2017.12.18
伊藤果八段の詰将棋手直し塾 第3回 ~野々村さんの場合~
伊藤果八段があなたの詰将棋を本気で手直し!
題して、「伊藤果八段の詰将棋手直し塾」。
詰将棋作家として知られ、「果し状」をはじめ数多くの作品集を世に出している伊藤果八段が、皆さんからいただいた詰将棋を本気で手直しいたします。
今回は第3回です。第3回にしてなんと最終回です(!)。それでは、どうぞお楽しみください。
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島田「伊藤先生、詰将棋手直し塾も第3回を迎えました。調子が出てきたところでしたがなんと今回が最終回ということで、気合を入れていきたいと思います!どうぞよろしくお願いいたします」
伊藤「はい。こちらこそ、よろしくお願いいたします」
島田「今回は野々村さんからご応募いただいた作品を題材にしたいと思います。野々村さんは『誰でも知っている古図式の逆算』というテーマで2つの作品をお送りいただきました」
作品1
※作意は▲4四桂△同馬▲2二飛成△同玉▲2三銀打△1三玉▲1二銀成△同玉▲2三金までの9手詰
作品2
※作意は▲4四桂△同馬▲1四角△同飛▲2二飛成△同玉▲2三銀打△1三玉▲1二銀成△同玉▲2三金までの11手詰
伊藤「収束は有名な手順です。そこから逆算してみたということですが、11手詰の方はさすがに駒配置が広がりすぎていていけません。20手とか30手の中編ならわかりますが11手詰ですからね。今回は9手詰の方を題材にさせていただきましょう」
島田「はい、ガッテン承知しました」
伊藤「さて9手詰の方です。野々村さんは詰パラに何度も入選されているということで、もちろん詰将棋の基本はできています。初手▲4三銀と打って△同馬に▲2三飛成も危ないんですが・・・」
島田「おおっ。確かに危ないです。危ないどころか詰んでませんか?大丈夫ですか?」
伊藤「ええ。▲2三飛成に△3一玉が好手で▲2二金△4一玉▲4三龍△5一玉(下図)で逃れています。ここで6二の歩がなければ詰みなんですが」
島田「なるほど。それでここにあるんですね。やっとこの歩の意味がわかりました」
伊藤「最初に戻って初手▲4四桂で馬を動かして▲2二飛成と捨てるのは確かに気持ちいい手順です。ただ、この作品の難点はなんといっても3三の馬が重すぎることです。めちゃくちゃ重いです」
島田「重い?重いんですか? このわたくしめにも分かるように説明してください、先生」
伊藤「う~ん、どう言ったらいいんでしょうか。銀や角ならまだ軽いんですが、玉の頭にとても強い駒である馬がいて、それが取られる形になっているというのがいかにも・・・」
島田「ゴテゴテしている?」
伊藤「そうですね、それが重いという印象になります」
島田「なるほど、言われてみると私も重いような気がしてきました(気持ちの問題)」
伊藤「この作品では3手目の▲2二飛成が主眼の一手だと思うのですが、それをやりたいがために馬を置くのは少しやり過ぎという感じがします。そこで私はこんな風に変えてみました」
島田「どう変えたんですか?教えてください!」
(マグネット盤に駒を並べ始める伊藤先生)
伊藤「できました」
島田「おー。見事に馬が消えましたね(笑)。だいぶ変わってますけどこれで元の作品と同じような手順になるんですか?」
伊藤「最初から見ていきましょう。初手は▲2五桂です。引くのはバラバラにして上から抑えれば早いので、△同金の一手ですが、そこで▲2二銀と捨てます」
島田「おおっ!」
伊藤「△同玉▲2五龍に△3一玉と落ちるのが最善の応手ですが、そこで▲2二龍と捨てます」
島田「おおおっ!!逃げたところに龍の押し売りとは」
伊藤「以下は△同玉に▲2三銀で、同じ収束手順に合流します」
島田「なるほど。これは先生も野々村さんと同じテーマで逆算式の作品を作ってみた、ということですね」
伊藤「はい。こういうやり方もある、という一つの案です」
島田「今回の手直しのポイントはどの辺りですか?」
伊藤「まずは重かった馬をなくしたこと。もう一つは、元の作品では2四に元からいた飛車を▲2二飛成と捨てましたが、改作図では4五にいた龍を▲2五龍と金を取りながら移動し、さらにその龍を▲2二龍と捨てています」
島田「これまでにも何度も出てきた『2度使い』ですね」
伊藤「その通りです。龍を捨てる前にワンクッション入れてみました」
島田「同じ収束でもいろんな助走があるんですね。さすが伊藤先生、今回も見事な手直し、ありがとうございました」
伊藤「いえいえ、こちらこそありがとうございました」
島田「・・・3回やらせていただいた手直し塾も今回でいったん終了ですが、先生やってみていかがでしたか?」
伊藤「そうですね、島田さんもおっしゃってましたが、詰将棋を初めて作ったような方にも応募してほしかったですね。毎回レベルの高い作品ばかりで私も大変でした(笑)」
島田「もし次回があれば、ぜひそういう方にも応募していただきましょう。先生、どうもありがとうございました。とても楽しかったですし、勉強になりました」
伊藤「私も楽しかったです。また機会があればぜひお願いします」
島田「こちらこそよろしくお願いします!」
【今回の手直し】
<元の作品>
<手直しした作品>
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以上で第3回「伊藤果八段の詰将棋手直し塾」はおしまいです。
皆さまのリクエストがあれば、神出鬼没でやってみたいと思います。
もしくは、伊藤先生の問題集の新刊が出るときには、またやらせていただくかもしれません。
これまで読んでいただいた皆さま、誠にありがとうございました。
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