発言も深掘りしてみたい気はしますが、とりあえずここでは将棋ソフトを使い始めたことが藤井四段の序盤の強さに寄与しているということを確認しておきます。

このような勉強法に対して、ソフトではなく自らの経験で培ってきた知識で戦うというプロ棋士も多いのかなと思います。確かにソフトでインタントに得た情報より、脳に汗をかいて血肉となった手順や考え方の方が整合性も汎用性も高いような気がします。

が、増田四段のスタンスははっきりしています。「藤井四段がソフトで研究しているのなら、それに負けないようにこちらもソフトで研究しなければいけない」というのです。

これからの将棋はソフトをうまく使ったものが勝つ、そんな時代が来るかもしれない、などとのんきなことを言っている場合ではないのです。10代同士の対決においては、すでにその時代は来ている、それが当たり前になっているのです。

本局の勝敗のポイントは序盤にあり、序盤の優劣の針はソフトをうまく使った方に傾くでしょう。

本局は序盤から、いや初手から目を離してはいけません。


【バトルフィールドその4 メンタル】

本局の注目度の高さはすさまじく、おそらくマスコミ各社が対局場に押し寄せることになると思います。

藤井四段にとってはもはや見慣れた光景ですが、増田四段にとっては異様に映るはずです。また、新記録達成を期待している場の空気は増田四段に重いプレッシャーとなってのしかかることでしょう。

と、いうのが普通の考えですが、私は増田四段のメンタルがそんなにやわなものだとは思いません。インタビューを含めて何度かお話しましたが、若者らしいすがすがしさと鈍感力のようなものを感じました。

現在発売中の「堅陣で圧勝!対振り銀冠穴熊」に「勝負強さ・弱さ」というコラムがあります。曰く、

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 三段リーグ時代を私は2年半、5期経験した。1期目と3期目は、最終日連勝すれば昇段のチャンスが十分あったのだが、どちらも1局目に大敗しチャンスをつぶしてしまった。(中略)
 そこから勝負弱さという部分に悩んでいたのだが、とある本に「チャンスで勝てる、勝てないなんて、ただの運じゃないか」という一文があり、とても感銘を受けた。つまり私の2件の大敗も「チャンスで大敗してしまった」ではなく、「チャンスのときにたまた大敗してしまった」という考え方だ。
 5期目の最終日に連勝して、私は昇段できたのだが、このある意味お気楽な思考が役立ったのかもしれない。
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今回の勝負も増田四段にとっては勝つか負けるかはただの運、そんな風に考えているのかもしれません。

と、いうわけでメンタル面でもどちらが有利ということはなく、互角の勝負とみます。


【バトルフィールドその5 対戦成績】

最後は対戦成績について触れておきます。非公式ではありますが、この2人はこれまで3局指したことがあります。

藤井四段の奨励会時代に2局指し、増田四段の2連勝。プロデビュー後炎の七番勝負で藤井四段の1勝、という状況です。

これまでの通算でいうと増田四段の2勝1敗ということになりますが、互いに成長していますし、公式戦ではこれが初対局なので、あまり参考にならないかもしれません。


【まとめ】

長々と書いてきましたが、この2人は今後何局も何十局も対戦することになるでしょう。その初戦がこのような大舞台となったことに運命的なものを感じます。

藤井四段に29連勝の新記録を達成してほしいとも思いますし、増田四段に炎の七番勝負のリベンジを果たしてもらい、藤井四段のライバルとして世に名乗りを上げてほしいという気持ちもあります。

楽しみすぎる一戦。6月26日は仕事を忘れて(?)観戦したいと思います。

 

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