Web広告ってどうやって運用するの?|Tech Book Zone Manatee

マナティ

Web広告ってどうやって運用するの?

Chapter2 Web広告を始める前の準備が、成功と失敗を分ける
Web広告を成功に導くためには、計画的な準備が必要です。どのようにWeb広告を成功に導くのか、そもそも成功とはなんなのか、具体的に行っていくことはなんなのか。そういったWeb広告に関する悩みをもとに、Web広告の準備を紐解いていきます。

Web広告の設計から運用まで

Web広告は、設計をして、実際に出稿をして終わり、という訳ではありません。出稿が始まってからが本当の勝負です。どんな広告のプロでも百発百中で、一番初めに考えた広告設計でうまくいくことはありません。
実際に運用をし、思い描いていた目標とのかい離を分析し、そのかい離分を埋めるために改善していくという流れを常にとらなければ、恐らく目標数値を達成することはできません。Web広告のパワーを最大限生かすためには、運用改善が必須となります。現状の分析では、まずこのフローがしっかりと社内で回せているのかから考えてみましょう。

 

図2-2-1 Web広告のPDCAサイクル

 

これが広告の施策一連の流れです。全体の流れを知ることで、「今は何をやるべきか」「どうやって効果を上げていくのか」が見えてきやすくなります。全体像を把握する前に広告を出そうとすると、広告の技術や小さなTIPS(コツ)に目が行ってしまいがちです。部分最適化はできるでしょうが、あまり大きな効果は見込めません。成果を出していくためには特に設計、効果測定、効果改善の3つのステップをしっかり守り、全体感を把握しながら行っていくことが大切です。
本書では次のChapter3で設計を、Chapter4で効果の測定と改善について詳しく説明していきます。

 

簡単に全体像を把握した後に各ステップを学んだ方が理解度も進むので、さわりだけ説明しますね。

 

広告の設計

設計を簡単に言うと、目的達成のためにどんな広告を出すか決めることです。様々な広告の手法がある中で、どの広告をどのように使っていくのかを決めるところから始めます。ただ勘違いしないでほしいのは、広告の種類を決めることが設計のスタートではありません。
Web担当者になりたての方やまだ経験の浅い広告担当者の方は、最初に「広告の種類」に目が行きがちです。ですが、種類を決めるのは最後で問題ないのです。

 

図2-2-2 Web広告を設計する流れ

 

まずは広告戦略全体の設計、そしてそれをかなえるための個別の設計という流れで進めていきましょう。どの広告を使うのか、それを決めるのは一番最後です。
広告はターゲットユーザーの感情を揺さぶり行動を変えさせるものです。それを設計するのに、「まずどんな広告からやろうか」を考えるのは失敗につながります。
1人のユーザーは複数の広告・情報に触れながら、サービスの理解をし、購入や登録まで至ります。広告ごとに考える前に、ユーザーの行動を考えながら複合的に広告を考える癖をつけていきましょう。

 

図2-2-3 ユーザーは複数の広告に触れる

 

広告の効果測定

効果測定とは、目標とどれだけ違いが生まれているのかを測ることです。図2-2-1で出てきたPDCAサイクルで広告運用全体を理解していただくことが多いのですが、効果測定はC:Checkに当たりますね。
この効果測定でよくありがちなミスは、測定のための測定になってしまうことです。Web広告は1人ひとりのデータがすべて取れるので、データの量は膨大になります。しっかりとこのデータの優先順位をつけながら分析できるのであれば、データが多いことをうまく活かせるのですが、経験が浅い方はつい細かい数値や、改善インパクトの小さい数値に目がいってしまいがちです。広告の表示回数や直帰率、サイトの滞在時間など、直接売り上げと関係のないところばかりに目がいってしまわぬよう、成果を出すための測定を常に心がけましょう。

 

広告の効果改善

効果測定がPDCAのCなら、改善はAのActですね。つまり、効果測定をした数値をもとに、次の一手を決めて行っていくことが効果改善のフェーズとなります。具体的には、効果測定したデータをもとにクリエイティブ(広告で利用する制作物)を変えたり、予算分配を変えたり、新しい広告を出したりするフェーズですね。

 

図2-2-4 Web広告の効果改善例

 

ここでは、Web広告だけでなく、サイト自体の改善にも目を向けましょう。広告でできることとサイト内部でできることはまったく違います。
もしあなたの職域が広告だけでも、「広告の数値を見たうえでサイトをこう変えた方がいい」と分かれば、積極的に提案をしていくべきです。難しいかもしれませんが、広告の効果をもとにしっかりと理論立てて説明をすれば、納得してもらえるかもしれませんよ。
そしてまた、改善のための広告設計に戻るのです。

 

マクロな視点とミクロな視点

このサイクルを回していくことで、確実に広告の効果はよくなっていきます。サイクルをきれいに回すために、ミクロな視点とマクロな視点を持ちましょう。
Web広告出稿の目的は、最終的には売り上げや利益です。それを上げるために、Web広告全体のPDCAサイクルを回しながら、個々の広告手法で小さなPDCAサイクルを回していきます。もっとミクロな視点で見ると、各広告のキャンペーンやバナーの訴求文もこのサイクルで回します。

 

図2-2-5 マクロな視点からミクロな視点へ

 

常に視点のレベル感をずらしながら、全体感と細かい個所とどちらも並行して見ていきましょう。

 

今出稿している広告がうまくいっていない理由

私がよく耳にする話で「広告出稿を始めたが、工数や知識が無くて、全然改善できていない」ということがあります。
スタートすることを目的に置いてしまった場合、運用改善ができなくなり効果が悪い状態が続いてしまいます。その結果、効果が悪いまま誰も改善を行わずに広告を垂れ流ししてしまう、または改善の余地があるにもかかわらず広告を止めてしまう、ということになります。
ある程度知識と経験がある人が分析を行えば、うまくいかない理由を把握することが可能です。ただ、それがなぜ改善できていないのかを考えていくと、最終的に“運用改善にかける時間”か“運用改善の知識”が足りていないことに帰着します。

 

図2-2-6 Web広告のPDCAサイクルが回せない理由

 

新しい広告のチャレンジを行うことは必要です。しかし、いくらしっかりと設計し、目標数値を決めたところで、改善のための時間と知識がないなければ失敗をします。そういった場合は、各広告の運用改善のポイントを事前に洗い出し、それができる工数が確保できるかを確認したのちに、新しいチャレンジを行いましょう。
 

基礎から学ぶWeb広告の成功法則

著者:本間和城
価格:2,462円
発売日:2016年8月1日

 

 

著者プロフィール

本間和城(著者)
株式会社インタースペース プロデューサー / 株式会社Resupress STORYS.JPプロデューサー / 一般社団法人日本ディレクション協会 副会長
1989年長野県生まれ。静岡大学工学部 システム工学科卒業。2012年株式会社インタースペースに入社後、Web広告を活用したプロモーション戦略の企画~運用までを一手に担当。新規サービスの立ち上げや事業アライアンスも行い、2015年下期、全社MVP獲得。
2014年からSTORYS.JPの非常勤プロデューサーを兼務。企業タイアップやサービスの解析・グロースハック、事業戦略の立案などを担当。合わせて2014年から日本ディレクション協会に参画。企業研修や外部講演でWebマーケティングや営業、サービス設計のセミナーを行う。現在、同協会の副会長としてディレクション業務の拡張やWebディレクターの地位向上を目指している。広告会社・スタートアップ・社団法人の3足のわらじで活動中。