2017.05.23
新刊案内「横歩取り名局集」 ~鮮やかすぎる中原先生の手作り、羽生六冠を翻弄~
ここでは6月23日発売の新刊「将棋戦型別名局集6 横歩取り名局集」を紹介します。
お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中
こんにちは。為せば成る、為さねば成らぬ、編集部島田です。
今日も夏の暑い日にピッタリのHOTな新刊案内いきます。
紹介するのは6月23日発売の新刊「将棋戦型別名局集6 横歩取り名局集」です。
古今の将棋の名局を戦型別にまとめ、解説付きで収録する「将棋戦型別名局集シリーズ」の第6弾となります。今回のテーマである横歩取りも歴史が古く、名局ぞろいの戦型です。
古くは江戸時代、大橋柳雪から現代の最先端佐藤天彦まで収録しています。また、羽生七冠達成の一局や渡辺明新竜王誕生の一局も横歩取りで、もちろん本書で取り上げています。
今回、この本の監修をしていただいたのが中原誠先生。お忙しい中内容のチェックなどしていただきました。ありがとうございました。
中原先生と言えば横歩取りの大家。棋士人生の前半は矢倉を主戦場にされていましたが、後半は大駒や桂馬が飛び交う空中戦法を得意とされていました。
言わずと知れた「中原囲い」を横歩取りに持ち込んだのも中原先生です。
今日は先生ご自身が本書に収録された100局の中でも特に思い出深いと語っていらっしゃった第45期王将戦挑戦者決定リーグ戦、羽生善治六冠との対局を紹介したいと思います。
第45期王将戦と言われてピーンとくる方は将棋通。
そうです。羽生先生が七冠達成を成し遂げた、まさにその期です。と、いうことは当時の羽生先生と言えば無敵時代。六冠を保持しており、名人、棋聖、王位、王座、竜王を全て防衛。本局のあとに棋王も防衛。残るは王将のみ、という状態でした。
王将リーグもここまで4戦全勝。七冠まっしぐら、という感じですが、ここに現れたのが中原誠永世十段。3勝1敗の2位で羽生先生を追っていました。つまり、本局はリーグ1位と2位の大一番。ここで中原先生が自画自賛する生涯の会心譜が生まれました。
将棋はこんな感じに進みます。
△5四飛と回り、両方の桂を跳ねるのが中原流。5七の地点への集中砲火を狙ったものですが、こんな単純な発想でいいんでしょうか?常人にはまねできない指し方です。
と、いうか、この図から次の手が一手もわかりません。5七の地点はガッチリ守られてますし、中原囲い!とばかりに△6二銀は▲8二角と打たれます。
しかしかかし!!ここから中原先生の芸術的な手作りが始まるのです。
まず、△9五歩!
えっ!?いきなりそこ!?
以下、▲同歩△6二銀▲8二角と進みます。
端歩を突いてから△6二銀上がってみたよ、と。
って、▲8二角と打たれてあっさり駒損確定しましたけど・・・。
いいんでしょうか??
いいんです!!
これでいいんです!!!
角の働きが悪いこの瞬間がチャンスです。まずは△2八歩!
▲同金は△9八歩~△8九角で香を入手しての△2五香があります。
と、いうわけで△2八歩に対して羽生先生は仕方なく▲同飛。飛車の横利きが消えたので、そこで△7五歩と突きます。以下▲2六飛に△9八歩▲同香△7四飛。
▲2六飛の受けにいったん△9八歩▲同香を利かしたのがミソ。むしろ辛子酢味噌。図では▲7五歩△同飛▲7六歩で受かってるじゃん、と思いますが、そこで△2五飛!とぶつける手があります。
飛車交換になると香を上がらせた効果で△9九飛が詰めろ香取りになります。うまいです。ホタルイカの酢味噌和えくらいうまいです。
と、いうわけで羽生先生は△7四飛に対して▲7五歩△同飛▲9一角成と香を取りました。が、後手は当然△7六歩。
数手前まで「どうやって手作るねん!」と思われたところから流れるような手順。ここから▲7九香△7七歩成▲同金△8八角で手が続きます。こうなると心強いのが中原囲い。自玉は相当寄らない格好なので攻めに専念できます。
進んで下図の局面。
一見△9六飛が味よく見えます。私の目算では100人中97人はそう指すはず。しかしその手は▲7四桂の反撃手段を与えて良くないのです。
ここで△7一飛!!が決め手。
あちょーーーー!!!
