2017.01.19
固定概念を打ち破るイノベーションによって、社会を変えていくAppleのような企業のシゴトを密着取材。
株式会社ユカイ工学
「ロボティクスで世の中をユカイにする」をテーマに設立され、ネットとリアルをつなぐさまざまなプロダクトを開発・製造・販売している。【URL】http://www.ux-xu.com/
既存のロボットに違和感
ロボット開発と聞いて人々がイメージするものは実にさまざまだ。自動車の製造などに用いられる産業用ロボットもあれば、自走式掃除機のような家庭向けロボット、ソフトバンクの「ペッパー(Pepper)」のような人間を模したヒューマノイド型のロボットなどもあり、いまやロボット業界は百花繚乱の時代を迎えている。政府も、製造業や医療・介護など人手不足の課題を解消する目的で、ロボットを新戦略の一環と据えているほどだ。
このような流れを受け、最先端の人工知能やマシン制御機構などハイテクの粋を集めたロボットが続々登場している現在。それとは一線を画すかのように、まるで昔のロボットおもちゃをイメージさせる開発で注目を集めているのがユカイ工学だ。
同社を率いる代表の青木俊介さんは、世界的に著名なモノづくりのスペシャリスト集団「チームラボ」を猪子寿之さんらと設立したメンバーの一員としても知られる。当時は東京大学在学中。まさにITを駆使した学生ベンチャーの先駆けといえる人物である。
そんな青木さんが、ロボット開発に本格的に興味を持つようになったのは、中学2年生の頃。SF映画「T2(ターミネーター2)」を観たのがきっかけだったという。
「ロボットそのものはもっと幼い頃から好きでした。当時はガンダムよりも“アラレちゃん(鳥山明原作『Dr・スランプ』登場のキャラクター)”にハマってましたね。その後T2を観て、そこに登場するダイソンという人物がアンドロイドの人工知能を開発するんですけど、それがとても格好よく見えて…。自分もいつかこういう仕事をしたいと思いました」
その後、人工知能の研究をするために東京大学工学部に進学。ロボット開発を念頭においてのことだったが、ちょうどその頃、90年代後半から2000年代初頭にかけての「ドットコムバブル」の波もあり、事業としてはソフトウェアビジネスを7年ほど展開した。
その間、1999年にソニーのペットロボットAIBO、2000年に本田技研工業の二足歩行ロボットASIMOが発表され、2005年の愛知万博(愛・地球博)ではロボットプロジェクトが実施されるなどロボットブームが到来。「いまビジネスとして取り組まなければ時代に取り残される」と感じて、2007年に鷺坂隆志さん(現CTO)とユカイ工学をLLC(合同会社)として設立し、少年時代からの憧れだったロボットの開発・製造に着手した。
「時代の大きな流れというのもありましたが、自分たちでロボットを開発する会社にしようと思ったのは、当時大企業が作るロボットに自分が欲しいものがなかったというのが大きな理由です。ホビーの分野では大企業のロボットとは異なるアプローチで、2005年頃から(近藤科学のKHRシリーズなど)市販組み立てロボットのブームがあり、二足歩行するロボット同士をバトルさせたりしていたのですが、それも何かちょっと違うと感じていました。僕がイメージしていたロボットは、ドラえもんのように友だちになれて、自分の部屋で一緒に生活できるような存在だったんです」