「駒得する」「駒損しない」 中終盤を有利に進めるための必須スキルを伝授|将棋情報局

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「駒得する」「駒損しない」 中終盤を有利に進めるための必須スキルを伝授

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駒得のチャンスは突然あらわれる

突然ですが、皆様は次の【問題図1】【問題図2】で、どのように指しますか?

テーマは、「駒得をねらう」。

考える時間は、それぞれ30秒でお願いします。
 
【問題図1】



【問題図2】


「30秒では短すぎて、どう指していいかわからないよ」

そんなふうに思った方、では、【問題図3】【問題図4】では、いかがでしょうか。
 
【問題図3】



【問題図4】


これなら、【問題図3】では▲5二銀、【問題図4】では▲5五香で、相手の価値の高い駒を取れることがわかるでしょう。

戻って、【問題図1】では、▲5二銀(解答図1)と打てば角・金の両取りで、次に必ずいずれかを取ることができます。
【解答図1は▲5二銀まで】


また、【問題図2】では、▲5五香(解答図2)で、飛が横に逃げれば金を、逃げなければもちろん飛を取ることができます。玉が固い上に、角を成りながら先に香を取っていて、もともと優勢の局面ですが、さらに良くする手段があれば、逃してはもったいないですよね。
 
【解答図2は▲5五香まで】

 

「駒得センサー」を身につけよう

将棋の中盤戦は、互いに「駒得」を狙う戦いと言っても過言ではありません。相手よりも自分の戦力のほうが高ければ、後にくる終盤戦を有利に進めることができます。

チャンスがあれば、積極的に「駒得」を狙いましょう。

相手の駒を、何ら損失なく「ただ取り」できれば、これほどうれしいことはありません。しかし、「駒得」は、この「ただ取り」だけではありません。

駒の種類は全部で8種類。取られてしまうと負けになる玉を別格とすれば、残りの7種類の強さ、価値は、一般的に以下のような並びとなります。

飛>角>>金=銀>>桂=香>>歩

自分の価値の低い駒を相手の価値の高い駒と交換できれば、それも「ただ取り」に並ぶ「駒得」のひとつです。

例えば前出の【解答図2】で後手が△5五同飛とすれば、香は取られてしまいますが、▲同歩で飛を取り返すことができます。自分の香と相手の飛の交換ですから、それはそれは大きな戦果です。

問題は、実戦は常に【問題図1】【問題図2】のような広い盤面の中から、ピンポイントで駒得できる手を捜さなくてはならないこと。これらの問題を瞬時に正解するには、脳内に「駒得センサー」を搭載することが不可欠です。

皆様は「駒得センサー」は、身についていますか? また、その精度は? 

例えば下図のような局面、センサーは盤面のどこに反応するでしょうか。制限時間は前問と同じく30秒です。
 
【問題図5】



【問題図6】

 

「駒得センサー」は誰でも身に付く 精度も上がる

【問題図5】【問題図6】の解答は以下の通りです。
 
【解答図5は▲3四香まで】



【解答図6は▲7七角】

それぞれ、香で相手の駒を串刺しにする「田楽刺し」、角のナナメの利きで相手の離れ駒である8六の飛と2二の銀に同時に狙いをつける「両取り」が正解でした。

「やっぱり、30秒では見つけられない・・・」

大丈夫です。

「駒得センサー」は、練習を重ねれば誰でも身につけることができ、また、精度をどんどん上げてゆくことが可能です。

ところで、これまで問題を解いていただいた中で、何かお気づきになったことはないでしょうか。
 
【再掲解答図2は▲5五香まで】



【再掲解答図5は▲3四香まで】


これは、香を使って駒得を狙う「田楽刺し」というパターンですが・・・

そうです。自分が持っている駒によって、「駒得」を狙える無数の「パターン」があるのです。

例えば、とても有名な下図の手筋。
 
【図は▲4五桂打まで】
 
 
 

※飛角両取り。△4五同桂でも、▲同桂でやはり飛角両取り。

 


