2022.02.04
羽生九段がB級1組に降級 第80期A級順位戦
連続A級在位記録は29年でストップ
渡辺明名人への挑戦権を争う第80期A級順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)の8回戦が2月4日に東京・大阪の将棋会館で一斉に行われました。
本日の組み合わせと対局開始時の状況は下記のとおりです。
▲斎藤慎太郎八段(7勝0敗・1位)-△豊島 将之九段(4勝3敗・2位)
▲佐藤 天彦九段(4勝3敗・7位)-△糸谷 哲郎八段(5勝2敗・4位)
▲山崎 隆之八段(1勝6敗・10位)-△広瀬 章人八段(3勝4敗・3位)
▲菅井 竜也八段(3勝4敗・5位)-△佐藤 康光九段(3勝4敗・6位)
▲羽生 善治九段(2勝5敗・8位)-△永瀬 拓矢王座(3勝4敗・9位)
A級順位戦は10人による総当たりリーグ戦。優勝者が渡辺名人に挑戦し、下位2名がB級1組に降級します。今期のA級順位戦は本局を含め残り2局。挑戦争いは、前期挑戦者の斎藤八段が7勝0敗とトップを快走しています。斎藤八段は本局に勝利すれば挑戦が確定。もし敗れても唯一の2敗である糸谷八段が敗れれば挑戦が確定するという圧倒的に有利な状況です。
一方、降級争いに目を移すと、1枠は山崎八段がすでに確定。残る1枠の降級枠を巡って熾烈な争いが繰り広げられています。もっとも苦しい位置にいるのが羽生九段。本局に敗れると、順位の関係で1戦残しての降級が確定してしまいます。
■驚異的な連続A級在位記録
羽生九段は1993年の第52期順位戦からA級に所属しています。その期は7勝2敗の成績で名人に挑戦し、米長邦雄名人から名人位を奪取しています。以降29年連続で名人またはA級に所属していました。
連続A級在位記録は、故・大山康晴十五世名人が持つ44期という超人的な記録があります。大山十五世名人は69歳までA級の座を守り続け、現役A級のまま死去しました。この空前絶後の記録に羽生九段がどこまで迫れるのかというのは、将棋ファンの間では長く大きな関心事となっていました。
そのような事情から大きな注目が集まった羽生九段-永瀬王座戦は、東京・将棋会館で10時に開始しました。戦型は相掛かりに進み、中盤で羽生九段が角切りからの猛攻を仕掛けました。駒損ながら羽生九段は龍で相手玉をにらみ▲6三桂と攻め立てます。次に▲5一桂成△同金▲6三桂という自然な攻めが見えて、厳しく見えます。
■見事な見切り
この局面で永瀬王座は、わずか2分の考慮でまったく自陣を顧みず△8六歩と攻め合いを選びました。この手が好手で永瀬王座に形勢が傾きました。仮に前述の順で羽生九段が攻め合えば、▲6三桂に対し、守りの金を見捨てて△3一玉と逃走を図るのが好手順。金は失うものの、手順に玉が安全地帯に逃げ込めるために攻め合い勝ちが見込めます。
以下、鋭く先手玉を追い詰め、78手で永瀬王座が勝ちました。結果、羽生九段は2勝6敗となりB級1組への降級が決定。連続A級在位記録は29期でストップすることになりました。
連続A級在位記録という大記録はひとつ途絶えてしまいましたが、B級1組に陥落した後にA級に復帰して名人を獲得した渡辺明名人や、会長職に就きながらもA級の座を守っている佐藤康光九段など、降級をバネにさらなる活躍をする例も枚挙に暇がありません。羽生九段の今後の巻き返しが期待されます。
B級1組への降級が決まった羽生九段 (写真は2020年9月のもの 提供:日本将棋連盟)
大石祐輝(将棋情報局)
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