2017.03.31
第10回 EthereumとDApps
Ethereum上には様々なスマートコントラクトを使用した分散型アプリケーション(DApps)があります。有名なDAppsとしてAugur、AKASHAおよびuPortを紹介します
はじめに
※Ethereumについては[第8回]にも簡単な説明があります。そちらを読んでからお読みください。
Ethereumとは
Ethereum上には様々なスマートコントラクトを使用した分散型アプリケーション(DApps)があります。それもそのはず、公式サイト側も次のように述べています(以下引用)。
Ethereumは、スマートコントラクトを実行することができる分散型プラットフォームです。Ethereum上で走るアプリケーションは、ダウンタイム、検閲、偽造、そして他者による干渉の可能性なしに、プログラムどおりに実行されます。
https://ethereum.org/より
暗号通貨の時価総額が第2位なこと、また最初に(チューリング完全な)スマートコントラクトを提唱および実装したこともあり、最も多くのDAppsが実装、開発、提唱されています。以下に有名なDAppsを紹介していきます。
なお、DApps(正直いってDAppsと呼べるかビミョーなものもありますが)リストは、以下のサイトにまとめられていますのでご参照ください。
DAppsの例
Augur
第8回にも少し記載しました [Augur](オーガー)です。そのコンセプトは「分散型予測市場」で、簡単に言えば、将来のことについて賭けて、現実になったらもうかるという一種のギャンブル市場です。
これがなぜ「分散型予測市場」と呼べるのでしょうか? [Augur 日本公式サイト]にはこのようなことが書かれています(以下引用)。
群衆の叡智(Widom of the Crowd)
2007年、コロンビア・ビジネススクールのマイケル教授が、73人の学生に、瓶の中のゼリーの数を予想するよう言いました。
彼らの予想は、250から41000個でしたが、実際には1,116個がありました。平均誤差は700個で、2人の学生だけが勝ちました。62%のエラー率です。
しかし、学生の大雑把な判断にも関わらず、彼らの推測の平均は、1,151個で、実際のゼリーの数から3%しかずれていませんでした。
この研究は、色々な形で繰り返されていますが、同じ結果が出ています。私達は、政治から気候など様々な題材に、この群衆の叡智を利用しようとしています。
またAugurでは、Reptation(REP)というトークンを持つ人がおり、そのトークンを持っている人の中から複数人ランダムに選び、報告させるというしくみになっています。そして報告が多数派の方を事実とみなし、少数派の報告を行なった場合ペナルティーが発生する。そして多数派には手数料の1%が支払われるようになってます。このようにして、特定の機関(胴元)に頼ることなく賭け事を実現しようとしています。
現在Augurは開発中です。βテスト版はありますが、まだ予定していた機能が動いているわけではありません。REPはありますが、今のところ使い道はありません。
リリースは2017年中と開発者は述べていますが、延期する可能性も考えられます。
AKASHA
[AKASHA](アーカーシャ)はEthereumを利用した、分散型ソーシャルメディアプラットホームです。ブログと同じように投稿ができます。
AKASHAはEthereumの機能であるWhisperや、IPFS(Inter-Planetary File System)というシステムを使い、特定のサーバーに頼ることなくEthereumを使い公開されます。このしくみを導入したことで、ハッキングなどによる改ざん、検閲を防ぎます。
完成しメインネットに実装されるのは今年の10月から12月とのことですが、α版はもうすでにできてました。
実際に筆者も触ってみましたが、α版であるにもかかわらず、比較的完成度は高かったです。洗練されたデザインって感じです。
https://twitter.com/udon_crypto/status/821273147043258369
uPort
これはDAppsとは言えないかもしれませんが、Ethereumを使った素晴らしいアプリケーションが[uPort]です。
uPortは、自分の個人情報や周りからの評判などのアイデンティティを、自ら管理しコントロールするためのシステムです。身分認証システム、マイナンバーに近いですが、似て非なるものです。
このシステムは、自分で自分の情報をどれだけ提供するか、自分で決められます。中央機関のようなものは存在しないので、第三者があなたの情報の許可なく勝手に見ることは不可能です。全てEthereum(とIPFS上)に保存されます。
筆者もα版テストに参加してみましたが、純粋にすごいなと感じました。まだまだという感じもありますが、このEthereumを利用したセキュアなシステムを使ってDAppsにログインしたりするというのは想像しただけでワクワクします。
ただもちろん、入力された内容が正しいかの認証局は必要になります。
そして、以前最大の規模を誇ったThe DAOというDAppsでありDAO(自立分散型組織)がありました。それは、崩壊とともにEthereumに試練を与えました。この詳しい流れは次回に解説いたします。
「第11回 The DAO事件」に続きます。