2018.01.26
羽生永世七冠ムック発売記念企画『あなたが選ぶ羽生善治の名局No.1』
将棋世界ムック『永世七冠 羽生善治のすべて』発売記念企画。
将棋ファンなら誰でも、羽生善治の対局を見て心震えたことがあるでしょう。数多の名局の中で、どれが一番みなさんの心を打ったか、皆さまの投票で決めたいと思います!
皆さまの投票、熱いコメント、お待ちしています!
お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中
なお、今回は羽生の勝局または引き分け局を対象としました。 ※2/12を持ちまして受付を終了しました。
完封負け濃厚の局面から、無筋の▲2三金。この手を境に流れが少しずつ変わりまさかの大逆転。「羽生マジック」の代表的な対局のひとつ。
七冠達成直後の名人戦で実現した同級生対決の第1局。羽生ピンチを思わせる中打たれた受け一方の▲9八角が常識外の名手。直前の△5八飛に代えて、あえて王手飛車のラインに打つ△4八飛が正着だった。
駒得で玉も堅く攻めている渡辺が優勢と誰もが思う中、図の局面で渡辺の手が止まる。「手がなくて唖然とした」と渡辺。羽生の卓越した大局観が光ったフランス決戦。
森内大差リードの将棋。決めにいった森内のわずかなスキを突いて接戦に。クライマックスは図。森内も控室も詰めろと信じていた△6九銀が詰めろになっておらず大逆転防衛。
歴代名人をなで斬りにしてNHK杯初優勝を決めた羽生の有名すぎる名手▲5二銀。一見手がかりがなさそうな後手玉を一撃で仕留める次の一手のような鮮烈な一手は、米長邦雄永世棋聖の名解説でよりその輝きを増した。
2手目△3二飛戦法で幕を開けた本局のクライマックスは図。中空に打った△6六銀が詰めろ逃れの詰めろ。▲同歩と取らせることで▲6六桂と打つスペースをなくし、詰めろを解除するという奇跡的な手順に将棋ファンが沸いた。結果は千日手。指し直し局を制した羽生が王座奪還、王座通算20期の偉業を成し遂げた。
ライバル対決の序章となった新人王戦決勝三番勝負。まさに戦いが始まろうとするこのタイミングでじっと手を渡す▲9六歩は、棋士たちを大いに驚かせ、新時代の到来を強く予感させた。
羽生が初めて名人戦に登場したシリーズ。3連勝後の2連敗で迎えた本局で、名人獲得を決めた手順が図からの△4六歩▲同銀△4四歩。歩を突き捨ててからその一歩手前に打ち直して手を渡すという気づきにくい手筋で次の△3六歩が受けづらい。
取材陣が対局室を取り囲む中、主役は38度の熱を出し、虚ろな目でその歴史的瞬間を迎えた。一度は虎の子の王将位を防衛して意地を見せた谷川も、その後すべてのタイトルを防衛して翌年の再戦に臨んだ羽生の勢いになすすべがなかった。図は歴史的投了図。
5一の歩が頑強で▲5二歩と打ちたいが二歩。そこで羽生は▲5三歩成△同金▲4三歩△同金▲5二歩という手順を編み出す。歩が2マス先にジャンプする魔法のような手順で後手陣を攻略した。
2011年から4期続けて同じカードとなった羽生-森内の名人戦は、3期連続で森内が制する結果に。図の▲4一金が周囲の度肝を抜いた。虎の子の金を一段目に打って玉を上部に逃がす超筋悪の一手だが、この金がよく働いた。4度目の正直で名人復位。
飛金の両取りが決まってしばらくは先手が攻勢を取るかと思われた図から、羽生は誰もが思いもよらなかった寄せの構図を描く。△6九銀▲7九金に続き△8六飛!のただ捨て!▲同銀△4七馬と進めた局面は、数少ない攻め駒が先手玉の急所を刺していて、信じがたいことにすでに後手勝ちとなっている。
図から▲8七歩と打った羽生。続いて△3三金▲8六歩!△5四歩▲8五歩!! にわかには意味を説明できない高等戦術だ。ちなみに最近編集部員がこの局面を激指に検討させたところ、3手とも第一候補手になったとか。数多の熱戦が繰り広げられた羽生-佐藤康の竜王戦の幕開けを飾るにふさわしい一局。
中村太地挑戦者が王座奪取に王手を掛けた第4局千日手指し直し局。中村が鋭く踏み込み、最終盤のねじりあいが30手以上も続く中、最後の最後に訪れたドラマが図。△5七同とに▲6六金は△6四玉と引かれ次の▲6五歩が打ち歩詰め。図の▲5七桂に代えて▲6六歩なら先手勝ち筋とされた。
