藤井叡王が叡王初防衛 タイトル戦13連勝で羽生九段の記録に並ぶ 第7期叡王戦五番勝負第3局|将棋情報局

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藤井叡王が叡王初防衛 タイトル戦13連勝で羽生九段の記録に並ぶ 第7期叡王戦五番勝負第3局

最終盤まで難解な熱戦を制す

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藤井聡太叡王に出口若武六段が挑戦する、第7期叡王戦五番勝負第3局が、5月24日(火)に千葉県柏市「柏の葉カンファレンスセンター(三井ガーデンホテル柏の葉2階)」で行われました。結果は109手で藤井叡王が勝利し、3連勝で叡王のタイトルの初防衛に成功しました。

■3局続けての相掛かり

勝てば叡王初防衛が懸かったこの大一番で藤井叡王が採用したのは第1、2局と同じ相掛かりでした。本シリーズは千日手局を含め全ての戦型が相掛かりになるという珍しいシリーズになりました。 対する出口六段は第1局では大胆な研究手を披露したものの、本局では前例の多い進行を選択。その後は前期叡王戦豊島―藤井戦とほぼ同じ手順をなぞっていきます。

■藤井叡王が2手損の構想を披露

前例を離れた直後の局面、藤井叡王は初期位置の5九から6八に上がった玉を▲5八玉と1手損の移動、更にその数手後に▲6八玉と往復させ、合計2手損することになります。 佐藤康光九段が本シリーズを「新しい時代の序盤戦から中終盤戦」と評しており、角換わり腰掛銀を始めとする、序中盤での手損を生かして自陣のバランスを取る指し回しはまさに現代調といえるでしょう。

■出口六段が角切りから一気に開戦

難解な中盤戦、昼休憩直後の藤井叡王の手に▲8六金に対して出口六段はすかさず△同角とし先手陣に攻め込みます。一時的に駒損ですが、攻めが継続すればそれ以上の戦果が得られることを見込んでの決断です。 藤井叡王も手にした角で反撃を試みます。出口六段の攻めの合間に飛車と金の割打ちである▲6一角とするなど、後手に余裕を持たせません。 その後もお互いギリギリのバランスを保ちつつ、互角のまま終盤戦へと突入しました。

■出口六段、巡ってきたチャンスをものにできず

終盤戦、出口六段は既に秒読み、藤井叡王の持ち時間も残り数分しか無いという状況。 藤井叡王は相手陣に▲2一飛と打ち込みます。後手の6一の金取りになっており一見普通の手に見えましたがこれは緩手でした。これには△5二金と持ち駒を温存しつつ当たりになっている金を逃がす手があり、これを指されるとダメだったと藤井叡王自身も語っています。 しかし難解な終盤戦の中、出口六段が選択したのは△3一金打でした。持ち駒の金で自陣を固めつつ相手の飛車に当てて手番を取る普通の対応に見えましたが、先述の△5二金には劣ります。出口六段も△5二金は読みの中にはありましたが、秒読みの中での決断が難しかったように思えます。

■藤井叡王が決め手を放つ

最後、藤井叡王が▲3一竜と金を取った手に対して、出口六段が△4二角と指していれば後手有望だったというのが感想戦の結論でした。先手の竜を逃がす▲2二竜に対して△8六角と王手をかけながら出られるのが厳しい手になります。 しかし出口六段の選択は△4二銀でした。これも受けの手としては考えられますが同様に▲2二竜と逃げられたときに、後手の有効な反撃手が難しかったです。本譜は△4二銀▲2二竜に△8八角と先手玉に詰めろをかける手を選択しましたが、その瞬間に▲3五桂と桂馬のタダ捨てから後手玉は即詰み。藤井叡王が長手順を読み切り、勝利をおさめました。

勝利した藤井叡王はシリーズ成績を3勝0敗とし叡王の初防衛に成功。タイトル戦の連勝を13まで伸ばし、羽生善治九段と並んで歴代2位となりました。

3連勝で初防衛を決めた藤井叡王(提供:日本将棋連盟)

槇林一輝(将棋情報局)

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