■あらすじ
医者に見放された難病の老人が、宗教の神託を信じて狸を食ったお蔭で、医者に1年といわれた余命を長引かせることができた。
それを知っていた近所の川上銀次は自分が同じ病気になったとき、老人に狸を捕まえて食わせていたその息子の大川春吉に、狸の捕獲を頼んだ。
折も折、春吉の家に狸が忍び込んできて家族が食べる料理を盗み食いをした狼藉を発見した。
春吉は夜を待って待ち伏せをしてその狸を殴り殺したのだが、明かりをつけてみるとそれは狸ではなく、病気の神託を下す神の使わしめの猿であった。
「これは大変なことをしてしまった」春吉は殺した猿を隠すために必死になるが、同時に新たに狸を捕まえなくてはならない。
狸の肉を待つ銀次の容体は日に日に悪くなって、銀次はついに気が狂ったような状態になってきた。
「早く狸を食わせなくては銀次は死んでしまうかもしれない」切羽詰まった時に、山で狸の居場所が分かった。
春吉は万全の構えで狸の捕獲にかかるのだが、そのとき意外なお告げが神から降りたのである。
春吉は愕然とした。しかし、春吉には新たなお告げにも対処できる隠し技があったのだが……。
■釈 一極さんからのコメント■
医者に見放された難病を治すために怪しげな神に命乞いをする男と、それに便乗して神が指定した狸の肉を提供しようとする男が様々な障害を乗り越えてあと一息で狸を提供できそうになったとき、思いもかけない神の神託がすべてを水の泡としてしまうのであった。
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