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『スタートライン』 中村太地 四段昇段の記~将棋世界2006年5月号より

将棋世界バックナンバーから厳選した記事を掲載する当コーナー。第2回は2006年5月号より中村太地王座の四段昇段記をお送りします。

スタートライン

「中村君ちょっと」

 最終日の二局目を終え、期待と不安まじりの複雑な気持ちを抑えるため、他の三段の感想戦を見ていると、中座幹事に声を掛けられた。その時僕は四段になれたということを知った。信じられない気持ちだった。

 最終日は自分が二連勝して競争相手二人のうちどちらかが二連敗しなければ昇段できないという厳しい状況であった。正月明け序盤で、相手の研究にはまりあっさり負けたり、優勢な将棋を負けたり。そして16回戦では詰みを逃して負けてしまうという悪い流れだったので、自分でも正直(この流れでは昇段は厳しいだろうな)と思っていた。前々期も序盤に9連勝していたのに……。流石に自分自身呆れていた。しかし、16回戦後の自分は絶対に最終日に2連勝するぞという前向きな気持に自然となっていたように思う。

 それからの日々は今までにないくらい将棋のことを考えていたような気がする。そしてついに最終日を迎える。当日はぐっすり眠れて気分良く目覚め、いつも通り連盟に向かった。気負わず指せたのが良かったようで二局とも快勝することができ、そして運よく昇段することができた。

 実は、今期僕はスーツで対局した。このスーツはおじのもので、僕のことを一番応援してくれていたのだが、去年亡くなってしまった。おじさんが最後に助けてくれたような、そんな気がしてならない。

 最後になりますが、僕のことを気にかけてくださっていた師匠、明るく応援してくれた両親、親身になって応援してくださったたくさんの方々にお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

 これでようやくスタートラインに立つことができました。今後はより一層精進して上を目指していきます。これからもどうぞ宜しくお願い致します。

【最終局の投了図 ▲3四桂まで】
~記事内プロフィール~

四段 中村太地

昭和63年6月1日生まれの17歳。東京都出身。平成12年、6級で奨励会入会。米長邦雄永世棋聖門下。得意戦法は振り飛車。趣味はサッカー、水泳。第25回小学生名人戦準優勝。

日本将棋連盟HP内
第38回奨励会三段リーグ戦 2005年10月~2006年3月


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著者

将棋世界編集部(著者)