10代の挑戦者・渡辺明を迎えた王座戦は最終局へ。矢倉戦法のターニングポイントの一つとなった本局は、形勢が二転三転。図から△8七歩成▲同玉△6七歩が決め手となり羽生が防衛を決めた。終盤戦で羽生の手が大きく震え、関係者をざわつかせた。
俊英豊島八段を迎えた王座戦最終局。羽生優勢の時間が長く続くも、豊島挑戦者の強靭な粘りに手を焼く。図から鋭く踏み込んだ羽生は▲9一銀△同玉▲9三歩△8二玉▲9二歩成△同玉▲9四歩というトリッキーな手段で後手玉に迫る。局後に、▲9一銀に代えて▲9三銀が正着だったという結論が出たものの、「善悪を超えた手順」として将棋世界の名局プレイバック年度1位に輝いた。
羽生三冠王と谷川二冠王の頂上対決は2勝2敗1千日手で最終局へ。図から▲8八玉の早逃げが羽生が思い描いた勝ちへの構図の締めくくりだった。以下△7九角▲9八玉△7七龍で部分的には受けなしだが、ここで▲5八飛が王手で入るのでピッタリ羽生勝ち。
NHK杯戦の4連覇という気の遠くなる偉業を成し遂げた羽生だが、本局は2連覇目の準々決勝。相穴熊の将棋だが図では互いに見る影もない状態だ。ここで▲9六金の移動合が鮮烈。以下上部脱出を果たした羽生が押し切った。
石田流からアクロバティックな応酬が繰り返されて、久保がペースを掴んだと思われた図。角取りを放置して△3六歩と突き出した手を見て控室もネットも大騒ぎになった。▲4九金に△3七歩成としても先手玉は詰めろではない。ならば先手に勝ちがありそうというのが常識的な考えだからだ。しかし後手玉も意外と耐久力があり形勢は混沌。最後は羽生が押し切った。
終始山崎がリードした本局。形勢はどう見ても大差だが、羽生は嫌らしいところをついて決め手を与えず、徐々に怪しいムードが高まっていく。図から▲2五桂打で後手玉に詰みがあったが▲4五桂と誤りついに逆転。うなだれる山崎。控室の加藤九段が「羽生さんには、負ける将棋がなくなったということです」と語った。
ルール
ノミネートした20局の中から、みなさんの心を打った対局を選んでください。最大3票まで投票可能です。ノミネート外の対局に投票することも可能です。その場合は、「その他」を選択し、コメント欄にどの対局であるか明記してください。なお、今回は羽生の勝局または引き分け局を対象としました。 ※2/12を持ちまして受付を終了しました。
選べる将棋世界電子版ムックを抽選でプレゼント
投票してくれた方から抽選で3名の方に、過去の将棋世界ムックの電子版からお好きな商品1冊をプレゼントします!ノミネート対局一覧
- 2006年12月15日 第65期A級順位戦 対 藤井猛
- 1996年4月11日・12日 第54期名人戦第1局 対 森内俊之
- 2008年10月18日・19日 第21期竜王戦第1局 対 渡辺明
- 1996年6月3日・4日 第54期名人戦第5局 対 森内俊之
- 1989年1月9日 第38回NHK杯準々決勝 対 加藤一二三
- 2012年10月3日 第60期王座戦第4局 千日手局 対 渡辺明
- 1988年11月4日 第19期新人王戦第2局 対 森内俊之
- 1994年6月6日・7日 第52期名人戦第6局 対 米長邦雄
- 1996年2月13日・14日 第45期王将戦第4局 対 谷川浩司
- 1999年1月27日・28日 第48期王将戦第3局 対 森下卓
- 2014年5月20日・21日 第72期名人戦第4局 対 森内俊之
- 2013年9月9日 第72期A級順位戦 対 三浦弘行
- 1993年10月20日・21日 第6期竜王戦第1局 対 佐藤康光
- 2013年10月8日 第61期王座戦第4局 対 中村太地
- 2003年10月15日 第51期王座戦第5局 対 渡辺明
- 2014年10月23日 第62期王座戦第5局 対 豊島将之
- 1993年3月26日 第18期棋王戦第5局 対 谷川浩司
- 2011年2月20日 第60回NHK杯 対 佐藤康光
- 2010年8月16日 第23期竜王戦挑戦者決定戦第1局 対 久保利明
- 2005年4月19日 第23期朝日オープン第2局 対 山崎隆之
No.1 これぞ羽生マジック!大逆転を生んだ▲2三金
2006年12月15日 A級順位戦 対藤井猛
完封負け濃厚の局面から、無筋の▲2三金。この手を境に流れが少しずつ変わりまさかの大逆転。「羽生マジック」の代表的な対局のひとつ。
