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【藤井聡太自戦記を先行公開】藤井聡太四段 炎の七番勝負

インターネットテレビ局『AbemaTV』の特別企画『藤井聡太四段炎の七番勝負』全局の放送が終了。藤井四段が、大方の予想をはるかに超越する6勝1敗の好成績を残した。
とりを飾った羽生善治三冠との第7局は角換わりの最新型で堂々と挑み、見事な勝利で有終の美を飾った。
ここでは、藤井四段の自戦記で振り返ってもらう。

『幸運な勝利』

【自戦記】四段 藤井聡太

「炎の七番勝負」では、5勝1敗という好結果で第7局を迎えることができた。気負わず自然体で指せたことが、この結果につながったのではないかと思う。
最終局の相手は羽生善治三冠。自分の生まれるずっと前から将棋界のトップだった相手と盤を挟んで戦える、夢のような機会だ。羽生三冠の将棋はいままで何百局も見ているので、あらためて棋譜を並べるということはしなかった。廻しに手が届かず負けることがないよう、積極的に指そうと思って臨んだ。

AbemaTV企画
「藤井聡太四段炎の七番勝負」第7局
 平成29年4月23日
 於・渋谷区「シャトーアメーバ」
 持ち時間    ▲四段 藤井聡太
 各2時間    △三冠 羽生善治
※チェスクロック使用
▲7六歩△8四歩 ▲2六歩△3二金
▲7八金△8五歩 ▲7七角△3四歩
▲8八銀△7七角成▲同 銀△4二銀
▲3八銀△7二銀 ▲3六歩△6四歩
▲6八玉△6三銀 ▲4六歩△5二金
▲3七桂△4一玉 (第1図)

角換わりに

振り駒の結果先手番となり、序盤は角換わりに進んだ。今回の企画は全局振り駒だったが、先手を6回も引けたことはツキがあったかもしれない。
穏やかな駒組みに見えるが、△4一玉は妥協のない一着。というのも、先手に▲2五歩~▲4五桂の仕掛けを与えることになるからだ。後手からすると嫌な筋のように思うが、先手も跳ねた桂を△4四歩~△4五歩で取り切られてしまうと途端に悪くなってしまうので、怖いところもある。仕掛けるか否か、こちらとしても決断を迫られることとなった。
【第1図は△4一玉まで】
 第1図以下の指し手
▲1六歩△1四歩 ▲2五歩△3三銀
▲4五桂△2二銀 ▲2四歩△同 歩
▲同 飛△4二角 ▲3四飛△2三銀
▲3五飛(第2図)

戦いが始まる

▲2五歩からの仕掛けは、昨年の竜王戦第1局など数局の実戦例がある。竜王戦では後手の渡辺竜王が完勝したが、仕掛け自体は先手が面白いのではないかと思っていた。「積極的に」という方針通り、すぐに決行しようかと思ったが、その前に▲1六歩と端歩を突くことにした。様子を見た意味もあるが、端を突き合えば攻め筋が広がるので、先手にとって損のない交換だ。
羽生三冠は△1四歩と、ここでもいちばん強い手で対応してきた。こうなったらこちらも引くことはできない。▲4五桂と跳ねて、一気に中盤戦となった。
▲4五桂に△4二銀は、▲2四歩△同歩▲同飛△2二歩に、▲1五歩△同歩▲1三歩(A図)と攻めて先手ペース。仕掛ける前に端の突き合いを入れたのは、この変化に備えた意味がある。
【A図は▲1三歩まで】
△2三銀に対して、竜王戦と同様に▲3二飛成と切り込むと、△同玉▲2二歩△同玉▲4一金と進んだとき、今度は端の突き合いが後手に味方している。本譜は▲3五飛と引いて第2図。後手にとっては手の広い局面だ。
【第2図は▲3五飛まで】
 第2図以下の指し手
△4四歩▲7一角 △7二飛▲5三桂成
△同 金▲同角成 △同 角▲8五飛
△8二歩▲2五飛 △4三角▲2九飛
△3三金(第3図)

最強の一手

羽生三冠の指し手は△4四歩。桂取りで攻めを催促する、最も強い一手だ。
▲7一角に対しては△8四飛と縦に逃げるのも有力で、以下▲5三桂成△同金▲6六銀でどうか。先手は次に▲7七桂~▲8五飛と飛車をぶつける狙いがあるので、後手を持ってまとめるのは大変かもしれない。
△7二飛と寄れば、▲2五飛までは一直線。前述の竜王戦第1局の感想戦でも触れられていた手順だ。この局面で、後手は桂得だが歩切れ。先手からは、次に▲4三金や▲2四歩があり、後手がまとめるのは大変ではないかと思っていた。しかし、羽生三冠の△4三角が好手。飛車に当てつつ4三の地点を埋めて、▲2九飛に△3三金と▲2四歩の筋も消されると、先手が攻め続けるのも容易ではない。
なお、△4三角で△6一角と当たりを避けて遠くから打つのは、▲5五飛△4三金▲5三飛成△同金▲7一金(B図)で先手の攻めが決まってしまう。△4三角は▲5五飛に△5四銀を用意した意味もあるのだ。本譜は激しい攻防から一転、再び駒組みが始まることとなった。
【B図は▲7一金まで】

【第3図は△3三金まで】
 

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