彼我の玉の堅さが大差なので、大駒を手にするのがいいんですね。▲9二龍とかわしても馬を取って△4九角があります。実戦は飛車交換のあと後手が△9九飛と設置して寄り形となりました。
最後の一手も華麗なので紹介しておきます。
図は投了一手前の局面。一見どこに何を打てばいいのか迷うところです(私は迷いました)。
ここで△5八金!!が名局を締めくくるにふさわしい鮮やかな決め手。
まで、96手で中原永世十段の勝ち。
・・・かっこいい。かっこよすぎる中原先生。
中原先生は本書のまえがきでもこの将棋に触れていますので見てみましょう。
====================
私自身もこの戦法のおかげで名人防衛を果たせたことが何度かあった。中原囲いと呼ばれる形は以前からあったものだが、それを横歩取りと組み合わせたのが私の工夫である。
特に本書第49局に収録されている羽生さんとの王将リーグの将棋は非常にうまく指せた一局。羽生さんを翻弄するような指し回しで、私の会心譜だ。
(まえがきより一部抜粋)
====================
ブログではポイントしか紹介できませんでしたが、本局は初手から通して並べたほうがいいです(当たり前ですが)。
横歩取り名局集にはこういった名局が100局収録されています。
いずれも将棋史に残る熱戦ばかりです。
ぜひ手にとって読んでいただき、横歩取りの世界を堪能してください。
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今日も夏の暑い日にピッタリのHOTな新刊案内いきます。
紹介するのは6月23日発売の新刊「将棋戦型別名局集6 横歩取り名局集」です。
古今の将棋の名局を戦型別にまとめ、解説付きで収録する「将棋戦型別名局集シリーズ」の第6弾となります。今回のテーマである横歩取りも歴史が古く、名局ぞろいの戦型です。
古くは江戸時代、大橋柳雪から現代の最先端佐藤天彦まで収録しています。また、羽生七冠達成の一局や渡辺明新竜王誕生の一局も横歩取りで、もちろん本書で取り上げています。
今回、この本の監修をしていただいたのが中原誠先生。お忙しい中内容のチェックなどしていただきました。ありがとうございました。
中原先生と言えば横歩取りの大家。棋士人生の前半は矢倉を主戦場にされていましたが、後半は大駒や桂馬が飛び交う空中戦法を得意とされていました。
言わずと知れた「中原囲い」を横歩取りに持ち込んだのも中原先生です。
今日は先生ご自身が本書に収録された100局の中でも特に思い出深いと語っていらっしゃった第45期王将戦挑戦者決定リーグ戦、羽生善治六冠との対局を紹介したいと思います。
第45期王将戦と言われてピーンとくる方は将棋通。
そうです。羽生先生が七冠達成を成し遂げた、まさにその期です。と、いうことは当時の羽生先生と言えば無敵時代。六冠を保持しており、名人、棋聖、王位、王座、竜王を全て防衛。本局のあとに棋王も防衛。残るは王将のみ、という状態でした。
王将リーグもここまで4戦全勝。七冠まっしぐら、という感じですが、ここに現れたのが中原誠永世十段。3勝1敗の2位で羽生先生を追っていました。つまり、本局はリーグ1位と2位の大一番。ここで中原先生が自画自賛する生涯の会心譜が生まれました。
将棋はこんな感じに進みます。
△5四飛と回り、両方の桂を跳ねるのが中原流。5七の地点への集中砲火を狙ったものですが、こんな単純な発想でいいんでしょうか?常人にはまねできない指し方です。
と、いうか、この図から次の手が一手もわかりません。5七の地点はガッチリ守られてますし、中原囲い!とばかりに△6二銀は▲8二角と打たれます。
しかしかかし!!ここから中原先生の芸術的な手作りが始まるのです。
まず、△9五歩!
えっ!?いきなりそこ!?
以下、▲同歩△6二銀▲8二角と進みます。
端歩を突いてから△6二銀上がってみたよ、と。
って、▲8二角と打たれてあっさり駒損確定しましたけど・・・。
いいんでしょうか??
いいんです!!
これでいいんです!!!
角の働きが悪いこの瞬間がチャンスです。まずは△2八歩!
▲同金は△9八歩~△8九角で香を入手しての△2五香があります。
と、いうわけで△2八歩に対して羽生先生は仕方なく▲同飛。飛車の横利きが消えたので、そこで△7五歩と突きます。以下▲2六飛に△9八歩▲同香△7四飛。
▲2六飛の受けにいったん△9八歩▲同香を利かしたのがミソ。むしろ辛子酢味噌。図では▲7五歩△同飛▲7六歩で受かってるじゃん、と思いますが、そこで△2五飛!とぶつける手があります。
飛車交換になると香を上がらせた効果で△9九飛が詰めろ香取りになります。うまいです。ホタルイカの酢味噌和えくらいうまいです。
と、いうわけで羽生先生は△7四飛に対して▲7五歩△同飛▲9一角成と香を取りました。が、後手は当然△7六歩。
数手前まで「どうやって手作るねん!」と思われたところから流れるような手順。ここから▲7九香△7七歩成▲同金△8八角で手が続きます。こうなると心強いのが中原囲い。自玉は相当寄らない格好なので攻めに専念できます。
進んで下図の局面。
一見△9六飛が味よく見えます。私の目算では100人中97人はそう指すはず。しかしその手は▲7四桂の反撃手段を与えて良くないのです。
ここで△7一飛!!が決め手。
あちょーーーー!!!
彼我の玉の堅さが大差なので、大駒を手にするのがいいんですね。▲9二龍とかわしても馬を取って△4九角があります。実戦は飛車交換のあと後手が△9九飛と設置して寄り形となりました。
最後の一手も華麗なので紹介しておきます。
図は投了一手前の局面。一見どこに何を打てばいいのか迷うところです(私は迷いました)。
ここで△5八金!!が名局を締めくくるにふさわしい鮮やかな決め手。
まで、96手で中原永世十段の勝ち。
・・・かっこいい。かっこよすぎる中原先生。
中原先生は本書のまえがきでもこの将棋に触れていますので見てみましょう。
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私自身もこの戦法のおかげで名人防衛を果たせたことが何度かあった。中原囲いと呼ばれる形は以前からあったものだが、それを横歩取りと組み合わせたのが私の工夫である。
特に本書第49局に収録されている羽生さんとの王将リーグの将棋は非常にうまく指せた一局。羽生さんを翻弄するような指し回しで、私の会心譜だ。
(まえがきより一部抜粋)
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ブログではポイントしか紹介できませんでしたが、本局は初手から通して並べたほうがいいです(当たり前ですが)。
横歩取り名局集にはこういった名局が100局収録されています。
いずれも将棋史に残る熱戦ばかりです。
ぜひ手にとって読んでいただき、横歩取りの世界を堪能してください。
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