No.2 同級生対決 常識外の勝着▲9八角
1996年4月11日・12日 第54期名人戦 第1局 対森内俊之
七冠達成直後の名人戦で実現した同級生対決の第1局。羽生ピンチを思わせる中打たれた受け一方の▲9八角が常識外の名手。直前の△5八飛に代えて、あえて王手飛車のラインに打つ△4八飛が正着だった。
No.3 右玉ルネッサンス 驚愕の大局観
2008年10月18日・19日 第21期竜王戦第1局 対 渡辺明
駒得で玉も堅く攻めている渡辺が優勢と誰もが思う中、図の局面で渡辺の手が止まる。「手がなくて唖然とした」と渡辺。羽生の卓越した大局観が光ったフランス決戦。
No.4 一瞬のスキをついた大逆転防衛
1996年6月3日・4日 第54期名人戦第5局 対 森内俊之
森内大差リードの将棋。決めにいった森内のわずかなスキを突いて接戦に。クライマックスは図。森内も控室も詰めろと信じていた△6九銀が詰めろになっておらず大逆転防衛。
No.5 伝説は▲5二銀から始まった
1989年1月9日 第38回NHK杯準々決勝 対 加藤一二三
歴代名人をなで斬りにしてNHK杯初優勝を決めた羽生の有名すぎる名手▲5二銀。一見手がかりがなさそうな後手玉を一撃で仕留める次の一手のような鮮烈な一手は、米長邦雄永世棋聖の名解説でよりその輝きを増した。
No.6 窮地を脱する中空の△6六銀
2012年10月3日 第60期王座戦第4局 千日手局 対 渡辺明
2手目△3二飛戦法で幕を開けた本局のクライマックスは図。中空に打った△6六銀が詰めろ逃れの詰めろ。▲同歩と取らせることで▲6六桂と打つスペースをなくし、詰めろを解除するという奇跡的な手順に将棋ファンが沸いた。結果は千日手。指し直し局を制した羽生が王座奪還、王座通算20期の偉業を成し遂げた。
No.7 矢倉の歴史を変えた▲9六歩
1988年11月4日 第19期新人王戦第2局 対 森内俊之
ライバル対決の序章となった新人王戦決勝三番勝負。まさに戦いが始まろうとするこのタイミングでじっと手を渡す▲9六歩は、棋士たちを大いに驚かせ、新時代の到来を強く予感させた。
No.8 歩がバックする新手筋で新名人誕生
1994年6月6日・7日 第52期名人戦第6局 対 米長邦雄
羽生が初めて名人戦に登場したシリーズ。3連勝後の2連敗で迎えた本局で、名人獲得を決めた手順が図からの△4六歩▲同銀△4四歩。歩を突き捨ててからその一歩手前に打ち直して手を渡すという気づきにくい手筋で次の△3六歩が受けづらい。
No.9 前人未到の七冠達成
1996年2月13日・14日 第45期王将戦第4局 対 谷川浩司
取材陣が対局室を取り囲む中、主役は38度の熱を出し、虚ろな目でその歴史的瞬間を迎えた。一度は虎の子の王将位を防衛して意地を見せた谷川も、その後すべてのタイトルを防衛して翌年の再戦に臨んだ羽生の勢いになすすべがなかった。図は歴史的投了図。
No.10 羽生の歩はジャンプする
1999年1月27日・28日 第48期王将戦第3局 対 森下卓
5一の歩が頑強で▲5二歩と打ちたいが二歩。そこで羽生は▲5三歩成△同金▲4三歩△同金▲5二歩という手順を編み出す。歩が2マス先にジャンプする魔法のような手順で後手陣を攻略した。
No.11 熱戦を抜け出す一段金
2014年5月20日・21日 第72期名人戦第4局 対 森内俊之
2011年から4期続けて同じカードとなった羽生-森内の名人戦は、3期連続で森内が制する結果に。図の▲4一金が周囲の度肝を抜いた。虎の子の金を一段目に打って玉を上部に逃がす超筋悪の一手だが、この金がよく働いた。4度目の正直で名人復位。
No.12 一瞬の切れ味
2013年9月9日 第72期A級順位戦 対 三浦弘行
飛金の両取りが決まってしばらくは先手が攻勢を取るかと思われた図から、羽生は誰もが思いもよらなかった寄せの構図を描く。△6九銀▲7九金に続き△8六飛!のただ捨て!▲同銀△4七馬と進めた局面は、数少ない攻め駒が先手玉の急所を刺していて、信じがたいことにすでに後手勝ちとなっている。
No.13 達人の間合い
1993年10月20日・21日 第6期竜王戦第1局 対 佐藤康光
