さばいて取って攻めて詰ます! そのロジックとは?|将棋情報局

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さばいて取って攻めて詰ます! そのロジックとは?

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まずは、振り飛車対居飛車急戦の仕掛けの段階である第1図をご覧ください。
 
【第1図は△7五歩まで】



皆様ならここから、どのように進めて、優位に立ち、最終的に勝つ(=相手玉を詰ます)イメージを描くでしょうか。

「こんな局面から最後まで読むなんて無理」

そうでしょう。そう考えるのが当たり前です。正直、プロ棋士でもここからすべてを読み切るのは無理だと思います。

しかし、将棋の基本的な論理・・・いえ、ちょっとカッコよく「ロジック」とでも言いましょうか(英語にしただけですが)。将棋の基本的なロジックをもとに盤面を泳ぎ出せば、おぼろげながらにも最終局面までの青写真が描けるかもしれません。

少し長くなりますが、お付き合いください。重ねて、本稿では振り飛車における勝ちのロジックを紹介してゆきますが、全戦型対応で必ずためになりますので、居飛車党の方も、どうかお付き合いください。

まずは、あまりにも漠然としすぎていると思いますので、少しヒントを。
【攻めのロジック】

振り飛車における攻めのロジックの第一段階は、上図の「さばき」にあたる部分。具体的には、飛、角、桂の成り込みを狙ったり、相手の飛と自分の飛を交換する、同じように、角と角、銀と銀、桂と桂・・・、というように、なるべく同等の駒を交換すること。その上で、同等の駒で攻め合って、美濃囲いと相手玉の固さの違いを頼りに速度勝ちを目指すのがロジックの第二段階、第三段階、ということになります。

ただし、第1図の後手の構えは、最近の居飛車急戦において主流ともいえる「エルモ囲い」という金銀の連結が良い構えで、手のつけようによっては先手の美濃囲いと同等の強度を見せることもあり、従来の舟囲い(舟囲いの図)では弱点になりやすかった2二の地点も3一金の利きがあって、攻略には細心の注意が必要です。
 
【参考 舟囲いの図】

では、始めましょう。
 

損して得取れ! さばきのロジック

【再掲第1図は7二飛まで】


第1図からの指し手
▲6八角 △7二飛 ▲7五歩 △同 銀
▲4六角 △6四歩 ▲7六歩 (第2図)
 
【第2図は▲7六歩まで】

▲6八角が「さばき」の第一歩。4六へのぞいての9一香取りを狙います。相手の銀を5段目に進出させる▲7五歩、そしてさらに、自身の飛の利きをさえぎって△6六銀の進出を許す▲7六歩はノーセンスの手順に見えますが、その間に狙いの▲4六角を指し、香取りを受ける△6四歩を指させたのが大きなポイントです。第2図から、相手の手に乗った「さばき」を狙います。

第2図からの指し手
△6六銀 ▲同 銀 △同 角 ▲6八飛 
△9九角成▲6四飛 △6二飛 (第3図)
【第3図は6二飛まで】


先手は角を成られたが、代わりに▲6四飛と走って、大駒の飛、角ともに世に出すことに成功しました。第1図の前に指した▲9八香が用意周到で、△9九角成で香を取られていないのも大きく、振り飛車が優位に立つまであと一歩のところまでたどりつきました。後手も「エルモ囲い」を頼りに△6二飛、最強の飛車ぶつけで対抗しますが、先手も美濃囲いの堅陣、強気に攻め続けます。

第3図からの指し手
▲6二同飛成△同 金▲8二飛 △6一歩
▲8一飛成 △8九馬 (第4図)
 
【第4図は△8九馬まで】


先手は飛交換から▲8二飛と金桂両取りに打ち込みます。△7二銀は気になるところですが、▲6三歩△6一金▲6二銀で攻めが続きます。仕方のない△6一歩に互いに桂を取り合った第4図。

ここで、振り飛車によるさばきのロジックを思い出していただきたい。

――飛、角、桂の成り込みを狙ったり、相手の飛と自分の飛を交換する、同じように、角と角、銀と銀、桂と桂・・・、というように、なるべく同等の駒を交換すること。

改めて第4図、駒のやりとりを見てみると、飛と飛、銀と銀、桂と桂が交換になっていて、香は互いに取れていない状態。先手は飛を成り、後手は角を成っていますが、相手陣への響きを考えれば先手に軍配があがります。そして手番も握っているとなれば、どちらが優勢かは言うまでもないでしょう。

出だしは、さばかせてはいけないとされる居飛車の攻めの銀をさばかせ、角も成らせてしまいましたが、「損して得取れ」を地で行くような手順で振り飛車の華麗な「さばき」が決まりました。

