[将棋]マイナビ女子オープンブログ詳細|将棋情報局

将棋情報局

第4期 >> 五番勝負第1局

升田幸三賞受賞「超速▲3七銀」

2011.04.05

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

20110405_13.gif

本局の序盤に戻ってみよう。図は先手が▲3七銀とすばやく動いた局面。これが第17回升田幸三賞を受賞した戦法だ。『将棋世界』誌上の連載で勝又清和六段が「超速▲3七銀」と名づけ、その呼び名がそのまま浸透している。
考案者は星野良生三段。これに目をつけた深浦康市九段が公式戦で初めて採用し、そこから爆発的に流行していった。現在では対ゴキゲン中飛車のエース戦法として注目され、プロ間では日進月歩で研究が進んでいる、まさに最前線の一角である。

玉を6八にとどめたまま銀を繰り出していくのがこの戦法の骨子。すばやい立ち上がりで後手の駒組みを牽制するのが狙いだ。玉は薄くなるが、局面の主導権を握れるのは大きな魅力。
いっぽうの後手は、ある程度動かれるのは承知のうえで、じっと玉を固めてカウンターを狙っていく。

居飛車は「主導権を持つが玉が薄い」。振り飛車は「堅い玉で相手の攻めを待つ」。将棋に詳しい方は気づいているかもしれないが、この構図はひと昔前の「居飛車対振り飛車急戦」そのもの。ゴキゲン中飛車という新しい舞台で、再び対抗形の基本とも呼べる構図が出現している。一周してもとの位置に戻っているようだが、その内実は大きく違っている。将棋は確実に進歩しており、その軌跡はらせんを描いている、といえるかもしれない。

(文)