2016.10.07
Web広告を出稿する前に準備すること
Chapter2 Web広告を始める前の準備が、成功と失敗を分ける
Web広告を成功に導くためには、計画的な準備が必要です。どのようにWeb広告を成功に導くのか、そもそも成功とはなんなのか、具体的に行っていくことはなんなのか。そういったWeb広告に関する悩みをもとに、Web広告の準備を紐解いていきます。
いきなりWeb広告を出す! ということはしてはいけない
「よし、明日からWebを使って広告を出そう!」
Web広告の効果が良くなくてもいいのであれば、すぐにWeb広告は出稿できます。しかし、効果を出す広告を出稿するためには、事前に準備することがいくつかあります。
先ほど、Web広告の運用は「設計➡(出稿開始)➡効果測定➡改善」の流れで進めるとお伝えしましたが、その前にも準備することがあります。
サイトを用意する
Web広告を出そうと思っても、それを見て気になったユーザーが訪れる場所が存在しなければ、Web広告を出すことができません。
今では、自社のWebサイトを持っていない企業は少ないと思いますが、そのサイトはWeb広告の効果を最大化するためのサイトでしょうか。
もしそうでないなら、ランディングページ(LP)と呼ばれるWeb広告の誘導先となるページを専用に作りWeb広告の効果を最大化していくことが必要となってきます。
LPは、Web広告に触れたユーザーが一番初めに訪れるページです。ユーザーが「このページに行けば、自分にとってメリットのある情報が載っているはず」という考えのもとサイトに訪れるため、その要望に合わせたWebサイト、ページを用意することが必要です。LPについてはChapter6で詳しく説明します。
Web広告全体の目的を決める
Web広告を出す目的は企業によって様々です。一例として「新規ユーザーの購買促進」「サービスの登録促進」「資料の問い合わせ増加」「キャンペーンの応募者増加」「実店舗への来店促進」などです。
その目的を達成するために測る指標は「コンバージョン」と呼ばれるもので、Web広告の費用対効果を見える化するため、事業として価値ある行動をそう呼びます。
何をもってコンバージョンと呼ぶのかはサービスによって違いますし、必ずしも1つとは限りません。
Web広告の目的として、「認知度を上げる」や「自社サイトへの送客」などを目的としているケースも多々あります。確かに、広告を手法ごとで見ると、認知を目的とする手法と、刈り取り(ユーザーに購入や登録などアクションをさせる意味合い)を目的とする手法とで分かれます。ただ、どれだけ自社のブランドを認知してもらったところで、それだけでは企業にお金は入りません。認知してもらってから、どのようにサービス利用や購入まで導くのか。そのための各ステップで各広告の目的を考える必要があります。
Web広告の目的はたった1つ
もう少しビジネスの目的を深掘りしていきましょう。どんなビジネスでも最終的には1つの目的にたどり着きます。
それは、最大の売上を、最小の金額で生み出すことです。
その言葉を分解すると、コンバージョンの数と質、そして1コンバージョンに対する広告費用(CPA)の3つを最適化していくことに着地します。
どれだけたくさん広告経由のコンバージョンを獲得しても、その質が悪ければビジネスとしてうまくいきませんし、CPAが上昇した分以上に、コンバージョンの数と質が上がれば、広告の目的は達成できることもあります。
コンバージョンの質を理解する
広告の業界では、コンバージョンの質を計るのに「転換率(お金を使ってくれるユーザーになる割合)」や「LTV(ユーザーが生涯を通して企業にもたらす売上額)」といった指標を使います。どれだけ会社の売上に貢献したかがダイレクトにわかる指標ですね。
「こんなお客さんなら高いお金をかけてでも集客したい!」と思えるユーザーを数値で表す、というイメージでしょうか。
Web広告にどっぷり浸かってしまっている人は、数とコストには目が行くのですが、質に目がいきにくくなっているケースが多くあります。Web以外で行われる活動での数値が測りづらかったり、正確な数値を出すのに何ヶ月もかかったりと、質を判断するにはハードルがたくさんあるのですが、これを知るのと知らないのでは、1ユーザーにかけられる広告費用が大きく変わってくるのです。
