『四間飛車至上主義』棋書アンバサダーによるレビュー 葛岡祥様|将棋情報局

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『四間飛車至上主義』棋書アンバサダーによるレビュー 葛岡祥様

『四間飛車至上主義』棋書アンバサダーによるレビュー、第3弾です!

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レビュー第3弾は、葛岡祥様です。

本書は井出先生の考え方が随所にちりばめられているんですが、書籍の意図を汲み取ってレビューしてくださいました。ありがとうございます!

それでは、どうぞ。

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 今回「四間飛車至上主義」のレビューを書かせていただくことになった葛岡 祥(くずおか しょう)と申します。将棋・囲碁・オセロの総合競技となるトライボーディアンにおいて、第1回、第3回のオンライン大会で優勝させていただいています。将棋の棋力は免状で二段、将棋ウォーズだと三段で指しています。

 レビューを書くにあたり、これまでの四間飛車との触れあいに思いを巡らせた。初めて四間飛車にハマったのは『鈴木大介の将棋 四間飛車編』(鈴木大介著・2009年刊)を読んだ時だった。ガチガチの居飛車穴熊を豪快なサバキで崩していくのは痛快だった。
しかし、その後『四間飛車激減の理由』(阿部健治郎著・2012年刊)が世に出てきて、「四間飛車は終わった」と言われてもおかしくない時期に入った。
そこに待ったをかけたのが『四間飛車の逆襲』(石井健太郎著・2015年刊)だった。これまでの対抗形は横の将棋という風潮から縦の将棋を提言したのは新しい風を感じた。
続けとばかりに出てきたのが井出隼平先生だった。『四間飛車 序盤の指し方完全ガイド』(2018年刊)、『現代後手四間飛車のすべて』(2021年刊)と四間飛車本を発刊。四間飛車は時代に合わせてアップデートを遂げて今もなお生き残っている。「四間飛車こそ振り飛車の王道」と感じている筆者にとってはうれしい限りだ。
 
3種目のボードゲームを嗜む私にとって、複数の競技を戦う選手には非常に注目している。井出先生は鈴木先生に続く史上2人目のプロ雀士との二刀流。様々なものに触れていると一つの物事に専念すべきと言われることがあるが、多くの世界を知ることはそれだけ視野が広がるということ。井出先生の将棋界・麻雀界、両方の活躍に期待したい。

序盤からだいぶ趣旨から外れてしまったが、ここから本書の内容について触れていきたい。
井出先生3冊目の四間飛車本となるこの本は、自身の対局をもとにした実戦解説集。これまでの2冊は定跡解説と呼べる本だっただけに、新しい切り口で書いてくれたんだなと喜びを感じた。

 本書は全4章構成。
・居飛車穴熊に勝つ方法
・居飛車穴熊以外の持久戦に勝つ方法
・急戦に勝つ方法
・その他の戦型、力戦で勝つ方法
に分かれている。

第1章の対居飛車穴熊編は、全体を通して最も筆に力が入っているなと感じたし、衝撃的な内容も多かった。
ここで面白いと感じた記述は主に3つ。
1つは「高美濃+△5二銀」。
この組み合わせには注目したことがなかったが、解説を読んで優秀性を実感した。
2つ目は「弱い穴熊」。
頻繁にみかける▲5七銀・▲6七金が弱いと言い切る点に意思の強さを感じた。
3つ目は「ダイヤモンド美濃は囲いの途中」。
△7四歩・△7三桂型のダイヤモンド美濃を今まで好形と感じていた私にとって、「これは本当に薄い」の発言は衝撃的だった。また、「これで完成という囲いではない」との解説にまた驚いた。
上記3つに加え、符号でのポイント解説が新鮮に感じた。
「△4四歩の符号を出す」、「▲6八角素通し型を避ける」といった駒組みの注意点のみならず、「△5五角成は出させてはいけない符号の1つ」と中終盤の戦いにも用いていたのは面白かった。


第2章では
・美濃囲い
・銀冠穴熊
・端玉銀冠
・ミレニアム
の4つの持久戦策の対策が書かれている。
 左美濃との戦いでは、「穴熊に比べて桂香の価値が全体的に低くなる」との解説にはなるほどと感じた。
 銀冠穴熊には地下鉄が有力としており、漫然と組んでは不利と言い切ったのはいい意味で割り切った考え。「こういう戦い方も四間飛車の醍醐味」と解説している。
 端玉銀冠には「飛車はそえるだけ」。なんだか某バスケ漫画で聞いたことがあるフレーズだが、4筋の飛車、角、銀の並びが好形らしい。
 ミレニアムには対居飛車穴熊でも出てきた高美濃+△5二銀、そして△6四金が有効とのこと。
符号ポイント解説は本章でも健在で、「△4一飛や△4三飛として飛車をラクにする」は参考になった。


第3章では
・棒銀
・早仕掛け
・右銀急戦(金無双急戦、エルモ囲い急戦含む)
の対策について書かれている。
 棒銀に対しては金の力で受ける。「高美濃囲いにおいて、一番守備に働いていないのは6三の金。~そこでこの金を囲いから離して使うことが選択肢に入ってくる」との解説は勉強になった。
 早仕掛けには玉頭銀がおすすめとのこと。「2三に全集中」とこれまた某有名漫画のセリフも飛び出した。
 右銀急戦は舟囲いからのシンプルなものから、金無双やエルモ囲いとバリエーションに富む急戦のため、本書を読んで様々な対策を会得してもらいたい。個人的には▲8八銀の銀引きが参考になった。


第4章では
・振り飛車ミレニアム
・対地下鉄飛車
・対5五角急戦
・対5筋位取り
・相振り模様
について書かれている。
個人的に注目したのは現代振り飛車には欠かせない存在となっている振り飛車ミレニアム。
2局掲載されており、1局目は逆転勝ちだったが、2局目は著者も成功例と語る内容となっている。
自身の対局を反省して「すぐ△6四歩と突いた」のは言葉の重みが違った。


全体を通して、目から鱗の解説が多く充実の内容に感じた。
取り上げられている対局の棋譜が章末にすべて掲載されているため、「ここであの手が出るのか」等と感じながら盤に並べたくなる一冊だった。
感覚的なところを養うにはうってつけで、四間飛車の急所、プロの呼吸を堪能できる。四間飛車をこよなく愛する井出隼平の魂の将棋がここに宿っている。
 
最後に言おう。四間飛車、最高!
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