2018.05.05
『藤井聡太全局集 平成28・29年度版』重要対局詳解編を3日連続で一部公開 その3
『藤井聡太全局集 平成28・29年度版』の内容を3日連続で一部公開いたします。〈その2〉〈その3〉は「重要対局詳解編」より、デビュー8戦目の対大橋貴洸四段戦のハイライトシーンを2日にわたり紹介します。
昨日からの続きです。
苦戦の藤井聡太四段はどう戦ったのでしょうか。
☆
再掲第3図からの指し手
▲6二歩成1△同 角 ▲8六香 (途中図)
△8三桂5 ▲6四銀6 △9六歩1 ▲6五銀
△9七歩成 ▲同 桂1 △9六歩 ▲8五桂1
△8四角 ▲2四歩12 △同 歩2 ▲6六歩
△6一香(第4図)
勝負術
7筋が壁になっている先手は、端を攻められるのが一番怖い。「少し盛り返したかと思ったが、▲6二歩成を見落としてまたダメにした」という藤井の感想がある。△同角に▲8六香(途中図)と打ち、後手の攻め駒を一掃するのが先手の狙いである。途中図で△8五歩は▲同香△同飛▲7二馬でおしまいだ。
「△8三桂も鬼辛抱の続き。もちろんまだ先手優勢ですが、後手玉は堅く、ちょっともつれそうな雰囲気が出てきました。△6一香も先手の攻めを焦らせる催促。悪いときの勝負術が藤井将棋の一面です」
第4図からの指し手
▲2三歩 △同 玉 ▲2五歩1 △同 歩2
▲9三桂成3△同 角 ▲9四歩 △8四角
(第5図)
鬼手が出た
先手有利は明らかだが、後手玉の寄せがなかなか見えない。大橋にとっては嫌な展開だ。▲2三歩から後手玉に味を付けたのはよいとしても、▲9三桂成は問題だった。
村山「▲9三桂成はしゃれた手ですが、失着。▲9四歩(C図)から手堅く後手の駒を責めればはっきり良かったです」。飛車を取って▲4一飛と打つ攻めがめちゃくちゃ速かったのだ。
角を取ってしまえばよしと考えていた大橋だが、藤井の鬼手が出た。第5図の△8四角がそれだ。
第5図からの指し手
▲5四銀23 △8五歩2(第6図)
タダでは取れない
△8四角はタダだ。だから、大橋も軽視していたのだ。ところが、▲8四同香は△8五桂(D図)と打たれる。D図で▲8九桂は△6四香。先手は▲7九飛のカベと9筋の弱点がもろに出てしまった。これで大橋も動揺した。
村山「▲5四銀で▲7四銀と受けに回れば、まだ先手に分がありました。△6四香には▲8四香で△8五桂が消えていますし、△9五角と逃げれば▲5三銀成で、まだ先手優勢でした」
チャンスと見て、藤井も生き返った。△8五歩が鋭い。逆転の気配がする。
☆
以下強敵を相手に形勢ひっくり返し、8連勝を飾った藤井四段。書籍ではもちろん、熱局全体を詳しく取り上げています。
※本記事はWEB掲載用に書籍から内容を一部変更して掲載しています。
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