あのMICROLINEシリーズのOKIデータのプリンタが絶好調! 国内シェア10%を狙える理由は菅野美穂?


無料電子雑誌「Creative Now」好評配信中です。皆さん、もう読んでいただけましたか? さて、2011年11月1日、日本初の通信機器メーカーとしてスタートしたOKI(沖電気工業)は、創立130周年を迎えました。そして、OKIグループのプリンタ事業会社であるOKIデータが、新しいビジネスプリンタを同時に発表しました。OKIデータといえば、古くからのクリエイターは世界初のLEDヘッドを搭載したDTP用のポストスクリプト対応ページプリンタ「MICROLINE(マイクロライン)シリーズ」を思い出す人が多いと思います。1990年に発売したMICROLINE 801PSを皮切りにさまざまなPSプリンタを開発されましたが、現在でもMICROLINEシリーズは健在です。最新モデルは、カラーマネージメント用にEFI社製のFieryコントローラを搭載したMICROLINE Pro 930PSおよび自社製のRIPを採用した910PSの2つのシリーズが存在します。

 

DTP創成期に活躍した「MICROLINE 801PS」シリーズは、ポストスクリプトへの対応のみならず、印刷方式にLEDを採用し、B4用紙対応した画期的なプリンタでした。

かつては、キヤノンや富士ゼッロックス、エプソンなどからも簡易カラー校正が可能なポストスクリプト対応A3プリンタが発売されていましたが、現在はほとんどのメーカーがこの市場から事実上撤退しています。その代わり、キヤノンではimagePRESS C1を、富士ゼロックスではDocuColor 1450 GAのような大型のコピー機をベースにしたDTP向けの製品にシフトしています。しかし、性能的には申し分ないのですが、価格が340万円~600万円と非常に高価であり、おいそれと手を出せる代物ではなくなっています。また、プリンタとしては、エプソンがLP-S9000PS、コニカミノルタがmagicolor magicolor 8650DNを40万円前後でポストスクリプト対応製品として発売していますが、以前のようなカラー校正用のモデルとは機能が異なり、A3ノビやカラーマネージメントにも対応していません。どちらかと言えばビジネス用ページプリンタの延長にある製品のみとなっています。それを考えるとMICROLINEシリーズは、Pro 930PSに至っては60万円ぐらいのモデルからFieryによるカラーマネージメントに対応しています。40万前後で購入できる910PSはFieryは搭載していませんが、A3ノビには対応しています。出版・印刷の業務に携わる関係者にとってはとても貴重な存在だと言えるでしょう。

 

「MICROLINE Pro 930PS」は簡易カラー校正が可能なDTP向けプリンタの最新モデルである。

 

OKIデータのビジネスプリンタが好調な理由

 

MICROLINEシリーズで名を馳せたOKIデータですが、最近ではビジネスプリンタのCOREFIDO(コアフィード)シリーズが主力商品となっています。高価な製品がどんどん売れまくったDTP創成期とは違って、簡易カラー校正のマーケットは入れ替え需要の時代に入っており、かつてのような勢いはありません。また、印刷データのデジタル化が進むことによってモニタ上で校正を済ませることも多くなり、プリンタによる簡易カラー校正さえも行なわないケースが増えてきました。このような状況では、OKIデータもさすがに導入台数が多いビジネスマーケットに力を入れざるを得ないわけですが、古くからのMacユーザーやクリエイターが多い私の知人の中には「OKIってまだプリンタを作っていたの?」などと不届きな発言をする人もいます。クリエイターの側から見るとそうかもしれませんが、実はOKIデータの2009の国内シェアは4%で、2011年の前半は8%を達成し、後半は10%を狙うとのことです。前年比は全体で130% ドットインパクトタイプを除くと146%という急成長ぶりを遂げており、もちろんこの牽引力はCOREFIDOシリーズにほかなりません。

 

 

OKIデータの発表会では、2011年の後半には10%シェアを実現したいと言っていました。

 

しかし、ページプリンタの主流といえば、なんと言っても、キヤノン、リコー、ゼロックス、エプソンの4大メーカーの製品です。そして、残りの市場をコニカミノルタ、カシオ、OKIデータ、シャープ、HP、京セラミタなど分け合う構造となっています。ところが、OKIデータが8%のシェアともなると4大メーカーに肉迫する勢いです。これはかなり好調な数字と言ってよいでしょう。また、これまではOKIの子会社の1つとしてあまり目立たない存在でしたが、最近はグループの柱の一つとしてOKIグループでのポジショニングもアップしています。なぜ、OKIデータのプリンタは、ここまで販売が好調になったのでしょうか。

 

要因の一つは、最近よく目にする菅野美穂さんのCMに象徴されるように宣伝活動の大きな変化でしょう。2009年の「現場に、愛を。」に始まり、2011年の「がんばるあなたを応援したい。」など、最近はOKIデータのCMを見る機会が多くなってきました。2009年ごろはテレビ東京のみでの放映でしたが、最近はTBSの「がっちりマンデー」やテレビ朝日の「報道ステーション」のCM枠でオンエアされるようになりました。現在、ビジネスページプリンタをこれだけ積極的に展開しているのは、OKIデータかエプソンぐらいのものでしょう。

 

「現場に、愛を。」のキャッチフレーズでOKIデータTV CMに登場した菅野美穂さん。

 

 

最新型のA3ページプリンタ「COREFIDO C841dn」の発表会での菅野美穂さん。

 

