では、キヤノンとエプソンはどうなのでしょうか？キヤノンは今日の時点ではまだ2012年モデルは発表されていませんので何とも言えませんが、エプソンは8月29日に忽那汐里さんを招いた発表会が開催されました。次世代カラリオシリーズは、なんと、従来モデルよりも40%も体積を減らした「ありえない」本体サイズを実現しています。単体の写真ですとあまりわからないもしれませんが、店頭で実物を見ると必ず「えっ？なにこれ」と驚かれるでしょう。詳細は無料電子雑誌「Creative Now」で後日報告したいと思いますが、この新機種の登場によって、プリンタ市場は今後大きく変わるでしょう。それほど今回の新製品はエプソンの深い思いが込められています。

 

 

自宅で使用することが前提であるコンシューマーインクジェットプリンタは、小さければ小さいほど設置スペースが節約できるのでユーザーにはとても大きなメリットがあります。しかし、無理な小型化はデメリットが生じる場合もあります。筐体の内部スペースが狭くなるとこれまで搭載していた機能が減ったり、操作性そのものが悪くなるといったことは当然考えられるし、印刷エンジンを小さくすると印刷速度が遅くなったり、画質が悪くなったり、あるいは騒音や振動が大きくなる可能性も出てきます。

 

実際に新モデルを見てみると複合機の上位機種で採用していたインクカートリッジからチューブを経由してヘッドにインクを供給するオフキャリッジと呼ばれる方式をやめてヘッドの上にインクカートリッジを配置した従来型のオンキャリッジに変更しています。オフキャリッジは、たくさんのインクカートリッジを設置できる反面、どうしても筐体が大きくなるという欠点がありました。エプソンはあえて昔の形に戻すことで小型化を優先したわけです。

 

 

 

さすがにインクカートリッジの搭載数が減ると画質に大きな影響が出てしまうため、写真高画質支える6色インクカートリッジはそのまま継承されていますが、印刷速度は若干遅くなってしまいました。上位機種は旧モデルでカラーA4写真光沢紙印刷で53秒だったのが新モデルでは63秒と10秒ほど時間が多くかかってしまうようです。常に高速プリントを目指してきたエプソンとしては、おそらく上位モデルで印刷速度が後退するというのは初めてなのではないでしょうか。

 

最新のカタログを見ても「高速プリント」という言葉はほとんど目立ちません。実は、A4では10秒ほど遅くなってもL版のような小さな用紙ではそれほどの差は感じられないのです。大半のユーザーにとっては、多少の印刷速度の低下よりも本体サイズが圧倒的に小さくなったほうが嬉しいのは間違いないでしょう。エプソンの調査では、プリンタの購入時に重視する点として「交換インクの価格」「写真プリントのきれいさ」「プリンタの大きさ」という結果だということです。インクについては今回のモデルでは容量の少ない製品を投入して低価格化を図っており、プリントのきれいさについてはすでに高いレベルを実現しています。しかし、大きさについては犠牲になる機能が出てくる可能性もあることからかなり勇気のいる決断だったのではないでしょうか。ユーザーの立場になって何が大切かということに重点を置き、高速プリントよりも小型化を優先したエプソンの姿勢は、業界全体に大きな影響を及ぼすはずです。