2017.12.05
伊藤果八段の詰将棋手直し塾 第2回 ~しまる職安さんの場合~
伊藤果八段があなたの詰将棋を本気で手直し!
題して、「伊藤果八段の詰将棋手直し塾」。
詰将棋作家として知られ、「果し状」をはじめ数多くの作品集を世に出している伊藤果八段が、皆さんからいただいた詰将棋を本気で手直しいたします。
今回は第2回です。それでは、どうぞお楽しみください。
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島田「伊藤先生、2回目の詰将棋手直し塾の時間がやって参りました。今回もどうぞよろしくお願いいたします」
伊藤「はい。こちらこそ、よろしくお願いいたします」
島田「今回は『しまる職安』さんからご応募いただいた作品を題材にしたいと思います。(といって、喫茶店でマグネット盤に駒を並べ始める。・・・できました!」
伊藤「作意は▲1二香成△同玉▲1三飛△2一玉▲1一飛成△3二玉▲4二角成△同玉▲3一龍△4三玉▲5五桂△同金▲4四角成△同玉▲3四龍までの15手詰ですね」
島田「・・・先生、今回も正直に言わせていただいてよろしいでしょうか?」
伊藤「はいどうぞ」
島田「今回も悲しいくらいうまくないですか? 初手▲1一香成と取れるんですが、それだと△3二玉で詰まないんですね。あえて▲1二香成とすることで今度△3二玉には▲4二飛△2三玉▲1三成香と引けると」
※「杏」は成香です
伊藤「そういうことですね」
島田「いやいやいや、先生!もっと感心していいところですよ、ここは。しかも収束も桂捨てからの角捨てからの飛車成りで最後は攻め駒2枚、ぴったり決まってます。前回以上に非の打ち所がない様に見えるんですけど、本当に手直しできるんでしょうか?」
伊藤「確かに今回の作品も詰将棋の基本ができています。収束もきれいに決まっていますね。ただ、初手の▲1二香成なんですが、これは1一桂がない状態で指したい手なんです。実戦ではもちろん▲1一香成から考えるのが自然なんですが、詰将棋の場合初手から駒を取ることはほとんどありませんから」
島田「むむっ。なるほど、詰将棋に慣れた方にとっては、この配置だとむしろ▲1二香成が見え透いた感じになってしまうと」
伊藤「ええ、さっきも言ったとおり、1一桂がなければ良い手になるんですけどね」
島田「確かに投稿者のしまる職安さんご本人も『1一桂は残念な配置、持ち駒にしたい』とおっしゃっています」
伊藤「と、いうことで今回私はこんな風に手直ししてみました」
島田「いったいどう手直しされたか、気になります(ドキドキ)」
(マグネット盤に駒を並べ始める伊藤先生)
伊藤「・・・できました」
島田「・・・確かに1一桂はなくなりましたけど、その他もいろいろ変わってます。前回もそうでしたけど、元の作品が跡形もなく消え去っているように見えますが大丈夫なんでしょうか?」
伊藤「順に説明していきましょう。まず初手は▲1二角と打ちます。元の作品では▲1二香成△同玉に▲1三飛(下図)としていましたが、これは少し重い感じです」
島田「角、角、飛車、となってますからね。確かに重量級です」
伊藤「ええ、しかも2四銀が▲1三角成を防いでいるだけの駒ですから、あまり働きがありません。今回の手直しに当たって、まずこの辺りをスッキリさせたかった、ということがあります」
島田「なるほど、確かにスッキリしてます」
伊藤「初手▲1二角に△3一玉は▲2一飛までですから△2二玉と逃げます。▲2一飛△3三玉と進んで、あとは島田さん、詰ましてみてください」
島田「えっ!いきなりのムチャ振り!?聞いてませんよー。(といって考え始める私)う~ん・・・、私の経験とカンからすると、こういうのは大体▲3二桂成です」
※「圭」は成桂です
伊藤「おっ、素晴らしい、正解です。△同角は▲2四飛成で詰みですから△同玉の一手ですね」
島田「あっ、確かにそうです(読んでなかった)。でもここまで進めば分かりました!元の作品の収束と同じですね。▲3三歩△同玉に▲4五桂と打って・・・」
伊藤「ん?なにが同じなんですか?(と、言いながら▲4五桂に△3二玉)」
島田「あれ!?詰まなくなっちゃいました。先生、どうしたらいいんですか!泣きそうです」
伊藤「泣かないでください。▲4五桂の前に▲2四飛成と一回成ればいいんです」
島田「おおっ!!△3二玉に▲2一龍△3三玉、そこで▲4五桂と打てば!」
伊藤「そうです。今度は△3二玉とできませんから△同金▲3四角成△同玉▲2四龍までの詰みとなります」
島田「詰みました!パチパチパチ~」
伊藤「最後は元の作品と同じ収束手順です。手直しのポイントとしては、前半の香成りや飛車打ち、駒取りなどは省いてしまって、主題をはっきり見せた、ということです」
島田「なるほど」
伊藤「元から収束はキッチリ決まってましたからね。また、主題をクローズアップしたことで全体の配置もコンパクトにまとまりました」
島田「元の作品で5筋にいた3枚の駒が4筋に移動してます。5×5から4×5になりました」
伊藤「あと、これは前回と同じですが、駒を打ってから使う『2度使い』ですね。元の作品では角が最初から盤上に配置してありましたが、改作図では初手に▲1二角と打って、その角を最後に成り捨てる、というように活用しています」
島田「確かにそうなってます。詰将棋に慣れてくると、そういうところに目が行くようになるんですね(レベルが上がった。島田は『2度使い』を覚えた)」
伊藤「途中もすぐに▲4五桂とすると詰まないので、打った飛車を一度▲2四飛成と活用しました」
島田「『2度使い』ですね!(早速使っていくぅ)」
伊藤「その通りです」
島田「最初に作品を見たときはどうやって手直しするんだろうと思いましたが、さすが先生、今回もプロの技を見せていただきました」
伊藤「いえいえ」
島田「それでは第2回はこの辺で終了といたしましょう。先生、今回もどうもありがとうございました!」
伊藤「こちらこそありがとうございました」
【今回の手直し】
<元の作品>
<手直しした作品>
(第3回に続く)
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以上で第2回「伊藤果八段の詰将棋手直し塾」はおしまいです。
いつかある第3回をお楽しみに!
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