将棋情報局

伊藤果八段の詰将棋手直し塾

伊藤果八段の詰将棋手直し塾 第1回 ~渡部さんの場合~

伊藤果八段があなたの詰将棋を本気で手直し!

藤井聡太四段の活躍により注目が集まっている詰将棋。
この機会に詰将棋を解いてみよう、という方は多いと思いますが、この機会に詰将棋を作ってみようという方は少ないと思います。でもそんな「詰将棋作ってみたい、でもうまくできない」という方を全力で応援するのがこの企画。

題して、「伊藤果八段の詰将棋手直し塾」。

詰将棋作家として知られ、「果し状」をはじめ数多くの作品集を世に出している伊藤果八段が、皆さんからいただいた詰将棋を本気で手直しいたします。

今回はその記念すべき第1回です。それでは、どうぞお楽しみください。


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島田「伊藤先生、ついに始まりました! 詰将棋手直し塾。本日はどうぞよろしくお願いいたします」

伊藤「こちらこそ、よろしくお願いいたします」

島田「では早速参りましょう。今回題材にさせていただくのは、みなさんからご応募いただいた詰将棋の一つ、渡部さんの作品です。先生には事前に見ていただいていますが、改めて並べてみます(といって喫茶店でマグネット盤を広げて駒を並べ始める)。・・・できました!」

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渡部さんの作品

伊藤「作意は▲1三桂△同香▲2二銀△同玉▲3三金(途中図)△1一玉▲2二銀△1二玉▲2三金△同玉▲3三角成△1四玉▲1五歩(解答図)までの13手詰ですね」

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途中図

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解答図

島田「・・・先生、正直いっていいですか?」

伊藤「はいどうぞ」

島田「めちゃくちゃうまくないですか? コレ。私はもっと『初めて詰将棋作りました』的な、私よりな作品が来るんじゃないかと密かに期待してたんですが、立派に詰将棋ができてらっしゃる。▲2三金と捨てる手なんか、詰将棋問題集に出てきてもおかしくないですよ。先生、この作品をいったいどう手直しするというんですか」

伊藤「確かに捨て駒も入っていますし、詰将棋の基本はしっかりと押さえられています。悪くない作品だと思いました。ただ、難点を挙げるとすれば手順が少し地味なこと。駒配置は4×6マスに広がっていますが、実際に駒が動くのはほとんど3×3の枠内に収まっていますからね」

島田「むむっ。なるほど、言われてみれば確かにそうです」

伊藤「この作品をもとに、私なりに手直ししてみました。どういう考えで手直ししていったか、説明しながらやると長くなるので、まずは手直ししたものを見てください」

島田「ぜひ見せてください、お願いします!」

(マグネット盤に駒を並べ始める伊藤先生)

伊藤「できました」

201711301727_1.jpg

島田「・・・だいぶ変わりましたね。と、いうか、元の作品が跡形もなく消え去っているようにみえるのは私だけでしょうか」

伊藤「初手は▲4二角と打ちます」

島田「おお!いきなりタダのところに!」

伊藤「△同玉は▲4三龍で簡単です。△2二玉は▲2四龍~▲3三角成があります。よって△2一玉と逃げるよりありません。そこで金を捨てたりすると足りないので、▲2四龍と回るのがポイントです」

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島田「まさか、これは・・・」

伊藤「桂や香を合駒するのは▲3二金から▲3三角成、金合は▲同龍で早く詰みます。正解は△2二銀合です」

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島田「出ました!伊藤先生お得意の合駒問題ですね」

伊藤「△2二銀に▲同龍と取って▲3三金と打てば・・・」

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島田「あっ!」

伊藤「はい、後は元の作品の収束手順に合流して詰みます(下図)。収束に入るまでの助走部分を変えた、ということです」

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島田「なるほど~。理解しました。手直しのポイントはどの辺りでしょうか?」

伊藤「一つには、▲2二銀と頭に捨てるのを△2二銀と合駒させて、それを龍で取るという駒を大きく使う手順に変えたこと。これによって地味だった手順がダイナミックになりましたし、玉方の応手の幅も広がりました。また、持ち駒も減りました」

島田「確かに初手▲4二角や龍切りで手順が派手になりました。持ち駒も元の図の4枚から2枚に減って全体的にスッキリしてますね。投稿者の渡部さん自身、自分の作品の修正したいポイントとして4一の歩をなくしたい、ということを書いていましたからそれも解決できました」

伊藤「あと、これは感覚的な問題ですが、元の図では角は最初から4二の地点に置いてありました。しかしこういう角は打ってから使いたい、という気持ちがあります。最初から盤上にいる角を▲3三角成とするよりも、初手で打った角をあとで▲3三角成と活用するほうが駒がいきいきと働いている感じがしませんか?」

島田「全く気が付きませんでしたが、そう言われるとそんな気がします。確かに打ってから使ったほうが『1粒で2度おいしい』感がありますね。立体的?複雑化?なんというか分かりませんが、つまりそういうことですよね?(アバウト)」

伊藤「まぁ大体そういうことです。詰将棋を作るときは少しでも多く欲を持ったほうが良い、ということですね」

島田「なるほど、欲深い方のほうが詰将棋作家に向いているんですかね(笑)」

伊藤「そうかもしれません(笑)」

島田「私も詰将棋作家を目指して、まずは欲深く生きるところから始めてみます(方向違い)。伊藤先生、本日はありがとうございました!」

伊藤「こちらこそありがとうございました」


【今回の手直し】

<元の作品>
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<手直しした作品>
201711301727_6.jpg

(第2回に続く)
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以上で第1回「伊藤果八段の詰将棋手直し塾」はおしまいです。

いつかある第2回をお楽しみに!


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著者

伊藤果(著者)