『四間飛車至上主義』棋書アンバサダーによるレビュー 復活!四間飛車党様|将棋情報局

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『四間飛車至上主義』棋書アンバサダーによるレビュー 復活!四間飛車党様

『四間飛車至上主義』棋書アンバサダーによるレビュー、第4弾です!

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レビュー第4弾は、復活!四間飛車党様です。

ご自身の四間飛車遍歴に絡めてアツいレビューを書いてくださいました。
他のレビュアーの皆さんもそうですが、四間飛車党の方は皆さんとても勉強熱心ですね(^^)

それでは、どうぞ!

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四間飛車至上主義、最高!
ペンネーム 復活!四間飛車党   棋力 二段

今から20年ほど前、長い間中断していた将棋をふとしたことをきっかけに再開しようと思い、定跡の進歩に驚きながらも、いい機会なので藤井猛先生が竜王を獲得したブームにあやかって、昔指していた四間飛車をもう一度一から勉強しようと、『四間飛車を指しこなす本』(河出書房新社)を読みました。すらすらと読みやすい本ですが、実戦で途中変化されると対応できなくなり負けてしまうため、自分の不甲斐なさを感じながらも試行錯誤し、楽しんで四間飛車を指していました。数年後、さらにバージョンアップされた『四間飛車の急所』(浅川書房)と出会い、プロの先生が細部にわたってここまで研究されているのかと驚き、すぐには覚えられないけど時間をかけて何回も読めば必ず理解できるだろうと何周も読み込んだおかげで一気に棋力が上がりました。当時、まだ振り飛車には急戦で挑んでくる方も多かったので、かなりの勝ち数を稼がせてもらいました。

しかし、四間飛車対策として穴熊を始めとした持久戦が流行し、左美濃には藤井システムという優秀な戦法で対応できましたが、穴熊に組まれてしまうとその堅さに手を焼いて負けが込むばかり、しかも四間飛車は定跡化され終わった戦法といわれ意気消沈、一生懸命勉強してきたことが泡のように消えていまいがっかりしていました。何度か復活の狼煙を上げようと『四間飛車激減の理由』『振り飛車最前線 四間飛車VS居飛車穴熊』『四間飛車の逆襲』(マイナビ出版)などを読んでみましたが、こんなに苦労してやっと互角の戦い。石田流やゴキゲン中飛車を指すと目新しさがあり、イビ穴に組まれないこともあって、四間飛車に対する興味はどんどん薄れていくばかり。あきらめの境地に入ってしまうとともに、仕事の忙しさで将棋熱もだんだん下降気味になってきました。(長い時間をかけて勉強してきた四間飛車を捨てたくないと、常に心のどこかに引っかかりはありました)
そのような中、最近若手棋士の間で四間飛車を指す人が出てきたので、どのように指されているのか再び興味が沸いてきて、ちょくちょく将棋情報局を見ていたところ、この度『四間飛車至上主義 実戦で学ぶ考え方』が発刊されること、また、なんと棋書アンバサダーを募集されていて出版前の本を読むことができることを知り、即座に申し込みました(まさか選ばれるとは思っていませんでした)。

著者の井出隼平先生はマイナビ出版から『現代後手四間飛車のすべて』を出版されていますが、こちらはノーマル四間飛車党のための対エルモ囲いや対ミレニアムといった最近の戦法に対する序盤を中心とした定跡本で、そちらも面白いのですが、実戦棋譜は掲載されていないため、中盤以降の指し方を知りたければ自分で棋譜を探す必要があるし、さらに棋譜だけでは思考の流れが見えないため、いざマネをして少し自分で指してみても、中盤あらぬ方向に行ってしまい逆転されてしまうので、難しさを感じていました。

今回出版される『四間飛車至上主義 実戦で学ぶ考え方』は井出先生の実戦譜が30局も載っていて、現代の四間飛車はこのような考え方で指していくのだという明確な方針が示されています。
この本は第1章「居飛車穴熊に勝つ方法」、第2章「居飛車穴熊以外の持久戦に勝つ方法」、第3章「急戦に勝つ方法」、第4章「その他の戦型、力戦で勝つ方法」と4部から構成されています。



まず、最初はにっくき対穴熊に多くのページを割かれているので、私のようなイビ穴が嫌いになった四間飛車党にとって、出だしから興味をそそられ読み進めていくことができます。方針は「端歩を突き超すこと」「△4四歩の符号を出すこと」の2点に簡潔にまとめられさらに仕掛けのタイミングやリードした中盤、終盤でどのように指せば良いのか、特に逆転されないように手堅く指す方法などわかりやすく解説されています。



それらを読んだ後に実戦譜を並べると、予習してから授業を受けるかのごとく、先行きが見えているので(憎い穴熊が徐々に潰れて行くので気分は爽快)実戦での感覚が自分のものとして身に付きます。また、各章の終わりには簡潔なまとめがあり、大会直前などでさっとポイントを見返したいときにはとても便利になっています。



第2章では左美濃やミレニアムなどの持久戦に対して堂々と組み合ってから仕掛けるのですが、複雑な変化を覚える必要なく、攻撃のポイントや駒組みで有利な点が最初に書かれているため、この後どうやって相手を追い込んでいくのだろうと、楽しんで読み進めていくことができます。

第3章は対急戦ですが、こちらは井出先生の新研究の手が紹介されていて、古くからなじまれている急戦好きな相手の研究範囲から外れて優位に指すことができます。特にどこかで端攻めをしてくることを知っていれば、終盤で慌てることなく対応できるとあり、そのための手立てが載っています。



また、中には井出先生が居飛車側を持っての敗戦譜もあり、四間飛車の優秀性について身を持って示されていたり、対エルモ囲いについても触れられていたりし、至る所まできめ細やかな気配りがされています。



最終の第4章では振り飛車ミレニアムやその他の力戦調の実戦譜を取り上げられ、四間飛車の未来への可能性について触れられています。絶望の渕に立っていた私には勇気を与えてくれます。最後の一言「四間飛車、最高」は、多くの実戦譜を通して学んだ私にとって本当に共感できる一言です。
200ページ以上あってかなり読み応えはありますが、良い本を読んでいるとその先はどうなるの?と我を忘れて読み進めてしまえる、四間飛車党にとっては「やめられない、止まらない」楽しい本でした。

最後にコラムは未完成だったので、麻雀やYouTubeなど幅広い活躍をされている井出先生のエピソードが気になっていて、完成版がとても待ち遠しいです。
今回、このような機会を与えていただいたマイナビ出版様、井出先生、本当にありがとうございました。過去の戦法と諦めていた四間飛車ですが、この本と出会えたことで、もう一度四間飛車を指してみたいという気持ちで今はいっぱいです。

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