第1回後編 社内のお仕事をAIで効率化! 最先端技術を学ぶ楽しさと、現場に喜ばれる楽しさ|Tech Book Zone Manatee

マナティ

エンジニアコンビに聞く! 技術のお仕事

第1回後編 社内のお仕事をAIで効率化! 最先端技術を学ぶ楽しさと、現場に喜ばれる楽しさ

第一回目は、NECで、AIや量子コンピューターなどの先端技術を活用してDXオファリングを支援するシステムを研究開発されている大石美賀さんと、その上司の大崎さんにお話を伺いました。前編の記事はこちらよりご覧ください。

勉強したこと、ためになったこと

ニャゴロウ:これまで特に勉強したことや、ためになった経験があれば、教えてください。

(以下大石さん)
勉強したことは、モデリング(モデル化)のための勉強や、自然言語系AIの技術調査です。

モデリングは、業務で使うのですが、業務だけでなく、日々の仕事でも意識しています。たとえば、自分の作った資料が体系的になっているか、適切な名前が付けられているか、物事の本質を考えられているか、体系的に理解しているかなど、意識することで、勉強になっています。

どうしても、インターフェースなどに惑わされて、本質を外してしまうこともよくあるので、勉強になります。

自然言語系AIの技術調査としては、今話題のChatGPTの元になっているGPT-3の論文や、前から注目されているTransformer関連の論文をいくつか読み、仕組みや特性を学んでいます。LMMをチューニングするための方法の論文※もよく読んでいます。

編集部注:
※「Attention is All you need」「The Power of Scale for Parameter-Efficient Prompt Tuning」など

ニャゴロウ:ためになった経験はどうでしょう。

インターン生後輩との活動がためになっています。

教わる立場ではありますが、同時に教える立場になったことで、まずは責任感が芽生えました。また、指導する、つまり自分の知識を言語化することで、自分が感覚的に学んでいたことや、理解が十分足りていないところが分かって、逆に私の勉強になっています。

最初は自分には重荷だなと感じていましたが、説明の仕方や伝え方などの練習にもなり、今ではとてもためになっています。

NEC ソフトウェア&システムエンジニアリング統括部
intelligent SIグループ所属 大石さん

大崎さんコメント:
グローバルに競争するとなると、競争相手も優秀なので、「問題に正しい答えを出した」だけでは差がつきにくい面があります。

調査する資料は、膨大で、読むのも探すのも見つけるのも大変ですし、全部読んだら時間がなくなるので、「何を生かすのか」を判断して、切るものは、切ることが大事です。それから、信用できる文章とそうでないものもあります。例えば、自分の業界の悪いところや不利なことは書かないので、差し引いて考える必要があります。

大石さんにモデリングの指導をする時に、「これを分析しなさい」と渡すと、こちらが吃驚するほど、関連資料をとてもたくさん読んできてくれるだけでなく、そうした「判断」も身につけてくれていて、頼もしい後継者です。

関心のあること、取り組みたいこと

ニャゴロウ:どのようなことに関心があり、今後どういったことに取り組んでいきたいと考えているかを教えてください。

勉強したことと重なりますが、技術的に関心のあることは、ChatGPTなどの生成系AIです。
日々の仕事や私生活でも取り入れ、先端技術には常に触れるようにしています。

たとえば、業務では、文学的な、人を心躍らせるようなキャッチコピー的なものを考えてもらったり、挨拶文や、ちょっとしたメールの作成、ある程度かしこまって、自分の意志を伝えるときなどに使っています。私生活では、姪、甥の勉強のために、間違えた問題の類題を作成して、学習をサポートするのに使っています。

AIは、性質が様々なので、言語モデルごとに特徴や得意不得意を理解して、タスクごとに使い分けられるようになることが目標です。
ニャゴロウ:お話を伺っていると、AIに限らず、様々な先端技術に興味をもっていらっしゃる感じがしますね。また、机上の学問にとどまらず、積極的に使っている様子がうかがえます。

技術以外では、経営や組織の構造に興味があります。 システムを作るうえで、「システムの中」だけでなく、「システムの外」を見る必要があると痛感しています。

経営者から会社や社員はどう見えているのか、お金の面から見たときの会社や組織について興味があるので、そうした知識を習得していきたいです。社会人として常識的なビジネスの知識を持ったうえで、新しいシステムを考案するときに、役立てたいと思っています。  
大崎さんコメント:
私としてはNECの社員としてシステムに関する技術は基礎として、経営様々な業界・社会の知識には興味を持って学び、身に着けていってもらいたいですね。システムのことしかわからないのでは活躍の幅がどうしても狭まってしまうので、少なくとも一つはシステム関連以外の専門領域をもってもらいたいです。

NEC ソフトウェア&システムエンジニアリング統括部
intelligent SIグループ ディレクター 大崎さん

今後、どのようなエンジニア人生を送りたいですか?

ニャゴロウ: さて、最後の質問です。あなたは今後、どのようなエンジニア人生を送っていきたいですか。

AIなど先端技術をうまく使えるエンジニアになりたいです。

まだ、二年目なので、知識が足りない面も多くなりますが、もっと現場と、技術の両方をよく知って、必要な技術を提案できるようになりたいです。

ですから、新しい技術の開発というよりは、今ある技術を駆使して、お客様や現場の課題に対する解決案を考案できるエンジニアになりたい。理想は、技術とビジネスの両方が分かるエンジニアですね。
ChatGPTなどの生成系AIの精度が高まっている中、AI+自分で成果を出せるようなエンジニアが目標です。
大崎さんコメント:
システムやソフトウェアエンジニアリングというのは、主に要求仕様をどうやって高品質・低コスト・短納期で実現するのか?という技術として発展してきました。現在では「どうやって」よりも「何を作るのか?」が重要になってきています。大石さんにはこの「何を作るのか?」を考えられるエンジニアになってもらいたいと考えています。

ありがとうございました!

ニャゴロウ:感想
まだ二年目にもかかわらず、様々な技術に対し、貪欲に勉強し、身につけていっている印象を持ちました。
大学院では、量子コンピューターの研究をされていて、IPAからの助成も受けていたそうですが、ジャンルは違うものの、学生時代から一貫して、手元の技術を深く考究し、外へも視野を広く持とうとしているのが、エンジニアとして、非常に好ましく、将来が楽しみです。
また、上司である大崎さんの指導を、素直に受け取り、楽しく学んでいることが、成長に大きくつながっているように見えました。

どうしても、エンジニア業界では、新しい技術の習得に追われてしまいがちです。しかし、大石さんのように、「楽しむこと」「机上の学問に終わらず、実務に結びつけられること」ができると、より、楽しいエンジニアライフが送れるのではないでしょうか。

著者プロフィール

小笠原種高(著者)
小笠原種高(ニャゴロウ)
テクニカルライター、イラストレーター。
システム開発のかたわら、雑誌や書籍などで、データベースやサーバ、マネジメントについて執筆。図を多く用いた易しい説明に定評がある。綿入れ半纏愛好家。最近気になる動物は黒豹とホウボウ。

主な著書に、『仕組みと使い方がわかる Docker&Kubernetesのきほんのきほん』(マイナビ出版)、『図解即戦力AWSのしくみと技術がこれ1冊でわかる教科書』(技術評論社)など。