図から▲8七歩と打った羽生。続いて△3三金▲8六歩!△5四歩▲8五歩!! にわかには意味を説明できない高等戦術だ。ちなみに最近編集部員がこの局面を激指に検討させたところ、3手とも第一候補手になったとか。数多の熱戦が繰り広げられた羽生-佐藤康の竜王戦の幕開けを飾るにふさわしい一局。
No.14 打ち歩で虎口を逃れる
2013年10月8日 第61期王座戦第4局 対 中村太地
中村太地挑戦者が王座奪取に王手を掛けた第4局千日手指し直し局。中村が鋭く踏み込み、最終盤のねじりあいが30手以上も続く中、最後の最後に訪れたドラマが図。△5七同とに▲6六金は△6四玉と引かれ次の▲6五歩が打ち歩詰め。図の▲5七桂に代えて▲6六歩なら先手勝ち筋とされた。
No.15 羽生の手を震えさせた若き挑戦者
2003年10月15日 第51期王座戦第5局 対 渡辺明
10代の挑戦者・渡辺明を迎えた王座戦は最終局へ。矢倉戦法のターニングポイントの一つとなった本局は、形勢が二転三転。図から△8七歩成▲同玉△6七歩が決め手となり羽生が防衛を決めた。終盤戦で羽生の手が大きく震え、関係者をざわつかせた。
No.16 善悪を超えた手順
2014年10月23日 第62期王座戦第5局 対 豊島将之
俊英豊島八段を迎えた王座戦最終局。羽生優勢の時間が長く続くも、豊島挑戦者の強靭な粘りに手を焼く。図から鋭く踏み込んだ羽生は▲9一銀△同玉▲9三歩△8二玉▲9二歩成△同玉▲9四歩というトリッキーな手段で後手玉に迫る。局後に、▲9一銀に代えて▲9三銀が正着だったという結論が出たものの、「善悪を超えた手順」として将棋世界の名局プレイバック年度1位に輝いた。
No.17 羽生時代の幕開け
1993年3月26日 第18期棋王戦第5局 対 谷川浩司
羽生三冠王と谷川二冠王の頂上対決は2勝2敗1千日手で最終局へ。図から▲8八玉の早逃げが羽生が思い描いた勝ちへの構図の締めくくりだった。以下△7九角▲9八玉△7七龍で部分的には受けなしだが、ここで▲5八飛が王手で入るのでピッタリ羽生勝ち。
No.18 鮮烈な移動合
2011年2月20日 第60回NHK杯 対 佐藤康光
NHK杯戦の4連覇という気の遠くなる偉業を成し遂げた羽生だが、本局は2連覇目の準々決勝。相穴熊の将棋だが図では互いに見る影もない状態だ。ここで▲9六金の移動合が鮮烈。以下上部脱出を果たした羽生が押し切った。
No.19 驚愕の△3六歩
2010年8月16日 第23期竜王戦挑戦者決定戦第1局 対 久保利明
石田流からアクロバティックな応酬が繰り返されて、久保がペースを掴んだと思われた図。角取りを放置して△3六歩と突き出した手を見て控室もネットも大騒ぎになった。▲4九金に△3七歩成としても先手玉は詰めろではない。ならば先手に勝ちがありそうというのが常識的な考えだからだ。しかし後手玉も意外と耐久力があり形勢は混沌。最後は羽生が押し切った。
No.20 負ける将棋がなくなった
2005年4月19日 第23期朝日オープン第2局 対 山崎隆之
終始山崎がリードした本局。形勢はどう見ても大差だが、羽生は嫌らしいところをついて決め手を与えず、徐々に怪しいムードが高まっていく。図から▲2五桂打で後手玉に詰みがあったが▲4五桂と誤りついに逆転。うなだれる山崎。控室の加藤九段が「羽生さんには、負ける将棋がなくなったということです」と語った。
投票フォーム
最後に
いかがでしたか?図面を見ただけで当時の興奮が蘇るような対局がいくつもあったことと思います。
ノミネート対局20局を選出するにあたっては、将棋編集部全員で意見を出し合いましたが、それぞれの意見はまるで噛み合わずまったくまとまる気配もありませんでした。皆それぞれの心に響く羽生将棋があることを痛感しました。
もちろんノミネート外の対局にもこれらに負けず劣らずの熱戦が数多くありますので、ぜひこれ以外の対局からも、思い入れのある将棋を投票していただければ嬉しいです。
編集部員の間で意見が一致したのは、「羽生の敗局にこそ名局が多い」ということ。今回は敗局を対象外としましたが、将棋ファンなら瞬時にいくつも例が思い浮かぶと思います。
それは「羽生さんに勝つのはこれほど大変なことなのか!」ということを、羽生善治の敗局は雄弁に語るからなのでしょう。
将棋情報局では、お得なキャンペーンや新着コンテンツの情報をお届けしています。