 

OKIデータのCMは「現場に、愛を。」が初めてだった

 

ところが、菅野美穂さんのCMがOKIデータ創設(1994年)以来、初めてのテレビCMだということを皆さんはご存知でしたでしょうか。OKI自体も1990年代後半からはほとんどCMを流していませんでしたが、OKIデータに至ってはまったく皆無でした。端から見るとOKIグループはこれまで積極的にブランディングや広告宣伝を行なってきたようには見えず、特にプリンタという新たな市場に対しての取り組みが消極的だったように感じています。まあ、競合他社もそんなに大量にCMを打っているわけではないのですが、それにしても控えめでした。

 

OKIデータ前社長の前野幹彦氏は、TV CMに積極的に取り組みたかったようですが、親会社の理解がなかなか得られないと当時は嘆いていました。しかし、グローバルブランドの統一ビジョンおよびガイドライン作成など、「OKI Printing Solutions」のロゴ制作や「S3(Sキューブ)」という製品デザインのコンセプトを推し進めました。OKIが証券取引所の銘柄略称を「沖電気」から「OKI」に変更し、「沖データ」も「OKIデータ」に略称を変えました。そして、2008年に就任した現社長の杉本晴重氏は、広告代理店を入れ替えるなど、TV CMを見据えた積極的な広告宣伝活動とブランディングを展開します。その一つが菅野美穂さんのCMなのです。そして、OKIが主力の一つであった半導体部門をロームに譲渡するなど、グループ内の再編成が進んだ結果、OKIデータは以前にも増して重要なポジションを担うようになりました。

 

OKIデータ前社長の前野幹彦氏。

現社長の杉本晴重氏。

 

TV CMの効果による国内シェアのアップと新型A3ページプリンタの新サービス

 

菅野美穂さんの効果についてOKIデータ国内営業本部販売促進チームの城木芳隆氏によると「CMを開始してから2年が経過しましたが、ビジネスプリンタ・複合機の購入関与者にターゲットを絞って番組選定を行うことによって、着実に認知度アップし続けています。セールスの場面でも、ご販売いただいているビジネスパートナー様がお客様と会話をされる際に、まず『OKIは菅野美穂さんがCMをやっているんですよ』というひと言から始めるというお話もお聞きします。CM効果で確実に提案のハードルが下がり、売りやすさに繋がっているといえます。また、CM開始から使い続けている『現場に、愛を。』というキーワードによって、『お客様の声に真摯にお応えする』という当社の企業姿勢がより明確になり、お客様の認識だけでなく、社内の意識も変化してきていることも効果の一つといえるでしょう。さらに、OKIグループ全体にも良い効果をもたらしています。近年若い人を中心に下降傾向にあった企業認知率が再び上昇しており、新卒の採用の際にも、『CMでOKIを知った』という方が増えています。」だということです。

 

やはり、TV CMの効果は相当高かったようです。そして、新しく発表されたA3ページプリンタ「COREFIDO C841dn」(26万400円)、「COREFIDO C811dn」(14万4900円)、「COREFIDO C811dn-T」(17万4300円)は、「世界最小の設置面積」を実現しているという意欲的な製品です。確かに実物を見ると毎分35枚の高速印刷が可能なA3プリンタとは思えない本体サイズで驚きます。これは、両面ユニットを筐体内の搬送ベルトの下に配置するという設計の大きな進化によるものです。さらにLCDパネルの改良やヘルプボタンの搭載、新型ヒーターの採用による32秒のウォームアップの実現、低騒音ファン採用による21%の騒音低減、交換頻度の高いブラックトナーカートリッジを前面パネルの開閉のみで簡単に交換できるようにするなど細かい部分にも変更が加えられています。

 

新しく発表されたA3ページプリンタ「COREFIDO C841dn」。

 

2012年1月より出荷ということですが、この製品はサイズや新技術だけでなく、これまでにない特長があります。それは好評だった「5年間無償保証」に加えて新たに追加された「メンテナンス品5年間無償提供」です。この無償提供は、定着器ユニット、ベルトユニット、給紙ローラセットで、通常この部品を交換すると5万円~6万円の費用がかかるため、本体の購入価格にこの分が含まれているというのが、OKIデータの売りも文句です。同社では、通常は8万~10万枚印刷すると交換の必要が出てくるため、3年ぐらいでの交換を予想しているそうで交換はユーザー自身が行ないます。

 

この「5年間無償保証」と「メンテナンス品5年間無償提供」というサービスこそ、菅野美穂さんのCMに匹敵するOKIデータのもう一つの強力な武器といえるでしょう。やはり、オフィス向けのプリンタなので、イメージ的な訴求だけでなく、現実的なメリットと安心感は重要です。この2つが揃うことによって、国内シェアをさらに押し上げようというのがOKIデータの狙いであることは間違いありません。とは言いながら、クリエイターにとっては、日本で唯一と言っていい簡易カラー校正が可能なプリンタであるMICROLINE Pro 930PSのニューモデルもそろそろ期待したいところです。性能的には大きな問題はないもののウォームアップ時間の長さや本体サイズなど改善して欲しい点も多々あります。しかし、2008年8月の発売からすでに3年以上が経過しているのですが、2011年10月に低価格モデルの「MICROLINE Pro 930PS-E」(62万7900円)の発表があったばかりなので、2012年あたりはまだモデルチェンジがないかもしれません。

 

 

カテゴリ: 編集部から
タグ: , , , , , ,