ダイレクト向かい飛車ってどんな戦法?基本的な狙い筋や駒組みのポイントを詳しく紹介!|将棋情報局

将棋情報局

ダイレクト向かい飛車ってどんな戦法?基本的な狙い筋や駒組みのポイントを詳しく紹介!

プロ間でも現れることがあるダイレクト向かい飛車とは、いったいどんな戦法なのでしょうか。
今回は、ダイレクト向かい飛車の特徴とメリット・駒組みのポイントを詳しく紹介します。

お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中 皆さんこんにちは。

本記事では、「ダイレクト向かい飛車」の基本的な指し方をご紹介します。
詳しくは、2024年3月25日発売の『ダイレクト向かい飛車こそが合理的な戦法である』(横山友紀)にも載っていますので、チェックしてみてくださいね。

※本稿は、横山友紀著『ダイレクト向かい飛車こそが合理的な戦法である』の内容をもとに編集部が再構成したものです。
 

ダイレクト向かい飛車の特徴

ダイレクト向かい飛車の旅は▲7六歩に△3四歩と角道を開けるところから始まります!
3手目▲2六歩(第1図)はプロの間で最も人気な指し方です。

次に▲2五歩~▲2四歩と突けばいきなり飛車を活用できますし、自然であることは間違いありません。
しかし、本書ではこのありふれた手を論理的にとがめていきます。
それも難しい手段を用いることはなく、シンプルな駒組みで崩していきます。

自分から角交換

序盤戦において最も意識したい格言は、「玉飛接近すべからず」でしょう。
第2図、△8八角成はその考えに従った素晴らしい一手です!

当然▲同銀と取りますが、これによって先手玉は左辺へ逃亡できなくなります。

そして将来、部分図のように玉を配置するとどうでしょう。

先手は後手と比べて玉が右辺から一路近いことに気づきます。
私たちはこれをもとに右辺から攻撃を仕掛け、1手早く玉を追い詰めることを試みます。

銀を活用して攻めの形を作る

金より先に銀を展開する理由は、攻めの形を作るためです。
銀は柔軟性に優れた駒で、攻撃の目途が立たない際にも引いて立て直すことができます。

佐藤康光を彷彿とさせる△2二飛(基本図)は誰しも憧れる一手でしょう!

これによって後手は▲2五歩~▲2四歩を防ぎ、最大の武器である△3三銀を活用することができます。

飛車を2筋に振ってからの方針

ここからの方針はとてもシンプルで、下記の2つの狙いを実現させることで主導権を握ります。 変化図を用いながら解説します。
・素早く美濃囲いに組む
・左銀を活用する
変化図①素早く美濃囲いに組む

先手の囲いと比べると一路玉の位置が遠く、囲うだけで利益を確保することができます。

変化図②左銀を活用する

囲い終わった後は具体的な左銀の活用を考えます。
もし可能ならば△2四歩から飛車先を逆襲し、それが叶わないのであれば△4四銀~△5五銀~△6六銀として先手玉への接近を狙います。
また△4四銀~△3五銀として先手の飛車を圧迫することもできます。

ダイレクトの長所をより深く理解するために、類似した角交換四間飛車と比較してみましょう。

この戦法は参考1図のように△4五歩と飛車先を伸ばすことで先手の右銀を抑える狙いですが、注目するべきはやはり左銀です。
△3三銀は釘付けになっており、仮に△4四銀と動かせばすかさず▲2四歩と飛車先を突破されてしまいます。

その一方で、参考2図は▲2四歩を恐れる必要がありません。

従って他戦型と比べるとストレスなく駒組みすることができ、逆に左銀の活用を怠ると長所を捨ててしまうことになります。

ダイレクト向かい飛車の基本的な狙い筋と駒組みのポイント

▲6五角におびえない

基本図を再掲します。

ここから▲7八玉△6二玉▲4六歩△7二玉▲4七銀と進んで第1図。

△6二玉に代えて△5二金左と▲6五角を受けたくなりますが、絶対にしてはいけません。
駒の偏りによって角を打たれる隙が生じ、将来△2四歩と仕掛けるチャンスを逃す可能性があります。
※▲6五角と打たれた場合の変化については、こちらの記事で解説しています。


先手の▲4六歩~▲4七銀はプロの間でも人気なアイデアで、次に▲3六歩~▲3七桂と桂馬を活用する狙いがあります。
▲3七桂は▲2五歩をサポートし、さらに▲4五桂と跳ねれば△3三銀にアタックすることができます。

玉は速やかに囲う

第1図から△8二玉▲2五歩△7二銀(第2図)と速やかに玉を囲うことで簡単に堅さという主張点を作ることができます。

さて片美濃が完成すれば、相手の隙を探すことに集中しましょう。
このスピーディーさがダイレクトの魅力で、好戦的なあなたはすでに△2四歩を考えているはずです。
先手は▲5八金右(第3図)と自然に玉を固めますが、ここからが居飛車にとって悲劇の始まりでした。

逆棒銀を狙う

もし先手が2筋を守らないのであれば、△2四歩▲同歩△同銀(第4図)として飛車先突破を狙います。


対して先手の▲3六銀!?(第5図)は銀の進出を防ぐ意味ですが、何と場当たり的で不快にさせる一手でしょうか。

当初の予定通り▲3六歩~▲3七桂と2五の地点を守っていれば、効率よく△2五銀を封じられたはずです。
第5図は後手玉の位置が遠い上に手番も握っており、あの忌々しい銀さえ追い払うことができればきっと有利になることでしょう。

