第4回 UXブランディングという発想|Tech Book Zone Manatee

マナティ

UX × Biz Book

第4回 UXブランディングという発想

UXおよびUXデザインのビジネス価値を読み解く『UX × Biz Book ~顧客志向のビジネス・アプローチとしてのUXデザイン』。デジタル・マーケティングから顧客との関係構築、ブランディング、実装まで、それぞれ現場で活躍する執筆陣が、多面的・複合的な視点、切り口で分かりやすく解説しています。この連載では各章の読みどころを掲載していきます。第4回目はビジネスにおけるUXの可能性を解説するChapter4(執筆:明海 司)から、「4-10 UXブランディングという発想」を紹介します。

「UXは企業の成長エンジンになる」と言えると思っています。それはデジタル化、ネットワーク化、ワイヤレス化の環境を背景にしたUXとは、「顧客期待を知り、それに応える企業意志を明確したなかで行動することのアウトプットであるべきだから」、また「UXはエンゲージメントを発生させその蓄積がブランドとなって企業や事業成長を支援するから」、というのが私の見出している答えだからです。そのため、それは「UXブランディング」とも言えるでしょう。

UXブランディングは、「顧客にいかなる体験をさせるか」ということに全精力を傾けることで成し遂げられると考えます。それも一場面ではなく、最終的なブランド目標に向け、多面的にUXを設計し、積み重ねることで結果を得ることができるものです。ですから当たり前のこととして、そこに「虚」があってはいけません。正面を顧客に向けるのです。商品やサービスの評価は顧客が下します。その評価によっては、顧客は企業の味方にもなりえるのです。それが、ネットワーク社会の怖いところであり、頼もしいところであると言えるでしょう。虚飾や演出でUXは成立しません。エンゲージメントを形成するためにも正真正銘の姿を見せていくべきであり、それができるような商品やサービス開発しなければならないはずです。それが顧客中心発想なのですから。

図4-1は仮説的にUXブランディングをモデル化したものです。開発とブランドを顧客中心発想によってベースを作り、購買体験ごとにUXを設計します。その顧客接点はUXポイントになるのでしょう。そしてその体験の蓄積がブランド形成を促すのです。企業成長に向けたデュアルエンジンのような構造です。

 

最後にしつこいようですが、UXは「こちら側」の意志がなければならないものです。確かに顧客発想は必要ですが、しかし、顧客に「すべてを任せればいい」というとそれも違います。そこに意志があるからこそ、意志に対する共鳴が生じエンゲージメントが生み出されるのです。だからこそ成長する、このことは忘れてはなりません。

 

図4-1 UXブランディング・モデル(仮説)

著者プロフィール

明海 司(著者)
株式会社D2C 上席エキスパート
I&S(現I&S BBDO)、NTTアド、フューチャーブランドにてマーケティング戦略やコーポレートブランディングに関わった後、2011年講談社系列の広告会社、第一通信社に参画し経営企画室を立上げる。2015年経営戦略担当の取締役に就任。2016年D2Cのデジタルマーケティング事業に参画。現在、デジタル化を社会環境の変化と捉えたマーケティングイノベーションに挑戦している。