どれだけCPAが高くても、それで獲得したユーザーが一生、自社サービスを使ってくれるのであれば、広告費以上の大きな売上を企業にもたらしてくれます。
このように、「効果測定できる環境を用意する」ことに加え、どのように質を計測するかを決める必要があります。
自社の強みを理解する
広告とは、自社のサービスや商品を、狙ったターゲットユーザーに「欲しい!」と感じてもらうためのコミュニケーションです。
そのコミュニケーションをとるためには、まず自社商品を深く理解しなければいけません。恋愛にたとえるのであれば、自分がどういう人間なのかよく分からないまま、意中の相手に好きになってもらうなんていうことは不可能ですから。
この自社の強みが、広告のメッセージや狙うターゲット像を決める根拠になります。
自社の強みには、裏付ける独自資産が存在する
では何が自社の強みになるのか。よく「サポート力が強みです」「商品の高品質が強みです」「安くてオシャレなのが強みです」というような言葉で自社の強みを表現する会社が多いですが、本当にそれが強みとなるのか、改めて考える必要があります。
強みを裏付けるのはその会社の独自資産です。独自資産とは、他社にない、競争上の優位になり得る資産です。資産といってもお金だけではありません。
そして、その独自資産と強みによって、どんな価値をユーザーに提供できるのか。これが広告のコアメッセージになってきます。
自社の強みは競合と比較して決める
あなたの会社の競合はどこでしょうか? よく同業ではなく、自社と同じ顧客ニーズを満たすものが競合となると言われています。
たとえば、TSUTAYAのレンタルDVDの競合は、同じようにレンタルDVDサービスを行うGEOだけでなく、「お手軽に家で映画が見たい」という顧客ニーズを満たす、定額で映画が見れるサービス(HuluやNexflixなど)も競合になります。また、もう少しふわっとしたニーズとして「土日に家で気軽に楽しめるもの」と考えれば、漫画や音楽のサービスも競合となりえます。こういった競合の選定は、企業ごとですでに行っていることが多いため、もしすでに選定が行われているのであれば、共有をしてもらいましょう。
競合との比較方法
ではどのように比較をしていくのか。1つ例をお見せします。
機能やスペック面、金銭面、その他特徴面から比較軸を考えてみると良いでしょう。
単にこの表を作って満足するだけではいけません。この表から何を読み解くのかが一番大切です。
独自資産のところでも書いたように、競合に負けない価値はどこにあるのかを見つけていきましょう。それぞれの軸で勝っている個所は、ユーザーにとってどんな価値を提供できるのか。お手軽さなのか、リッチさなのか、安心安全なのか。それが見えて初めて、広告が設計できるようになります。
効果測定を行える環境を用意する
広告全体の目的はコンバージョンの数と質を上げ、1ユーザー獲得の費用を下げることです。
しかし、これを定量的に把握できる環境が無ければ、効果がいいのか悪いのか分からず、評価ができません。
どの広告にも「管理画面」は存在しており、その管理画面を見ることでそれぞれの広告効果は見ることができますが、それを一元化して効果測定が行えない場合は、本来の効果とはかけ離れた数値しか把握できなくなってしまう可能性があります。
この例のように、ユーザーが複数の広告をまたいで行動した場合、それぞれの管理画面上で「1人コンバージョンしました」と表示され、実際は1人しか購入がないのに、管理画面上の足し算で3件の購入として把握してしまう可能性があります。
これを防ぐためには、横断的にユーザーの行動を計測できるGoogle Analyticsなどの無料のツールから導入を進め、広告出稿のさらなる拡大の際に有料のツール導入などを検討してみましょう。
KGIとKPIの簡単な作り方
目的が決まっても、次に何をするべきかのアクションプランが見えてこないことがあります。それは、その目的をどこまで行うべきなのかを数値化していないからです。
そこで出てくるのが、KGIとKPIというもの。KGIはKey Goal indicatorの略で、目的を達成できたのかを測る指標です。
KPIはKey Performance indicatorの略で、目的達成するための過程をクリアできているかを計測する指標です。
よく混同してしまうケースがありますが、KPIはプロセス、KGIは最終的な目標です。