この局面で前述の▲6五角を恐れず△5二金左と上がらなかった成果が出てきます。
△3二金(第6図)は飛車にひもをつける意味で、先手が何もしなければ△3五歩として銀を追い払います。

以下▲4五銀△2五銀▲2三歩△同飛▲4一角には△1四銀(変化図1)と切り返すことができます。


先手はそれを嫌って▲2五歩から銀を抑え込もうとしますが、△3三銀(第7図)で問題ありません。

なぜなら今打った歩が先手の飛車や銀の利きをさえぎる駒になっており、これを解消する手立てはもうないためです。

第7図から先手は▲7七銀(第8図)としてきます。

展開の遅れを除けば、▲7七銀は非常にいい一手です。
次に▲8八玉とすれば玉を深く囲うことができます。

対して後手の△9四歩は玉の逃げ道を確保する手で、もし△9五歩と突くことができれば先手玉の逃げ道を封鎖することができます。
先手も▲9六歩(第9図)と突いて△9五歩を防ぎます。

さて第9図では駒組みの段階が終わり、中盤戦に移ろうとしています。
序盤戦とは違い読みを必要とされる場面ですが、恐れる必要はありません!

形勢判断の基準

中盤戦に移る前に、形勢判断をしてみましょう。
ダイレクト向かい飛車の形勢判断はとても簡単で、駒の損得を除いた基準は以下の2点になります。
①戦場と玉の近さ
②左銀の活用度
少し練習をしてみると、②の判断は難しいかもしれませんが、①は後手が一路リードしていることが分かります。
つまり互角以上なのは間違いないでしょう。
それに加え、先手は作戦の変更という重大なミスを犯しました。
形勢は有利ということが分かったので、次は差を広げることを意識します。
具体的な手は思いつかないかもしれませんが、狙い目はあなたの本能が教えてくれるはずです。

相手の隙を探すコツ

隙を探すコツの一つに、作戦の変更を見逃さないことが挙げられます。
この局面なら例えば、あのいびつな先手の銀を攻撃し、そして連携の途切れた歩を取ることを考えます。
驚くことにこのアイデアに沿った手は3つほどありますが、最善はどれか?という興の冷めたことはしません。
なぜなら目標にたどり着くのが目的であって、過程はさほど重要ではないからです。

例えば後手の狙い筋だけを示すと、△1四歩~△1三桂(参考3図)として△3五歩▲同銀△2五飛(参考4図)から飛車交換を狙います。


仮に△2八飛―▲2一飛と打ち合えば、玉の遠さによって後手に分がある形勢でしょう。

今回は第9図から△4四歩▲8八玉△2七歩(第10図)と進める順を解説します。

後手の△4四歩は本譜の△2七歩以外にも、△5四角▲7八金△3五歩▲同銀△2七歩(変化図2)という手も狙っています。

△5四角に対して▲2六飛とすれば受かりそうに見えますが、△4三角と引いて次に△3五歩▲同銀△2五飛(変化図3)があります。

ここまで序盤を正確に指した後手には、▲8八玉に対して次の一手を考える褒美が与えられます。
もちろん△5四角も堅実で美しいアイデアですが、自身のセンスに任せてみてもいいでしょう。
例えそれが悪手であっても、いびつな銀を率いた先手にとがめる術はありません!

第10図の△2七歩に対して▲同銀は△2五飛で、さらに飛車が窮屈になってしまいます。
そこで先手は▲同飛としますが、△3八角▲2八飛△6五角成(第11図)と進み、後手は歩損の代わりに強力な馬を作ることができました。


第11図から▲7八金△4三馬(第12図)が△4四歩からの継続手で、次に△3五歩▲同銀△2五馬(△2五飛でも可)となれば飛車先突破は免れず後手有利でしょう。

このように、ダイレクトの目指すところは単純です。
片美濃に素早く組み、仕掛けを見せることで思わぬ先手の隙を突くことができます。

左銀の活用で局面をコントロール

第12図の形勢が有利なのは間違いないですが、▲4七角(第13図)と打たれてみると難しく感じることでしょう。

しかし、この局面でも「戦法の狙い」を意識すれば明確な思考を手に入れることができます。
つまり働いていない左銀を活用することで、いびつな▲3六銀の存在を否定するのです。
もし後手だけの構想を示すのであれば、△4二銀と引き、△3三馬~△4三銀~△5四銀(理想図)と組み替えます。

5四のマスは攻守ともに万能なポジションで、中央を制圧し先手の銀の組み換えを牽制しています。

以上がダイレクト向かい飛車の基本です。
この後は、相手の戦型に合わせて上記の手筋を応用していきます。
※「先手が逆棒銀対策をしてきた場合」についてはこちらの記事、「▲6五角乱戦」についてはこちらの記事で解説しています。

ダイレクト向かい飛車を体系的に学ぶならこの本がおすすめ

ここまでお読みいただきありがとうございました!

詳しくは、2024年3月25日発売の『ダイレクト向かい飛車こそが合理的な戦法である』(横山友紀)に載っています。
本書ではほかにも、「先手早繰り銀対策」や「先手が銀冠に組んできた場合」などの戦い方も解説しています。
ぜひ本書を読んで、ダイレクト向かい飛車をマスターしてください!
  お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中
将棋情報局では、お得なキャンペーンや新着コンテンツの情報をお届けしています。

著者