2017.07.13
第3回 日産がマストドンを利用する理由
ソーシャルメディアに造詣の深い5人の著者が「マストドン現象」を読み解く書籍『マストドン 次世代ソーシャルメディアのすべて』。第3章の「日産がマストドンを利用する理由」では、企業としていち早くマストドン公式アカウントを立ち上げた日産自動車へのインタビューを通して、いしたにまさき氏がソーシャルメディアの活用法に迫ります。その冒頭を紹介しましょう。
本章※では、マストドンの活用事例について解説します。ただ企業がマストドンを活用するといっても、いきなりインスタンス立ち上げから始めることができるのはやはりIT企業などエンジニアのいる企業に限られるでしょう。
※編集部注:書籍『マストドン 次世代ソーシャルメディアのすべて』の第3章「日産がマストドンを利用する理由」を指しています。
そこでインスタンスを立ち上げた例ではなく、アカウントの利用というマストドンの一利用者としての事例を紹介します。
登場するのは日産自動車。ドワンゴが開始したインスタンス「friends.nico」でのアカウントを取得し※、利用者として、トゥートを開始した背景やマストドンの魅力、活用について紹介します。
※日産自動車株式会社 インスタンス「friends.nico」でのユーザーアカウント:https://friends.nico/@NissanJP
日産自動車・広報の小川正太郎さんは、取材冒頭いきなりこう言いました。
「マストドンって、LINEがきました、スナップチャットが登場しましたっ、ていうのと少し違う雰囲気ですよね。ネットが好きな人たちが前のめりになっている感じがありますよね」
これ、実に的確に今のマストドンの状況を捉えている発言です。では、なぜこういった感想に日本でのマストドンブームの最初のわずか1カ月で至ったのでしょうか。これを足掛かりにマストドンの企業での運用について、日産自動車・広報部でのマストドン導入を例にして考えていきましょう。
日産自動車とソーシャルメディアの歴史
広義の意味でのソーシャルメディアと日産自動車(以下、日産)の関わりは、ブログの企業事例の先進的な事例として知られる日産ティーダ公式ブログ「TIIDA BLOG」にさかのぼります。
TIIDA BLOGは2004年9月から2010年9月までの間、6年間にわたって約500記事アップされました。とりあえずブログだから「3カ月お試しで!」と始めたという話も今となっては笑い話です。
その後SKYLINE BLOGが2006年11月から2009年12月までの約3年間続いています。
そして現在は2012年からEV BLOG、2012年から日産グローバルサイト内で企業ブログが更新中です。個人のツールとして普及していたブログというツールを企業の情報発信ツールとして利用し、現在までも記事をストックし続けています。当初は車種単体のブログとして始まったものが、現在は企業メッセージに軸足を移して運営されているのが特徴的です。
TIIDA BLOGから5年後、日産の公式ツイッターが始まったのが2009年。このツイッターに関して日産公式アカウントにちょっとした数字が残っています。
驚くべきは1日の平均ツイート回数です。この数字が実は日産とソーシャルメディアの関係を証明しています。そしてそれがマストドンにもつながっていくのです。
なお、日産のツイッターでの最初の投稿は以下。140文字どころか句読点を入れてもわずか15文字です。
今の日産のツイートを見ると、この内容にびっくりする人もいるでしょうね(笑)。
ツイッター以降、日産は新しいソーシャルメディアにもどんどん公式アカウントを作っていきました。
フェイスブックの導入は2010年。ユーチューブ(YouTube)の導入も2010年。ユーストリーム(Ustream)の導入も2010年。ニコニコ動画が2013年。インスタグラムが2016年。ユーチューブ・ライブ(Youtube Live)も2016年。
こうして整理してみると、別に日産は新しいソーシャルメディアになんでも飛びついているわけではないことがよくわかります。
「何をしたいのかがわからないで新しいソーシャルメディアに入っていくのは、結局受け入れられないのでよろしくないんですよね」