2つしか行く場所のない桂の、その2つともに相手の駒をロックオンする「ふんどし桂」・・・否、「さくらんぼ桂」とでもしましょうか。それに・・・
 
【図は▲3四飛まで】


※3二金か5四銀のいずれかが必ず取れます。

縦横に利く飛の特性を存分に生かした「十字飛車」など。

【解答図1】のように、銀を打って角・金(または飛)の死角を突く両取りも、特に名前はついていませんが、よく出てくる手筋です。

本コーナーでは、飛、角、銀、桂、香による駒得の手筋を紹介しましたが、もちろん! 金にも、歩にも、それぞれの特性を生かした駒得の手筋がたくさんあります。

そのパターンを、まずはいくつか覚えて、脳内に「駒得センサー」を搭載しましょう。さらにたくさん覚えれば、精度が増してゆくことは言うまでもありません。

練習次第で、誰でも高精度のセンサーを身につけることができます。

精度が上がれば上がるほど、中盤戦、終盤戦を有利に進めることが可能になり、必ず勝率がアップします。
 

豊富なパターンを部分図、全体図で紹介

これまでに紹介した駒得手筋は、すべて、7月28日に発売となる『駒得ドリル 基本手筋から実戦の活用まで』から引用しました。著者は、奨励会三段まで進み、退会後に将棋教室を開講、また初心者向け詰将棋『捨て駒なし!はじめての3手詰』(マイナビ出版)の著書のある甲斐日向さん。まえがきによれば、指導歴は13~14年とのこと。その豊富な経験を生かし、本書でさまざまなパターンを紹介してくださっています。

章立ては以下の通り。
 

 
基本編は部分図の問題。1手で駒得が確定する問題と、3手進めて駒得を狙う問題がそれぞれ30問、あわせて60題の問題を収録しています。この基本編に繰り返しチャレンジし、60種類のパターンを覚えるだけでも、センサー完成、精度アップにつながることは間違いありません。

基本編をマスターしたら、次は実戦編です。その名の通り実戦さながらの9×9の盤面から駒得する手段を探してゆきます。こちらは、1手の読み問題、3手の読み問題がそれぞれ46問、あわせて92問を収録。基本編で覚えた手筋を、広い盤面で見つけましょう。しばらく考えて答えがわからない場合は、解答を見てしまうのも悪くありません。繰り返し挑戦して、できる限り多くのパターンを吸収しましょう。
 

おまけ・・・駒得と同じくらい大事なこと

さて、ここまで、駒得の重要性、駒得の手筋を身につけるには? ということについて記しましたが、将棋の中盤戦においては、駒得することと同じぐらい大切なことがあります。

それは、「駒損」をしないこと。

駒得を狙うことばかり考えて、気がついたら自分の戦力がそがれていた、というのでは本末転倒となってしまいます。

本書は、その点もぬかりがありません。

第1章「基本編」、第2章「実戦編」に続く第3章は、「駒損を避ける手筋」。

甲斐さんが用意した問題は60題。この問題数だけでも、「駒得する」ことと同様に「駒損しないこと」がいかに重要かわかるでしょう。

以下に2題を紹介します。「さくらんぼ桂」が跳んできた【問題図7】、王手+8六の銀取りである「十字飛車」を掛けられた【問題図8】。皆様は相手に駒を取られず、この局面を切り抜けられるでしょうか。
 
【問題図7】



【問題図8】


 
「駒得センサー」に加え、「駒損しないセンサー」も養える『駒得ドリル 基本手筋から実戦の活用まで』。どちらも上達には欠かせない力です。将棋を始めたけれどなかなか勝てない、少し勝てるようになったけど、もっと勝ちたい! という方に、特におすすめします。

※【問題図7】の答え・・・▲9五角。
6二玉に対する王手のため後手は△7三銀などと防ぐ必要がありますが、▲6六銀まで、両取りを掛けられた角、銀の両方をかわすことができます。

【問題図8】の答え・・・▲2七飛。
王手銀取りを掛けられましたが、正解手の▲2七飛が冷静。銀を取る△8六飛は打った飛が2二の玉に直射する反則手です。
 

執筆:富士波草佑(将棋ライター)

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