ビジネスにおけるKGIは基本的に売上と利益です。そのKGIを達成するために広告で目指すべき指標が広告でのKGI。それを達成するために目指す細かな指標がKPIとなってきます。このKGIとKPIを簡単に設定できる方法をお伝えします。
筆者は次のようなフォーマットでKPIとKGIを決め、各指標の目標数値を作っています。KGIを分解し、各数値をどれくらい伸ばせばKGIを達成するのかを見えるようにしたものですね。複数の広告を実施する際は、広告ごとに作っています。
そもそも、なぜKPIを作る必要があるのでしょうか。
KGIは「Web経由の利益を30%増やす」や「Web登録を20%増やす」などWebにおける最終的な目標となるので、決めることの大切さはイメージしやすいのですが、それを表のように分解する必要がなぜあるのでしょうか。それには2つの理由があります。
なぜKPIは必要なのか
KPIを決めるべき理由の1つ目はKGI達成のために必要な行動をわかりやすくするためです。仮にいまから、Web経由の利益を30%増やしましょうといったところで、何をすれば30%増えるのか想像しづらいものです。30%増やすためには、広告からの流入をどれだけ増やし、その流入数の中から、何%の人に商品を買ってもらうのか、平均でいくらの買い物をしてもらうと良いのかまで、数値に落とし込んで考えていきましょう。
KPIを決めるべき理由の2つ目のKPIを作る目的は運用中に現状と理想の差分を測るためです。KPIと寸分違わない数値で運用することは間違いなく不可能です。どこかの数値は下振れ、どこかの数値が上振れし、結果的にKGIが変わらないということはよくあるのですが、KPIを決めていないと、どこの数値が想定より好調なのかが見えてきません。
KPIは始めに決めたら変えてはいけないということはないのです。まずは仮にでもKGIを達成するために必要な数値を入れてみて、実際に運用しながら、その差分をみて修正していけばよいのです。
KGIとKPIを決めるポイント
KGIとKPIで見るべきポイントは3つ。縦の項目と、項目ごとの数値、横の時間軸です。
縦の項目に関しては、どういった業界もほぼ前述の表と同じとなります。KGIを分解し、行動に落とし込める大きさにしていきましょう。
項目を分解できたら、KGIを達成するための数値を入れていきます。といっても、いきなり数値を入れていくのは、慣れていないと難しいでしょう。まずは自社で今まで行った広告や自然流入(SEO経由)でのCVRや平均顧客単価をもとに作ってみましょう。
はじめは正確性を求めなくてもいいのです。運用しながらKPIの目標数値を変えていき、最短でKGIを達成できるよう試算を重ねることが大切です。
数値を入れていく際に、時間軸を忘れてはいけません。つまり、決めたKGIを何ヶ月目で達成するのか。そのためにどう広告の成果を成長させていくのかの簡単なロードマップです。
運用型広告であれば、1つの広告成果を最大化していくために各月・各週でどの数値を改善していくのかのロードマップを組む必要があります。
Web広告における指標はたくさんありますが、最終的には売上と利益に帰着します。そのため、ロードマップはCV(コンバージョン)数、CPA(1ユーザー獲得単価)、質(平均購入額や転換率など)の3軸で組んでいきます。
Web広告を運用するにあたり、すべての指標を同時に伸ばすことはとても難しいものです。フェーズごとで「CV数を伸ばすフェーズ」「CV数を一定に保ったままCPAを下げるフェーズ」「質を高めるフェーズ」などと分けて、必要な月数でKGIを達成できるようなシミュレーションの組み方をしていきましょう。
Web広告の準備まとめ
Chapter2-3では、Web広告を出稿する前に行う準備を紹介してきました。まとめると、準備することは合計5つです。
・広告の受け先となるサイトを用意する
・Web広告の目的とコンバージョンを決める
・自社の強みを理解する
・効果測定できる環境を用意する
・KGIとKPIを決め、シミュレーションを作る
Web広告を出す目的や効果測定の環境、自社の強み理解などはすでに会社内でできていることも多いと思います。
サイトに関しては、現状の良し悪しもあると思うので、Chapter6のサイトの成功法を確認ください。
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