【試し読み版】編集部島田が綴る今月の藤井聡太 2023年3月編|将棋情報局

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【試し読み版】編集部島田が綴る今月の藤井聡太 2023年3月編

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皆さんこんにちは。「恋は全て初恋です。相手が違うからです」でおなじみの編集部島田です。

将棋情報局ゴールドメンバー限定記事「編集部島田が綴る 今月の藤井聡太」第7弾でございます。3月は王将戦、棋王戦、A級順位戦が決着する山場の月になりました。
藤井先生にとっては過密日程で重要局が連発して大変だったと思いますが、結果として(←藤井先生っぽい言い方)この3つの戦いすべてに勝利したのはさすが!でした。

先月の記事で、藤井先生が多忙すぎて『藤井聡太全局集』と『将棋年鑑』のインタビューが遅れているという話をしましたが、名人戦が始まる前のギリギリのタイミングでお時間を取っていただけることになりました!(パチパチパチパチ)

これを書いているのは3月25日ですが、藤井先生のインタビューが3月29日なので、ドキドキソワソワしている自分がいます(笑)。島田の人生における年に一度のビックイベントです。1年に1回だけ会えるので、たぶん藤井先生は彦星で、私は織姫なんだと思います(違う、そして気持ち悪い)。

初めて藤井先生にお会いしたのは最初の『藤井聡太全局集』の見本ができた時でした。

藤井六段に「藤井聡太全局集 愛蔵版」の見本を届ける旅

当時、藤井先生はすでに時の人になっていたので「どんな人が出てくるんだろう」とビビっていた私。
まだ藤井先生の人となりを知らなかったので、調子に乗ってる高校生だったらやだなー、
とか思ってたんですが、お邪魔した時、玄関まで出迎えてくださって、「あ、お願いします」と恥ずかしそうに言ってくれて「めっちゃいい子やん!」と感動してハートを撃ち抜かれました。インタビュー中もいい意味で大人しい普通の高校生でありながら、時折見せる鋭い視線と考え方。「これがあの藤井聡太・・・、もう好き!」となって、今に至ります(笑)。

・・・失礼しました。なれ初め、じゃなくて前置きが長くなりすぎました。
気持ちを切り替えて、今月の藤井聡太、振り返っていきましょー。

まずは、3月の藤井先生の対局をまとめてみます。

3月の対局まとめ

2日 A級順位戦 稲葉陽八段戦 勝ち
5日 棋王戦五番勝負第3局 渡辺明棋王戦 負け
8日 A級順位戦プレーオフ 広瀬章人八段戦 勝ち
11、12日 王将戦七番勝負第6局 羽生善治九段戦 勝ち
19日 棋王戦五番勝負第3局 渡辺明棋王戦 勝ち
3月は5局あって、4勝1敗の成績でした。王将防衛、A級順位戦優勝、棋王奪取という素晴らしい月になりました。皆さんご存知の通り、1敗はとても悔しいものでしたが、番勝負としては勝利されてさすがです。

それでは、前回触れられなかった2月25、26日の王将戦第5局から見ていきましょう!

手番キープで防衛に王手

2月25、26日 羽生善治九段戦
第72期ALSOK杯王将戦七番勝負(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟主催)第5局

第1章 横歩取り
羽生善治VS藤井聡太という2大スターによる世紀の一戦は、ここまでお互いに先手番をキープするシーソーゲームで2勝2敗。勝ったほうがタイトルに王手を掛ける重要な一局です。
対局前に藤井先生がお茶をこぼすシーンがあり、お母さんはハラハラしましたが、全く動じなかったのはさすがでした。将棋が始まってしまえば盤上に集中できる方なので何の問題もなかったと思います。
さて、将棋は後手番の羽生先生が横歩取り戦法を採用しました。羽生先生の最近の活躍の原動力となっている指し方ですので、今回の番勝負のどこかで出るだろうと予想されていた作戦です。

藤井先生も「横歩取りももちろん、可能性としてはあるのかな、というふうに思っていました」とおっしゃっています。

横歩取りは戦法の性質上、序盤から駒の取り合いになる激しい将棋になりやすいのですが、本局も飛車角が総交換になり、一手の間違いが命取りになるようなスリリングな局面が続きます。

第2章 やってこい
中盤、右の桂馬をぴょんぴょん跳ねていく藤井先生が好きそうな手順が決まって優位に立ちます。しかし羽生先生が金を打って受けに回ったのが粘りある手で、藤井先生の攻め方が難しい。

これがまさに羽生先生の勝負術で、難しい局面を作って、そこで相手に手を渡して「どうですか」と投げかける。複雑な局面にすれば自分の読みが上回るという自信があるのでしょう。こうやって羽生先生はタイトルを量産してきました。

この指し方はこれまで他の棋士が試みてきた藤井先生の攻略法とは全く違うものです。他の棋士は藤井先生より研究で上回るか、藤井先生がカバーしていない別の研究を用意して、そこでリードしようという考え方でした。しかし羽生先生はお互いによくわからない難しい局面をぶつけて、「力で勝負しましょう」という発想です。

そして実際、藤井先生が最善手を逃し、羽生先生が優位に立ちます。これが羽生先生の強さです。
藤井先生の攻め駒が渋滞気味で、攻めあぐんでいる間に、今度は羽生先生の桂馬が跳ねだして藤井玉を追い詰めます。

しかし、難しい局面での力勝負は諸刃の剣。今度は羽生先生が最善を逃してしまいます。上部に脱出されそうで指しにくい手が実は正解だったようで、形勢の針はもう一度藤井優勢に戻ってきました。
「将棋は最後に間違えた方が負ける」の鉄則の通り、そのまま藤井先生が寄せ切って勝ちとなりました。

第3章 力と力のぶつかり合いが見たいんじゃ
角換わりの研究合戦も「どこまで研究してるの?」という驚きがあって面白いのですが、こういう定跡の整備されていない力戦形もスリリングで、まさに「人間同士の戦い」という感じがするので好きです。
難しくてお互いに間違えるんですけど、将棋はAIの示す最善手を盤上に再現するゲームじゃなくて、あくまで対局者が脳をフル回転させて考え抜いた結果を表現するものです。その手を選んだことに理由があり、だからこそ物語が生まれます。盤上の物語の価値は不変だと、私の尊敬する方が言ってました(^^)

羽生先生もAIの評価値が揺れ動く将棋こそ素晴らしい将棋、とおっしゃってました。
そして、本局がまさにそういう将棋だったと思います。

ってA級プレーオフへ


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