ここから、相手陣攻略~詰みまでも、ロジックがあるのですが、それに触れると紙幅が尽きてしまいます。特に第4図では後手陣攻略のために絶対とも言える手があります。それはご自身で考えてみてください。

 

脳内に「形勢判断」のチェックリストを



再び、第4図をご覧ください。
 
【再掲第4図は△8九馬まで】


さてこの局面、上級者以上の方なら、はっきり先手が有利と思えるでしょう。しかし、初級者、初心者の方は、有利と言われてもいまいちピンとこないかも知れません。上級者以上の方の中にも、「なぜ有利か?」と問われると、具体的に言葉に表すのは難しい、という方もいらっしゃるでしょう。

どちらが有利なのか。

それを判断するには、主に以下の4点に注目するのが良いでしょう。

【手番】【囲いの強度】【離れ駒の存在】【戦力の多さ】

この4つを見極める「チェックシート」を脳内に持っていれば、形勢判断の精度がぐっと上がり、より正確に将棋の「ロジック」を実践し、「自分が持っていきたい局面、理想の局面」をイメージしやすくなります。

具体的には、こんなメモ。これが脳内にあると、とても便利です。
 

例えば、第4図。筆者ならこんな評価を下します。
 

【戦力の多さ】は二重丸にしましたが、竜の力と、香を後手より味良く取れる点を過大評価しているかもしれません。【囲いの強度】は小丸にしました。弱気な評価なのは、常日頃エルモ囲いに痛い目に遭っているからでしょうか。しかし冷静に見れば美濃囲いのほうが強いですね。4つの項目で負けているところはない。よって、二重丸や小丸は精度を上げればもっと正しい評価ができるかもしれませんが、とにかく、先手有利、いや、かなり有利と見ます。

以下は、練習問題です。皆様は4つの項目、脳内のチェックシートを用いて、どちらにマルをつけ、どちらが有利と見るでしょうか。
 
【練習図1】




【練習図2】

 

ロジックと正しい形勢判断を身につける


今回紹介した手順、および表は、9月22日発売の『イチから学ぶ将棋のロジック 三間飛車編』に掲載されているものです。

著者は、『将棋・ひと目の詰み ~実戦形で終盤力アップ~』、『将棋・ひと目の歩の手筋~将棋上達の入り口~』など、これまでに初心向けの書籍を上梓している遠山雄亮六段。本書でも、1局の将棋を勝つまでのロジックを、1手ずつ丁寧に解説してくださっています。

例えば、先に早足で紹介した「三間飛車対エルモ囲い急戦」の手順、本稿では5、6手ごとに図を用意して紹介してゆきましたが、実際の紙面はこちら。
 

ご覧の通り、先手の手に特化し、1手ずつ、どういう意味の手なのかが示してあり、わかりやすく将棋のロジックを吸収できるつくりとなっています。

次の見開きは・・・
 

さらに詳しく、指し手の意味、変化などがふんだんに使われた図面とともに解説されています。

そして、本稿ではさばき合った図までしか紹介できませんでしたが、どうしてこう指すのか、という解説付きで「後手の投了」まで示してあるのです。
 



章立ては以下の通り。
 

本稿で紹介した「第1章 1―4」は、仕掛けの局面から後手投了の局面までを、17ページを用いて、本当に1手ずつ、どういうロジックで指されたのか、どういう意味の手なのかの解説付きで追体験することができます。

また、指す上で大事な「キーワード」となる言葉が太字で強調され、言葉によっては随所で繰り返し使われているのも大きな特徴です。

上で紹介された紙面で言えば、

「「さばき」を狙う」
「攻め駒を敵陣の近くに配置する」

他にも
「詰みがあるので駒損でもいい」

など、実戦中に思い出せば必ず役に立つ「キーワード」がいくつもちりばめられているので、繰り返し読んでパッと思い出せるようになれば、勝率もあがることでしょう。

また、「第3章 三間飛車の形勢判断」では、手順の解説の中でチェックシートが使われ、「どういうロジックで指された手なのか」に加え、対局中の正しい形勢判断、それも簡単な4つの項目によるチェックで行える形勢判断の方法を学ぶことができます。
 

著者の遠山六段は「まえがき」でこう記しています。

「本書はあくまで上達書であり、三間飛車の定跡書ではありません」

三間飛車はあくまで題材であり、1局の将棋を勝ちに導くための基本的な考え方を学べる書籍です。

続く言葉、

「本書に書いたロジックは全ての振り飛車に通じるのみならず、居飛車党も含めた上達を願う全ての方の参考になるはずです」

の通りの内容となっていて、初級者~上級者の方には振り飛車党、居飛車党に関わらず読んでいただきたい一冊です。

執筆:富士波草佑(将棋ライター)
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