Mac企業導入の最善線(4/5)|MacFan

SPECIAL

【特別企画】企業の成功事例から探る「オフィスでMac」の最適解

Mac企業導入の最善線(4/5)

文●牧野武文

【事例検証】避けられない「モバイルファースト」今後は自発的に端末を選ぶ時代に!?

 

 

Macの企業導入が加速する4つの理由

今はIT時代で、ITを利用しない企業はもはやあり得ない。しかし、今回の二社の取材を通していかにITの世界にも都市伝説がはびこっているかに気づかされた。たとえば「社内基幹システムを使うにはウィンドウズでなければならない」「Macは業務には向かない」「Macはコスト高になるからウィンドウズに揃えたほうがいい」。これらは、すべて単なる思い込みでしかない。

今後の社内でのデジタル環境を考えるうえでもっとも重要なのは、「20世紀は業務用の時代、21世紀は民生用の時代」という大きな転換があったことを意識することだ。20世紀はハードウェアでもソフトウェアでも、まず業務用に最高品質のものが提供され、それが民生用に“降りて”きた。ビデオカメラなどはまずテレビ局などの業務用に開発され、それが家庭用ビデオカメラに再開発された。しかし、21世紀は民生用の時代だ。Mac、iPhone、iPadといったアップルのデバイスはいずれも個人に使いやすく、扱いやすいようにつくられ、これが“上にあがって”業務でも使われるようになっていく。いわゆるモバイルファーストの時代である。

業務においてはITを学ぶことが目的ではなく、使うことで最大限のアウトプットを生み出すことが本質なのだから、そうした意味で現在コンシューマーにもっとも受けているMacが企業に入っていくのは当然の流れだといえる。そして、今回の取材を通して見えてきた以下にまとめた4つの理由から、Mac導入の障壁は下がり、今後加速していくと思われる。

 

【1】社内基幹システムのクラウド化の加速

企業内の基幹システムが独自OSで動いているという企業は多い。そうした場合、クライアント端末がウィンドウズである必然性はなく、単に基幹システムを操作する端末としてウィンドウズが使われてきた歴史があるだけだ。今後、基幹システムの操作端末は間違いなくWEB化していき、ブラウザから閲覧操作できるようになる。それどころか、基幹システムそのものをWEB化、クラウド化してしまおうという動きも盛んだ。WEB化に対しては応答速度の問題、セキュリティ上の問題など、まだ不安な要素もある。しかし、それ以上にモバイルデバイスからも利用したいというニーズが強い。

 

【2】利用機会が減るOfficeソフト

「Macが業務に向かない」といわれるのは、ワード、エクセル、パワーポイントの「三種の神器」がMacでは扱いづらい点にもある。Mac用Officeとの互換性はかなり高いものの、使用するフォントなどによってレイアウトが崩れるなどの問題も発生する。しかし、その「三種の神器」の重要度は年々下がってきている。業務において電子メールやグループウェアの比重が高まる今では、複雑なレイアウトの書類をつくる機会は極端に少なくなっているし、PDFが利用されることも多い。シンプルなレイアウトの書類であればiWorkでも問題なく、安井家具でも業務に支障はまったくないという。

 

【3】ソフトウェアライセンス料という見えないコスト

「ウィンドウズのほうが安く済む」というのも思い込みといえる。確かにウィンドウズパソコンには5万円程度で売られているものもあるため、Macと比べて低価格であるという印象を持つ人は多い。しかし、業務用パソコンは通常3~5年程度のリースをすることになる。その間使い続けることを考えると、ある程度性能が高いマシンを選ぶこととなり、業務用のウィンドウズPCは最低でも10万円以上の機器、通常20万円弱ほどになり、Macとほぼ同じか、むしろ割高ぐらいだ。また、ウィンドウズをはじめ、各種ソフトウェアの法人ライセンス料が必要となる。安井家具では、トータルで考えて安くなるMacを現に選定している。

 

【4】混在環境を一元管理する管理ソフトが主流に

「MacとWinの混在環境は管理に手間がかかる」。これだけは、まだ解決していない問題だ。Mac、ウィンドウズ、その他のデバイスを一元管理するクライアント管理ソフトは存在するが、管理ソフトを乗り換える手間は大きい。しかし、それでもアマナでは実質的なCYOD体制を取っており、その効果は決して小さくない。「社内をウィンドウズだけにすれば管理が楽」。そのとおりだが、モバイルデバイスの利用が必須である現代で、「ウィンドウズしか管理をしない」というのは、英語を話すのは大変なので海外取引はしないというのと同じくらい怠惰だと言い切ってもいいかもしれない。

 

【課題】
企業において今後Macを積極的に導入していくかどうかは別の話としても、モバイルデバイスを含めたマルチデバイスへの対応、CYOD制度の導入は企業にとってもはや避けて通れない課題といえよう。